八村塁【写真:荒川祐史】

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元日本代表・渡邉拓馬氏インタビュー後編―絶対エースの将来性は「計り知れない」

 バスケットボールのワールドカップ(W杯)が31日に中国で開幕し、21年ぶりに予選突破での自力出場を決めた世界ランク48位の日本は今日1日の初戦で同17位のトルコと対戦する。八村塁(ウィザーズ)、渡邊雄太(グリズリーズ)という現役NBA選手を擁する日本は、躍進が期待される。ここまで5つの強化試合で別格の存在感を示してきた八村の凄さについて、かつてシューターとして活躍した元日本代表の渡邉拓馬氏に聞いた。

――誰が見ても存在感があるが、八村の凄さは。

「決定力の高さは誰が見ても気づくと思いますが、どんな相手でも同じパフォーマンスを出せるところがあります。そこがドラフト1巡目に指名される選手だなと思いますね。あとは一見、細く見えますが、体格のいい選手とぶつかり合っても、逆に飛ばすくらいの体幹の強さがある。

 おそらくマッチアップしている選手は、見た目以上に速く感じているのではないでしょうか。速いし、強いと感じているのだと思います。だから向かい合った時に相手が構えてしまうので、1歩目が遅れるというか、ついていけない。構えすぎてしまう。

 練習しているかわかりませんが、体が反応するようなプレーが多い。ファーストブレイクでのステップ、少しディフェンスを避けながら、ダブルクラッチでシュートをしたりとか。瞬間、瞬間で反応する能力が凄いですね」

――それは身につけられるもの?

「運動能力が高いからだと思います。誰が見ても凄いと思うし、細かいところではそういう競り合い。並んだ時の強さがあると思いますね。ぶつかった時の体の使い方がうまい。ぶつかって当たり負けしているところを見たことがないですね」

八村を生かすために周りはどうすべきか「純粋にバスケを楽しむ」

――伸びしろは。

「強化試合では、ウィザーズのヘッドコーチが同行してシュートの改善もしている。これからドリブルスキルやプレーの幅も広がってくると思うので、今のところ計り知れないというか、どんな選手になるのかなというのはありますね。

 その中でも3ポイントエリアの外からのスキルは伸びてくると思います。もし3番ポジションに上がったら、ピックアンドロールを使うなどそういうプレーもできてくると思う。それができたら、どうなっちゃうのかなと思いますね。

 よくカワイ・レナードみたいな感じだと米国で言われていましたが、確かにそんな感じになれるのかなと思います。ブロックは今も凄いので、ガードにつけるような脚力もあるので、どんどんポジションも上がってくるのかなと感じます」

――強化試合では、そのためにウィザーズのコーチが同行していた。

「正しいフォーム、正しい手の使い方を習慣づけしている時期。影響してくるのは3ポイントの確率だと思います。スペーシングの取り方は凄いトップレベル」

――今大会、相手は八村をマークしに来る。周りの選手はどうすべきか。

「最初から八村選手頼りというより、本当に純粋にバスケを楽しむこと。目の前に入ったら打って、ディフェンスのプレッシャーが来たら抜くという、そういう単純な考え方でいいと思います。『八村』と頭に入れてしまうと、パスだけになってしまう。そこで八村選手以外の人がアタックすることで、八村選手にもボールが回るチャンスが来る。

 やはり個々が自分の役割を果たすこと。Bリーグでもやっているようなパフォーマンスを出せればと思います。変に世界を意識しすぎて、ビッグ3(渡邊雄太、ファジーカス・ニック)に頼ると、後手後手になってしまうので厳しい。やはり自分たちの役割を果たそうという心構えでいけば問題ないと思いますし、フリオ・ラマスヘッドコーチもそう話していると思います」

八村の最近の成長「ここぞというところで決められる」

――対戦国は八村、渡邊、ファジーカスのラインを止めにかかってくる。

「3人をつぶすのは難しいと思いますが、やはり隙を突くとしたらファジーカス選手のところを攻めてくるのが優先かなと思いますね。そこを1番とのピックアンドロールで崩すというのがどのチームも思うところ。そこを八村選手、渡邊選手がフォローすると思うので、その2人がフォローしたところのギャップを他の選手がフォローする。

 多少運動量は増えると思いますが、それは今までもできているので、もう少し精度を高めていく必要があります。ディフェンスをそういう形でやっていれば、オフェンスは問題なく点を獲れるので、ディフェンス次第ですね」

――走り負けないことは日本の強み。

「我慢比べだったら負けないと思うので、行けるタイミングを逃さず行ければ本当にチャンスはあると思います。そこだけは負けちゃいけない」

――八村がいない時間帯も必ず来る。

「そこはディフェンスで点を獲られないことが重要だと思います。そこの徹底ですね。できれば点も獲りたいですが、なかなか伸びない時はそこでも崩れないように。オフェンスで多少落ちたとしてもディフェンスで落とさないことが大事だと思います」

――八村の最近の成長は。

「シュートは常に安定させようとしています。練習でやっていることをしっかり試合で出せているところが凄い。少しだけ練習風景を見させてもらいましたが、しっかり意識しながらやっているというのは見受けられます。シューターのボールタッチではないですが、ここぞというところで決められるのは今後の成長を期待させますし、もっと安定してくるのではないかと思います」

 日本は06年以来の出場。1日のトルコ戦以降は、3日に世界ランク24位のチェコ、5日に同1位の米国と対戦し、上位2か国が2次リーグに進出。下位2か国は順位決定リーグに回る。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)