by rawpixel.com

動物と触れ合うことで人のストレスを軽減させたり自信を回復させたりするアニマルセラピーは、世界中で広く行われています。その一方で、アニマルセラピーが人に好影響をもたらす科学的証拠はこれまで少なかったそうですが、ワシントン州立大学の人間発達学准教授のパトリシア・ペンドリー氏らの研究チームは、動物と触れ合うことで人のストレスホルモンが軽減されることを実験で突き止めました。

Animal Visitation Program (AVP) Reduces Cortisol Levels of University Students: A Randomized Controlled Trial - Patricia Pendry, Jaymie L. Vandagriff, 2019

https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/2332858419852592

Study Shows The Effect Petting Your Dog or Cat Has on Stress Levels

https://www.sciencealert.com/petting-a-cat-or-dog-for-just-ten-minutes-can-lower-your-stress-hormones-study-finds

アメリカでは多くの大学生が日々の生活でストレスを感じており、学校主導で学生と動物が触れ合う機会を提供してストレスの軽減を図っています。ペンドリー氏は「私たちは学生たちが動物との触れ合いで喜びを感じ、ポジティブな感情を抱いていることを知っていました」と述べています。

すでにアニマルセラピーが一定の成果をもたらすことは知られていましたが、研究チームは動物との触れ合いがもたらすストレス軽減を、主観的ではなく客観的に測定する実験を行いました。研究チームはランダムに抽出された249人の学生を4つのグループに分け、だ液中に含まれるコルチゾールというホルモンの量を測定することで、学生のストレスを定量的に測定しました。コルチゾールはストレスによって放出されることが知られており、ストレスレベルを測定する客観的な指標となるとのこと。

第1のグループは10分間にわたり、犬や猫といった動物たちと実際に触れ合いました。そして第2のグループには別の学生たちが動物たちと遊ぶ様子を10分間見てもらい、第3のグループにはスライドショーで動物の画像を10分間見てもらったそうです。第4のグループは単純に「もうすぐ動物たちと会えますよ」とだけ告げられ、実際に動物と触れ合ったり画像を見ることもなく10分間放置されました。



by Daria Shevtsova

参加者は実験の日に朝起きた時、そして実験の10分後と25分後の合計3回にわたってだ液を採取され、研究チームはだ液中のコルチゾールレベルを測定しました。実験の結果、動物と触れ合った第1のグループは他の全てのグループよりも有意に実験後のコルチゾールレベルが低下したことがわかりました。

第1グループにおけるコルチゾールレベルの減少は、朝起きた時のだ液から採取されたコルチゾールレベルや、朝起きた時の時間、参加者の概日リズムなどに関係なく確認されたとのこと。つまり、わずか10分の動物との触れ合いが、学生たちの身体的ストレスレベルに大きな影響を与える可能性が今回の実験により示されたといえます。

今回の研究ではサンプルサイズが小さいため、今後も研究を続けていくことが重要だと研究チームは認めています。一方で、客観的な指標を用いて動物の触れ合いが人間にもたらす身体的影響を調査することは、動物を用いたセラピーの相互作用を明らかにし、動物と人間をどれほどの時間触れ合わせるべきなのかを決定する役に立つと、研究チームは述べました。



by Anastasiya Gepp