NTTドコモが5Gで目指す未来とは? 通信制限ナシ、xR仮想な世界は実現されるのか
いよいよ5Gのサービスがスタートする。
NTTドコモでは、2020年の春に5Gの商用サービスを開始する予定だ。
それに先立ち、2019年9月20日(金)から、ラグビーワールドカップ2019にあわせて、プレサービスをスタートさせる。
5G(ファイブジー:5th Generation)とは、移動体通信における第5世代の通信システムのことだ。現在、スマートフォンなどで利用されているのは、第4世代(4G)の通信システムである。
アナログ方式だった第1世代(1G)の携帯電話は、自動車電話から発展したものだった。法人利用が中心で、一部の限られたユーザーが利用しているにすぎなかった。
デジタル方式を採用した第2世代(2G)の携帯電話は、個人での契約がしやすくなり、電話機の買い取り制度導入、さらには通信キャリアの新規参入を可能にしたことで、一般の利用者に普及していく足がかりとなった。
また2Gの後期は、カメラ付き携帯電話が登場し、NTTドコモの「iモード」に代表されるインターネット接続やメールの送受信も可能になっている。携帯電話で楽しめるゲームアプリが登場したのもこの頃だ。
通話からネット経由のコミュニケーションに移り変わろうとしていた頃、CDMA方式による第3世代(3G)の通信システムが登場する。画像の送受信だけではなく、テレビ電話といったサービスも提供され始めた。
現在の4Gの時代になると、3Gよりもさらなる高速・大容量を実現し、
・SNSやチャット形式のリアルタイムなコミュニケーションの定着
・リアルタイムの動画や映像の配信と視聴
・GPSなどの位置情報を利用した屋外でのゲーム
・電子決済によるキャッシュレスな買い物
など、これまでの生活スタイルが大きく変化した。
このように、通信システムは、世代の移り変わりとともに、私たちの日常生活やコミュニケーション、娯楽のスタイルを大きく変えてきた。
そして、まもなく、次の世代となる5G時代が、到来する。
5Gの特徴とは、
・高速かつ大容量
・低遅延
・多数端末接続
などといわれている。
しかし、実際に、5Gという通信は、
我々の生活をどのように変えていくのだろうか?
・5Gで目指す世界とは?
・5G時代に向けた取り組みとは?
このシリーズでは、5G導入により各通信キャリアが目指す未来について、迫ってみたい。
第1回の今回はNTTドコモで5Gを担当する
・経営企画部 5G事業推進室長 太口努氏
・経営企画部 5G事業推進室 企画担当課長 小林稔典氏
・5Gイノベーション推進室 5G方式研究グループ 担当課長 増野淳氏
に、主な取り組み、普及のための課題、5Gで実現可能なサービスなどについて聞いてみた。
■5Gで、いきなり世界は変わらない? モバイル通信の歴史にみる5G移行
これまでのモバイル通信サービスとテクノロジーは、およそ10年ごとに新しい世代の通信システムが登場し、入れ替わってきた。
NTTドコモにおいても
・1980年代は第1世代(アナログ:電話のみ)
・1990年代は第2世代(デジタルPDC:メール、静止画、インターネット接続)
・2000年代は第3世代(CDMA:動画、音楽、ゲーム)
・2010年代は第4世代(LTE:動画、音楽、ゲーム)
といった変遷をたどってきている。
モバイルの進化(資料提供:NTTドコモ)
第1世代では2.4kbpsだった通信速度は、現在の第4世代では1288Mbpsまで高速化している。
その差は、なんとおよそ50万倍。
25年で驚くほどの高速化を実現しているのだ。
通信システムの変更は、どの世代においても、前の世代の通信システムと併用しながら次第に新システムに移行していく手法がとられている。
5Gにおいてもそれは同様で、現行の第3.X世代や第4世代と併用しながら、次第に5Gシステムへと移行する。
また5Gシステムも、段階的に高度化し、フルパフォーマンスへと変化させていく予定だ。
そのため、5Gのサービスが開始されたからといって、突然、ガラっと世界が変わるわけでない。5Gサービス開始から数年をかけて、順次フルパフォーマンス、フルサービスの提供へと移り変わっていく。
NTTドコモでは、5Gのサービスを
・開始期
