冷戦相手のロシアがNASAのグダグダの状況を打開した!? 予算オーバー、重量オーバー、計画中止法案…意外と知らない宇宙ステーション開発秘話
地上から約400km上空に建設された巨大な有人実験施設である国際宇宙ステーション(以下、ISS)。アメリカ、ロシアをはじめとするさまざまな国が協力し、無重力や高真空、宇宙放射線など、特殊な環境での実験や研究が日々行われています。
この開発の背景には、当時のアメリカとソ連の政治的な問題が大きく関係していました。
今回紹介する、スカイ三平さんが投稿した動画『【ゆっくり解説】国際宇宙ステーション建造の歴史 アメリカとロシアが協力するまで』では、音声読み上げソフトを使用して、同人ゲーム『東方Project』の霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)と博麗霊夢(はくれい れいむ)のふたりのキャラクターが、アメリカとソ連の宇宙開発競争時代からソ連崩壊を経て、共同で宇宙ステーションを建設するまでを解説していきます。
【ゆっくり解説】国際宇宙ステーション建造の歴史 アメリカとロシアが協力するまで
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地球のまわりを時速2万7700kmで周回中
霊夢:
今回は高度400kmにある国際宇宙ステーション(ISS)の建造、の歴史や機能についても解説していくよ。魔理沙:
ああ、あの巨大な建造物だな。どんなことができるのかとか?霊夢:
フフフ、楽しみでしょ? 国際宇宙ステーションは地球を91分かけて飛んでいる宇宙施設でね、高度はだいたい400kmくらいのところにいるわ。魔理沙:
結構高いところにあるよなあ。霊夢:
そんな高いところを、およそ時速2万7700kmのスピードでビューンと飛んでいるわ。魔理沙:
速すぎだろ。霊夢:
世界のどこに、こんな速さで飛ぶ施設があるのか。世界一早い職場であり、世界一速い寝床であり、世界一速いキッチンでもあるわ。魔理沙:
ギネス登録がたくさんできそうだな。霊夢:
この動画を作っている2019年11月10日の時点で、ISSが地球を何周したかわかる? 正解は12万970周です。そんなISSの大きさは全長73メートルで全幅が108.5メートル、全高が20メートルあるわ。魔理沙:
あるわと言われても、ピンとこないぜ。
霊夢:
サッカースタジアムってあるでしょ? サッカーのフィールドよりも、やや大きいわ。魔理沙:
結構でかいな。霊夢:
そんな大きなISSを地球に持ってくると、どんな重さになるでしょうか。魔理沙:
またクイズかよ。霊夢:
ばばばん! およそ420トンでーす。これには機材とかの重量も入っているわ。ちなみにISSが地上にそのまま降りたら、自重に耐えきれずに崩壊するわ。魔理沙:
宇宙に浮かぶ前提なんだな。
420トンの塊を設計し、またその塊がとてつもないスピードで飛んでいるという事実に「地上の乗り物じゃ厳しいな」「420トンを400kmまで運んだと考えるとすごいな」というコメントが寄せられました。
宇宙開発競争時代終焉から宇宙“兵器”開発競争へ
霊夢:
そんな大きな宇宙施設であるISSの歴史は、1984年からはじまるわ。魔理沙:
結構古いんだな。霊夢:
アメリカのNASAがフリーダム宇宙ステーション計画を立ててね、当時の大統領であるロナルド・レーガンが承認したことで始動するわ。これはスペースシャトルが完成したことが大きな要素だったね。
魔理沙:
スペースシャトルがなかったら無理なのか?霊夢:
無理じゃないけど、スペースシャトルは1回で持っていける荷物の量が多いからね。効率的に建造を進めることができるわ。魔理沙:
そうなんだな。しかしフリーダムっていう名前、どこからきたんだ? 宇宙ステーション計画だけじゃだめなのか?霊夢:
当時のソ連にはミールっていう宇宙ステーション計画があったわ。共産主義国のリーダーに対して、フリーダムという名前をつけたということよ。魔理沙:
皮肉かなにかかよ。霊夢:
まあ映画『アルマゲドン』でもスペースシャトルX-71型の名前が「フリーダム(自由)」と「インディペンデンス(独立)」だったし。魔理沙:
そうなんだな。
霊夢:
アメリカのアポロとソ連のソユーズがドッキングした時期は、米ソの宇宙開発競争も終わりかと思われていたんだけど、この時期はソ連が開発したブラン計画のシャトルとアメリカのスペースシャトルが酷似していることと、アメリカに戦略防衛構想という計画があったことで、終わりを迎えた宇宙開発競争時代から宇宙兵器開発競争にシフトして激化しているわ。魔理沙:
すぐ兵器を開発しちゃうんだな。霊夢:
