中国進出企業の景況感は急速に悪化
中国発の新型コロナウイルスによる肺炎「COVID-19」(以下、新型肺炎)への脅威が、世界的な広がりをみせている。こうしたなか政府は国内の感染拡大防止の「重要な局面」にあるとして、対策基本方針の策定を決定した。また2月22日にはIMF(国際通貨基金)が2020年の中国の経済成長率予測を1月時点から0.4ポイント引き下げ、世界経済見通しも下方修正するなど、新型肺炎が日本経済に与える影響が懸念される。
こうしたなか、中国に進出している日本企業の景況感は急速に悪化している(図1)。中国進出企業の景気DIは2018年まで全体を上回って推移していたが、米中貿易摩擦の激化などもあり2019年以降に急減速。2020年1月の景気DIは直近のピークの2018年1月から13.7ポイント減少の40.4となり、反日デモから上向きはじめた2013年3月頃の水準まで低下している。
企業からも「中国の新型肺炎の影響で、輸出量がかなり減っている」(運輸・倉庫)や「新型肺炎により商品供給の不安定化が懸念される」(繊維・繊維製品・服飾品卸売)など、企業活動に与える影響の広がりを心配する声が多く聞かれ、中国経済の一段の減速を想定している様子もうかがえる。
そこで、帝国データバンクが試算したところ、今回の措置にともなう2020年1〜3月期の中国人訪日客による日本国内での消費額は、直接的に約1422億円減少すると見込まれる。さらに、関連産業への波及を含めると、約2846億円に相当する売り上げが減少すると推計される。とくに宿泊など「対個人サービス」が最も大きく売り上げが減少し、「商業」「飲食料品製造」「運輸」「対事業所サービス」なども影響するとみられる(表1)。また粗付加価値額は約1491億円の減少が見込まれ、名目GDP(国内総生産)成長率を0.1%程度下押しする要因となる。ただし、中国政府は販売中止の期間を定めておらず、4月以降も継続した場合はさらに増大する可能性がある。
中国進出企業の景況感が急速に悪化
帝国データバンクの調査によると、中国に進出している日本企業は2019年5月時点で1万3685社あり、そのうち製造業が4割超を占める。また、中国・武漢市進出の日本企業は199社であった。企業からも「中国の新型肺炎の影響で、輸出量がかなり減っている」(運輸・倉庫)や「新型肺炎により商品供給の不安定化が懸念される」(繊維・繊維製品・服飾品卸売)など、企業活動に与える影響の広がりを心配する声が多く聞かれ、中国経済の一段の減速を想定している様子もうかがえる。
インバウンド需要は1〜3月期で約1422億円、関連業種を含め約2846億円の売上減少に
中国政府は国内の旅行会社に対して、海外旅行の団体およびパック商品の販売中止を命じた(個人が個別手配する旅行は規制の対象外)。中国からの訪日外客数は2019年に約959万人に達し、そのうち団体および個人パック旅行は35.4%を占める。訪日客全体の30.1%が中国からであり、インバウンド需要の最も大きなシェアを占めている。国内景気が緩やかな後退を続けているなか、中国からの旅行客減少は日本の景気を下押しする要因となる。そこで、帝国データバンクが試算したところ、今回の措置にともなう2020年1〜3月期の中国人訪日客による日本国内での消費額は、直接的に約1422億円減少すると見込まれる。さらに、関連産業への波及を含めると、約2846億円に相当する売り上げが減少すると推計される。とくに宿泊など「対個人サービス」が最も大きく売り上げが減少し、「商業」「飲食料品製造」「運輸」「対事業所サービス」なども影響するとみられる(表1)。また粗付加価値額は約1491億円の減少が見込まれ、名目GDP(国内総生産)成長率を0.1%程度下押しする要因となる。ただし、中国政府は販売中止の期間を定めておらず、4月以降も継続した場合はさらに増大する可能性がある。