・移行期
・成熟期
これらを総合的に見据えながら
「5G時代になにができるのか?」
といったことを検討し、実現に向けて取り組んでいる。
■NTTドコモの5Gにおける強み
NTTドコモでは、5Gの国際標準仕様を策定するための各種技術検討や共同実験を早い段階から世界をリードする形で進めている。こうした5Gにおける知見や技術的なバックグラウンドをしっかり社内で保有している点が大きな強みだという。
さらに2018年からは「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」も進めている。
これは、NTTドコモが5Gを推進するうえで、必要不可欠となるパートナー企業との協創を想定した取り組みだ。こうした取り組みも、いち早く5Gの実用性を高めるうえでNTTドコモの大きな強みとなるという。
5G時代に向け、さまざまなパートナーと研究・開発などに取り組む「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」(資料提供:NTTドコモ)
このドコモ5Gオープンパートナープログラムには
・サービス業
・卸小売
・製造
・メディア
・金融・保険
・建設
・自治体
・交通
・学校
など、実にさまざまな業種から、多くの企業や団体が参加している。
2019年6月4日時点で、その数は2700社を超えている。
NTTドコモは、参加企業に対してワークショップの開催や最新情報の提供をしているが、それだけでない。
「ドコモ5Gオープンラボ」
「ドコモオープンイノベーションクラウド」
これらも提供し、積極的に5Gを活用した、新しいビジネスの創出を図っているのだ。
太口努氏は、
「これによって5Gでのさまざまなサービスやソリューションを生み出せる土台は、充分作れていると思っている。
こうした取り組みが、私どもの大きな強みになってくる
既存で提供しているサービスにおいても、他社に比べるとしっかりとしたラインアップを持っている。
それらを5G時代でも進化をさせて訴求することで、さらなる強みになるのではないかと考えている」
■5G時代にできることは何?
NTTドコモは、5Gサービスの開始・普及で、どのような「未来」を目指しているのだろうか?
NTTドコモでは
・新たな価値創出
・社会的課題解決
これらにつながるソリューションを創出しようとしている。
「新たな価値創出」では、
・5Gに対応したスマートフォンやモバイルルーターのような端末
・撮影デバイスやウェアラブルデバイス
・AR・VRデバイス
・その他の周辺機器
これらのハードウェアと連携した新しい体験が得られるサービスをはじめ、
・新体感ライブ
・スタジアムにおけるソリューション
こういったソフトウェア的な価値の創出なども検討・開発している。
「社会的課題解決」では、
・人手不足の解消
・医療や介護の問題
・防災や防犯
・地方創生に結びつくソリューション
これら、現状の社会問題を解決する新たな方法の創出も図っている。
2つの大きなテーマに分け、新たな価値やソリューションを創出していく(資料提供:NTTドコモ)
実際に運用されそうな例としては、
・遠隔地でのライブ体験
・VRやARによる新体感が得られる授業
・高精細な診断画像による遠隔診療
・建設現場における遠隔制御システム
・ヒューマノイドロボットの遠隔操縦
・VRソーシャルビューイング
・VRを活用したゲーム観戦やゲームレクチャーシステム
・現実と仮想現実の相互体感
こうした数々の分野において技術、サービス、ソリューションの研究・開発に取り組んでいる。
5Gを活用することで、遠隔操作、遠隔制御、ARやVRを総称したxRの世界が現在よりも拡充され、より身近なものになってくるという。
経営企画部 5G事業推進室長 太口努氏
太口努氏
「5Gにより、色々な体験や体感をしていただける。臨場感やインタラクティブ性を伴って、そういった軸でのサービスがどんどん花開いていく、また花を開かせるように我々も取り組んでいきたい」
5Gが実現する世界やサービスは「これ!」と断定することは難しい。
5Gは「特定の何かを実現する」のではなく、さまざまな新しい体験やサービス、社会や生活環境が生み出されていくベースとなるのだという。