地上での政治的なものもあるだろうし。魔理沙:
地上での事情のほうが大きそうだな。霊夢:
このフリーダム宇宙ステーション計画では、いろいろな様々なことをする予定だったわ。魔理沙:
なにをするんだ?霊夢:
人工衛星を軌道上で修理する機能とか、宇宙船を組み立てる工場機能や、宇宙を観測できる天文台観測機能。無重力(微小重力)を活かした研究所機能、民間企業を常駐させて、無重力空間で生産する工場機能。こんだけの機能も計画されていたね。魔理沙:
なんか本当にそんなことできるのかって思うほどだな。
霊夢:
その他にもNASAは、アメリカ国外の友好国に、有効に活用できるアイデアを打診していたわ。魔理沙:
友好国?霊夢:
いわゆる西側諸国ってやつね。その中でも宇宙技術も持っている国。魔理沙:
日本も入っているのか?霊夢:
入ってるよ。そしてNASAは、建造するために実証実験とか、船外活動などをやっていたわ。魔理沙:
なんか順調にやっている感じだな。霊夢:
これについて、実証試験の内容とか、詳しい計画の内容は上級者向けシリーズでやるわ。
フリーダム計画の頓挫には「現代の目線でみたらちょっと風呂敷広げすぎだね……大真面目だったんだろうけど」「ぶっちゃけあのまま競い合ってた方がよかった」と、政治的アピールに利用されたことについて残念がるコメントも寄せられました。
ソ連崩壊後、共同で宇宙ステーションを建設
霊夢:
地上では実証結果を踏まえてフリーダム宇宙ステーションの設計を1984年からはじめたわ。魔理沙:
ほんとにこんな計画をやるんだな。霊夢:
だけど1986年に問題が起きるわ。魔理沙:
どうしたんだ?霊夢:
スペースシャトルのチャレンジャー号が事故を起こしたわ。
この事故から安全をより重視するようになってね、シャトルの輸送能力が下がるし、宇宙ステーションも安全の見直しをすることになったわ。
魔理沙:
まあ良いことなんじゃないのか?霊夢:
このあたりから計画が混乱しだすわ。魔理沙:
混乱?霊夢:
安全対策を盛り込んだから、計画予算が膨れ上がったわ。魔理沙:
まあ命には代えられんだろ。霊夢:
その膨れ上がった予算を削減するために、機能を削ったりして基本構成を安上がりにしたわ。魔理沙:
シンプルになっていいんじゃないか。霊夢:
そうすると、さらに予算が削られて、また設計を見直してのいたちごっこ。だけどせっかく宇宙ステーションを作るんだからいろいろやりたい。安全もおろそかにできない。いろいろな思惑と要素が入り乱れた結果、予算はオーバーして予定重量は25%程度オーバー、組立パーツも多すぎて複雑。そんな中、太陽パネルの発電量が足りないことも判明。計画の見直しと設計のやり直しが必要な現場を見てアメリカ議会が下した判断とは。
魔理沙:
もう一度最初からやり直せだろ?霊夢:
予算25%削減だったわ。魔理沙:
削減が必要なの予算じゃなくて重量だろうが。
霊夢:
ついでに再設計も要求してきたわ。魔理沙:
要求されなくてもわかってるだろうに。霊夢:
そして地上で強制イベントが発生するわ。魔理沙:
なんだ?霊夢:
ソ連の崩壊よ。これによりソ連の宇宙開発は全て中止。アメリカはライバルを失ったことで意義を失うわ。魔理沙:
燃え尽き症候群みたいなこと言うなよ。霊夢:
設計も計画の見直しが必要だけど、予算もない。ライバルであったソ連はロシアになり、宇宙開発を停止中。1993年、とうとうアメリカ議会でフリーダム宇宙ステーション計画を中止する法案が提出されたわ。魔理沙:
まあ、もう中止だろ。グダグダになってるし。霊夢:
結果、1票差で否決されたわ。魔理沙:
そりゃそうだろ、当たり前だ……ええ? 否決?霊夢:
中止を否決、つまり続けろってことよ。魔理沙:
まじかよ、しかも1票差ってなあ。
霊夢:
でももうグダグダなアメリカと、お金も国も失って、一から出直しなロシア。ふたりは過去にケンカしたり、仲直りしたと思ったらまたケンカしたりしたけれど、再び出会ってしまったわ。魔理沙:
気持ち悪い言い方するなよ。霊夢:
NASAとロシア連邦宇宙局は、お互いの計画をあわせて共同で宇宙ステーションを建設することに合意。1993年クリントン大統領がフリーダム宇宙ステーション計画を、国際宇宙ステーションに変更すると発表。国際宇宙ステーション計画はここからはじまるわ。魔理沙:
ここまでくるのにずいぶん長かったな。
宇宙を目指してアメリカとソ連という二大国家の競争にはじまり、冷戦終結にともなって競争から協調へ……というISSのあゆみに、「無理して宇宙開発競争してたから燃え尽きもしそうね……」「優しい世界だにゃー」といったコメントが寄せられました。
二人の解説をノーカットで楽しみたい方はぜひ動画をご視聴ください。