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 夏のセンバツ大会こと、「2020年甲子園高校野球交流試合」が開幕した(8月10日)。新型コロナウイルス禍により、中止となったセンバツの代替大会である。夏の甲子園大会も都道府県の高野連組織による別大会を開催した。

 これによって、“公式戦ナシ”のまま卒業となりかねない高校3年生は救われたわけだが、よく聞かれるのは、「実戦が少ないため、ドラフト候補生の力量を見極めるのは難しいのではないか?」との声。しかし、実際はその正反対だという。

 「ドラフト候補の力量を見極められない? プロ野球組織を甘く見てもらったら、困る。どの球団も向こう3年分の候補生リストを持っており、3年生に関しては最終確認にすぎません。でも、交流戦となると、選手の出番も違ってくるので、慎重にならなければなりません」(在阪球団スカウト)

 どういう意味かというと、交流試合は通常の夏の甲子園大会とは異なり、出場32校は全て1試合しか行わない。本来であれば、今春のセンバツ大会に出場していたはずの32校が招待され、“思い出作り”として1試合を戦うのだ。そうなると、出場校の監督たちは通常の公式戦とは異なる選手起用をしてくる。

 私立強豪校の指導者がこんな話をしていた。

 「都道府県の代替大会もそうですが、3年生優先のベンチ入りメンバーを構成し、全員を出場させるつもり。細かいサインも出すつもりはありません」

 高校野球の公式戦は、トーナメントによる勝ち上がり方式だ。しかし、代替の記念大会となれば、コロナ禍で活動期間を奪われた3年生に報いてやらなければならない。また、学校が休校となったため、今年は練習期間が短かった。細かいサインプレーの練習をする時間がなかったせいもあるが、“思い出作り”として、「好きに打ってこい」「悔いのないよう、全力で投げ込んでこい」と3年生たちをグラウンドに送り出す。

 フルスイング、力投によって評価を高める球児もいるだろうが、長所を見失ってしまうドラフト候補も出るのでは…。

 「注目は明石商の好右腕・中森俊介投手です。2年生ですでに甲子園のマウンドを経験しており、佐々木朗希、奥川恭伸と同じ学年であっても、1位指名に踏み切る球団があったと言われている逸材です。彼の長所は低めに変化球を集め、キレのある直球をより効果的に見せる投球技術です」(前出・スカウト)

 同投手に対し、12球団全てが1位指名リストに挙げている。将来のエース候補として、巨人、阪神、ソフトバンク、楽天などが熱視線を送っているとされ、「力みすぎて怪我でもされたら…」というのがホンネだろう。

 「例年以上のスカウトを甲子園に送り出すつもり(スカウト開放の予定)。1試合で燃え尽きてみせると決めた球児たちの力量を確かめるというよりも、『個人プレー』を許された大会でどんなプレーをするのかを見極めるためです」(前出・同)

 プロ野球側は困惑しているようだが、1試合だけなら、投球過多や熱中症などの問題は解消される。全力投球とフルスイングのぶつかり合い。案外、こっちのほうが高校野球ファンからの好感を呼ぶのではないだろうか。(スポーツライター・飯山満)