多くの可能性を秘めている5Gだが、太口努氏は
「5Gだけというわけではなく、それにAIであったり、ビッグデータ解析であったり、ディープラーニングであったり、そういったものが関わってくるのかもしれない。
さまざまな技術やサービスが関わることが考えられる。
5Gは、それらを通信という分野で支える存在だと思っている」
つまり、発想を豊かにすればするほど、5Gによる変化や進歩は、さまざまな領域で、新しい体験と新しいサービスが生まれてくるといえるのだ。
■5G時代は、個人もリッチコンテンツを配信できる
ところで5Gサービスは、我々の日常生活に、どのような存在となり、影響をもたらすのだろうか。
太口努氏は、
「ARやVRを含めたxRというのは、5G時代において、特に一般のお客様にとっては、これまでと違う体感をしていただける重要なツールにはなってくるのではないかと思っている」という。
例えば、VRゴーグルがある。
VRゴーグルは、一昔前に比べれば小型・軽量化されたが、一般的なメガネやサングラスのサイズになれば、5G通信と組み合わせてxRの世界に大きな変革をもたらす新たなコンテンツやサービスが生まれることで、我々の生活スタイルを大きく変えるかもしれない。
経営企画部 5G事業推進室 企画担当課長 小林稔典氏
小林稔典氏は、
「個人の情報発信が、現在よりしやすくなるのではないか」
と、さらに身近な例をあげる。
小林稔典氏
「例えば、大容量の動画をアップロードする際、現在ではモバイルではなく、自宅のネット環境じゃないとできないといった、制限に直面する場合もあった。
そういう制限を5Gで取っ払っていけるのではないかと考えている。
そうなってくると、コミュニケーションは、自然によりリッチになっていく」
太口努氏も、
「5G時代では、現行のシステムに比べ、ダウンロードはもちろんアップロードの速度も高速化される。
情報発信する際、例えば10分の動画を撮影して、10秒で送信が完了するとお客様としてはストレスを感じなくなる。
リッチなコミュニケーションや、リッチな情報発信というのがより気軽にできると思う」
つまり、5G時代になると、
・これまで静止画だったものが動画に移行
・これまでより付加価値が上がる
・これまでより利便性が向上する
こうしたことがリアルに実現する。
その結果、個人でも、リアルタイムな映像や動画を用いたリッチなコミュニケーションや、情報発信が簡単にできるようになるというのだ。さらに、社会的な課題を解決に導くソリューションが生まれてくる可能性も広がっていくという。
■5G普及における課題と対策
NTTドコモは、5Gの活用について、多くの企業とさまざまな取り組みや研究・開発をおこなっているが、実際に5Gを普及させていくには、どのような課題があるのだろうか。
太口努氏によると、
・料金
・エリアの展開速度
・端末(スマートフォンなど)のラインアップが揃えられるか
・端末の価格
・サービスの裾野が広がっていくかどうか
これらの課題があるという。
太口努氏
「通信システムの世代は10年ごとに変わっていっている。
このままでいくと5Gは2020年代に花開くものになる。
来年2020年は、スタートの時期になる。
そこから2〜3年経過すると、端末やサービス、ユーザーも増え、エリア展開も広がってくることが予想できる。
個人的な意見にもなるが、商用サービスがスタートした後、2〜3年から5年くらいの間には、5Gがメインストリームになってくるのではないかと思う。私どもの立場としては、しっかりと普及促進を図っていきたいと考えている」
5Gイノベーション推進室 5G方式研究グループ 担当課長 増野淳氏
また、増野淳氏は
「通信速度が速くなるっていうだけだと、大多数のユーザーは、そんなに興味を持たないのではないかと思う。
使い方自体を通信事業者であったり、サービスプロバイダーであったりから提案しないといけないのが5G時代なのかなと思う。
そういった意味でもドコモは、5Gの商用化前から積極的に、多岐に渡るパートナーとコラボレーションに取り組んできた。
これは世界的にも類をみない、我々の強みであり、継続的にやっていかないと、普及にはつながらないかなと考えている」
■通信制限のない世界がやってくる?
太口努氏は、5Gの普及において、ユーザーが判断の基準とする
「料金面の課題」
が大きいという。
太口努氏
「料金の話は今ホットな話題ですが、まずは今の動向をみながら、
『5G時代はどうしていくのか?』
を並行して検討していかないといけない。
最初(サービス開始当初)にどうするかというのは、今の時点では分からない。
(通信制限のない料金プラン)の可能性は選択肢としてはあり得ると思うし、意識していくところ」
つまり、「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」という5Gの特性を活かせる環境になれば、現在のように「通信制限」を、かける必要がなくなるかもしれないという。
このことは利用者にとって、5Gに移行する大きなメリットになるだろう。モバイル通信における真の意味での「使い放題」が、実現するかもしれないのだ。
NTTドコモでは、
・世界をリードする形で進めてきた技術力
・多くの企業や団体とのコラボレーションを軸にしたサービスやソリューションの展開
これらを強みに、プレサービスや商用サービスの開始を迎えようとしている。
さらに料金プランやエリア展開、端末ラインアップなど、多くの課題にも挑戦しながら、5Gの普及を目指している。
引き続き、NTTドコモの5G戦略を追っていく予定だ。
・docomo 5G | 企業情報 | NTTドコモ
撮影・執筆:2106bpm
NTTドコモでは、2020年の春に5Gの商用サービスを開始する予定だ。
それに先立ち、2019年9月20日(金)から、ラグビーワールドカップ2019にあわせて、プレサービスをスタートさせる。
5G(ファイブジー:5th Generation)とは、移動体通信における第5世代の通信システムのことだ。現在、スマートフォンなどで利用されているのは、第4世代(4G)の通信システムである。
アナログ方式だった第1世代(1G)の携帯電話は、自動車電話から発展したものだった。法人利用が中心で、一部の限られたユーザーが利用しているにすぎなかった。
デジタル方式を採用した第2世代(2G)の携帯電話は、個人での契約がしやすくなり、電話機の買い取り制度導入、さらには通信キャリアの新規参入を可能にしたことで、一般の利用者に普及していく足がかりとなった。
また2Gの後期は、カメラ付き携帯電話が登場し、NTTドコモの「iモード」に代表されるインターネット接続やメールの送受信も可能になっている。携帯電話で楽しめるゲームアプリが登場したのもこの頃だ。
通話からネット経由のコミュニケーションに移り変わろうとしていた頃、CDMA方式による第3世代(3G)の通信システムが登場する。画像の送受信だけではなく、テレビ電話といったサービスも提供され始めた。
現在の4Gの時代になると、3Gよりもさらなる高速・大容量を実現し、
・SNSやチャット形式のリアルタイムなコミュニケーションの定着
・リアルタイムの動画や映像の配信と視聴
・GPSなどの位置情報を利用した屋外でのゲーム
・電子決済によるキャッシュレスな買い物
など、これまでの生活スタイルが大きく変化した。
このように、通信システムは、世代の移り変わりとともに、私たちの日常生活やコミュニケーション、娯楽のスタイルを大きく変えてきた。
そして、まもなく、次の世代となる5G時代が、到来する。
5Gの特徴とは、
・高速かつ大容量
・低遅延
・多数端末接続
などといわれている。
しかし、実際に、5Gという通信は、
我々の生活をどのように変えていくのだろうか?
・5Gで目指す世界とは?
・5G時代に向けた取り組みとは?
このシリーズでは、5G導入により各通信キャリアが目指す未来について、迫ってみたい。
第1回の今回はNTTドコモで5Gを担当する
・経営企画部 5G事業推進室長 太口努氏
・経営企画部 5G事業推進室 企画担当課長 小林稔典氏
・5Gイノベーション推進室 5G方式研究グループ 担当課長 増野淳氏
に、主な取り組み、普及のための課題、5Gで実現可能なサービスなどについて聞いてみた。
■5Gで、いきなり世界は変わらない? モバイル通信の歴史にみる5G移行
これまでのモバイル通信サービスとテクノロジーは、およそ10年ごとに新しい世代の通信システムが登場し、入れ替わってきた。
NTTドコモにおいても
・1980年代は第1世代(アナログ:電話のみ)
・1990年代は第2世代(デジタルPDC:メール、静止画、インターネット接続)
・2000年代は第3世代(CDMA:動画、音楽、ゲーム)
・2010年代は第4世代(LTE:動画、音楽、ゲーム)
といった変遷をたどってきている。
モバイルの進化(資料提供:NTTドコモ)
第1世代では2.4kbpsだった通信速度は、現在の第4世代では1288Mbpsまで高速化している。
その差は、なんとおよそ50万倍。
25年で驚くほどの高速化を実現しているのだ。
通信システムの変更は、どの世代においても、前の世代の通信システムと併用しながら次第に新システムに移行していく手法がとられている。
5Gにおいてもそれは同様で、現行の第3.X世代や第4世代と併用しながら、次第に5Gシステムへと移行する。
また5Gシステムも、段階的に高度化し、フルパフォーマンスへと変化させていく予定だ。
そのため、5Gのサービスが開始されたからといって、突然、ガラっと世界が変わるわけでない。5Gサービス開始から数年をかけて、順次フルパフォーマンス、フルサービスの提供へと移り変わっていく。
NTTドコモでは、5Gのサービスを
・開始期
・移行期
・成熟期
これらを総合的に見据えながら
「5G時代になにができるのか?」
といったことを検討し、実現に向けて取り組んでいる。
■NTTドコモの5Gにおける強み
NTTドコモでは、5Gの国際標準仕様を策定するための各種技術検討や共同実験を早い段階から世界をリードする形で進めている。こうした5Gにおける知見や技術的なバックグラウンドをしっかり社内で保有している点が大きな強みだという。
さらに2018年からは「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」も進めている。
これは、NTTドコモが5Gを推進するうえで、必要不可欠となるパートナー企業との協創を想定した取り組みだ。こうした取り組みも、いち早く5Gの実用性を高めるうえでNTTドコモの大きな強みとなるという。
5G時代に向け、さまざまなパートナーと研究・開発などに取り組む「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」(資料提供:NTTドコモ)
このドコモ5Gオープンパートナープログラムには
・サービス業
・卸小売
・製造
・メディア
・金融・保険
・建設
・自治体
・交通
・学校
など、実にさまざまな業種から、多くの企業や団体が参加している。
2019年6月4日時点で、その数は2700社を超えている。
NTTドコモは、参加企業に対してワークショップの開催や最新情報の提供をしているが、それだけでない。
「ドコモ5Gオープンラボ」
「ドコモオープンイノベーションクラウド」
これらも提供し、積極的に5Gを活用した、新しいビジネスの創出を図っているのだ。
太口努氏は、
「これによって5Gでのさまざまなサービスやソリューションを生み出せる土台は、充分作れていると思っている。
こうした取り組みが、私どもの大きな強みになってくる
既存で提供しているサービスにおいても、他社に比べるとしっかりとしたラインアップを持っている。
それらを5G時代でも進化をさせて訴求することで、さらなる強みになるのではないかと考えている」
■5G時代にできることは何?
NTTドコモは、5Gサービスの開始・普及で、どのような「未来」を目指しているのだろうか?
NTTドコモでは
・新たな価値創出
・社会的課題解決
これらにつながるソリューションを創出しようとしている。
「新たな価値創出」では、
・5Gに対応したスマートフォンやモバイルルーターのような端末
・撮影デバイスやウェアラブルデバイス
・AR・VRデバイス
・その他の周辺機器
これらのハードウェアと連携した新しい体験が得られるサービスをはじめ、
・新体感ライブ
・スタジアムにおけるソリューション
こういったソフトウェア的な価値の創出なども検討・開発している。
「社会的課題解決」では、
・人手不足の解消
・医療や介護の問題
・防災や防犯
・地方創生に結びつくソリューション
これら、現状の社会問題を解決する新たな方法の創出も図っている。
2つの大きなテーマに分け、新たな価値やソリューションを創出していく(資料提供:NTTドコモ)
実際に運用されそうな例としては、
・遠隔地でのライブ体験
・VRやARによる新体感が得られる授業
・高精細な診断画像による遠隔診療
・建設現場における遠隔制御システム
・ヒューマノイドロボットの遠隔操縦
・VRソーシャルビューイング
・VRを活用したゲーム観戦やゲームレクチャーシステム
・現実と仮想現実の相互体感
こうした数々の分野において技術、サービス、ソリューションの研究・開発に取り組んでいる。
5Gを活用することで、遠隔操作、遠隔制御、ARやVRを総称したxRの世界が現在よりも拡充され、より身近なものになってくるという。
経営企画部 5G事業推進室長 太口努氏
太口努氏
「5Gにより、色々な体験や体感をしていただける。臨場感やインタラクティブ性を伴って、そういった軸でのサービスがどんどん花開いていく、また花を開かせるように我々も取り組んでいきたい」
5Gが実現する世界やサービスは「これ!」と断定することは難しい。
5Gは「特定の何かを実現する」のではなく、さまざまな新しい体験やサービス、社会や生活環境が生み出されていくベースとなるのだという。
多くの可能性を秘めている5Gだが、太口努氏は
「5Gだけというわけではなく、それにAIであったり、ビッグデータ解析であったり、ディープラーニングであったり、そういったものが関わってくるのかもしれない。
さまざまな技術やサービスが関わることが考えられる。
5Gは、それらを通信という分野で支える存在だと思っている」
つまり、発想を豊かにすればするほど、5Gによる変化や進歩は、さまざまな領域で、新しい体験と新しいサービスが生まれてくるといえるのだ。
■5G時代は、個人もリッチコンテンツを配信できる
ところで5Gサービスは、我々の日常生活に、どのような存在となり、影響をもたらすのだろうか。
太口努氏は、
「ARやVRを含めたxRというのは、5G時代において、特に一般のお客様にとっては、これまでと違う体感をしていただける重要なツールにはなってくるのではないかと思っている」という。
例えば、VRゴーグルがある。
VRゴーグルは、一昔前に比べれば小型・軽量化されたが、一般的なメガネやサングラスのサイズになれば、5G通信と組み合わせてxRの世界に大きな変革をもたらす新たなコンテンツやサービスが生まれることで、我々の生活スタイルを大きく変えるかもしれない。
経営企画部 5G事業推進室 企画担当課長 小林稔典氏
小林稔典氏は、
「個人の情報発信が、現在よりしやすくなるのではないか」
と、さらに身近な例をあげる。
小林稔典氏
「例えば、大容量の動画をアップロードする際、現在ではモバイルではなく、自宅のネット環境じゃないとできないといった、制限に直面する場合もあった。
そういう制限を5Gで取っ払っていけるのではないかと考えている。
そうなってくると、コミュニケーションは、自然によりリッチになっていく」
太口努氏も、
「5G時代では、現行のシステムに比べ、ダウンロードはもちろんアップロードの速度も高速化される。
情報発信する際、例えば10分の動画を撮影して、10秒で送信が完了するとお客様としてはストレスを感じなくなる。
リッチなコミュニケーションや、リッチな情報発信というのがより気軽にできると思う」
つまり、5G時代になると、
・これまで静止画だったものが動画に移行
・これまでより付加価値が上がる
・これまでより利便性が向上する
こうしたことがリアルに実現する。
その結果、個人でも、リアルタイムな映像や動画を用いたリッチなコミュニケーションや、情報発信が簡単にできるようになるというのだ。さらに、社会的な課題を解決に導くソリューションが生まれてくる可能性も広がっていくという。
■5G普及における課題と対策
NTTドコモは、5Gの活用について、多くの企業とさまざまな取り組みや研究・開発をおこなっているが、実際に5Gを普及させていくには、どのような課題があるのだろうか。
太口努氏によると、
・料金
・エリアの展開速度
・端末(スマートフォンなど)のラインアップが揃えられるか
・端末の価格
・サービスの裾野が広がっていくかどうか
これらの課題があるという。
太口努氏
「通信システムの世代は10年ごとに変わっていっている。
このままでいくと5Gは2020年代に花開くものになる。
来年2020年は、スタートの時期になる。
そこから2〜3年経過すると、端末やサービス、ユーザーも増え、エリア展開も広がってくることが予想できる。
個人的な意見にもなるが、商用サービスがスタートした後、2〜3年から5年くらいの間には、5Gがメインストリームになってくるのではないかと思う。私どもの立場としては、しっかりと普及促進を図っていきたいと考えている」
5Gイノベーション推進室 5G方式研究グループ 担当課長 増野淳氏
また、増野淳氏は
「通信速度が速くなるっていうだけだと、大多数のユーザーは、そんなに興味を持たないのではないかと思う。
使い方自体を通信事業者であったり、サービスプロバイダーであったりから提案しないといけないのが5G時代なのかなと思う。
そういった意味でもドコモは、5Gの商用化前から積極的に、多岐に渡るパートナーとコラボレーションに取り組んできた。
これは世界的にも類をみない、我々の強みであり、継続的にやっていかないと、普及にはつながらないかなと考えている」
■通信制限のない世界がやってくる?
太口努氏は、5Gの普及において、ユーザーが判断の基準とする
「料金面の課題」
が大きいという。
太口努氏
「料金の話は今ホットな話題ですが、まずは今の動向をみながら、
『5G時代はどうしていくのか?』
を並行して検討していかないといけない。
最初(サービス開始当初)にどうするかというのは、今の時点では分からない。
(通信制限のない料金プラン)の可能性は選択肢としてはあり得ると思うし、意識していくところ」
つまり、「高速・大容量」「低遅延」「多数端末接続」という5Gの特性を活かせる環境になれば、現在のように「通信制限」を、かける必要がなくなるかもしれないという。
このことは利用者にとって、5Gに移行する大きなメリットになるだろう。モバイル通信における真の意味での「使い放題」が、実現するかもしれないのだ。
NTTドコモでは、
・世界をリードする形で進めてきた技術力
・多くの企業や団体とのコラボレーションを軸にしたサービスやソリューションの展開
これらを強みに、プレサービスや商用サービスの開始を迎えようとしている。
さらに料金プランやエリア展開、端末ラインアップなど、多くの課題にも挑戦しながら、5Gの普及を目指している。
引き続き、NTTドコモの5G戦略を追っていく予定だ。
・docomo 5G | 企業情報 | NTTドコモ
撮影・執筆:2106bpm