「くじらぐも」の原画も!武蔵野市立吉祥寺美術館で「心をつなぐあたたかな色 柿本幸造の絵本の世界」

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◆「くじらぐも」の原画も!武蔵野市立吉祥寺美術館で「心をつなぐあたたかな色 柿本幸造の絵本の世界」

『こども音楽館 どうぶつのカーニバル』 文:筒井敬介 学研 1969年
小学校の教科書で見た人も多い、空に浮かぶ「くじらぐも」。絵本の画家・柿本幸造が描いた絵には、明るい色彩と夢があふれていて、楽しさとともにあたたかい気持ちになれる。武蔵野市立吉祥寺美術館では、初期のものから最晩年の作品まで、原画やアイデアスケッチなど約200点を集めた展覧会「心をつなぐあたたかな色 柿本幸造の絵本の世界」を開催。いつか見た、懐かしい絵本に再会できるかも。 


「たろうきたのうみへいく」 『ひかりのくに』 文:神沢利子 ひかりのくに 1968年7月号
広告イラストから子どもの絵へ。その転身は30歳後半から
2018年9月29日(土)から11月11日(日)まで、武蔵野市立吉祥寺美術館では「心をつなぐあたたかな色 柿本幸造の絵本の世界」を開催する。

柿本幸造といえば、小学校の国語の教科書で1971年から掲載が続く「くじらぐも」(光村図書出版)や、100万部を超えるベストセラーとなった『どうぞのいす』(ひさかたチャイルド)などで、その絵を目にした人も多いのでは?

広島県に生まれ、20歳で上京してから広告関係のイラストを手がけていた柿本が、子どものための絵を描き始めたのは30代後半になってから。1954年7月号の『よいこのくに』(学研)で初めて挿絵を担当してから、月刊絵本や図鑑など活躍の場が広がる。

子どもたちにとってなじみやすい明るい色彩はもちろん、デザイン性の高い構図、乗り物の細かい表現など、完成度の高い美しい絵を多く描いている。


『どんくまさんそらをとぶ』 文:蔵冨千鶴子 案:武市八十雄 至光社 1969年
人気絵本の原画やアイデアスケッチなど約200点を展示
今回の展覧会では、日産自動車のカレンダーや月刊絵本の挿絵といった初期の作品に加え、1967年から約30年をかけて26冊が刊行された「どんくまさん」シリーズ(至光社)、1989年から亡くなるまで手がけた『にじのひろば』(至光社)の表紙画に至るまで、原画やアイデアスケッチなど約200点を展示。

「どんくまさん」は、のっそりのろまで何をやっても大失敗、という不器用な森のくま。それでも、心が優しくて何ごとにも一生懸命なキャラクターは、みんなに愛され続けてロングセラーに。1980年には、フィンランド児童文学協会翻訳児童図書最優秀賞を受賞している。


『こども音楽館 どうぶつのカーニバル』 文:筒井敬介 学研 1969年
没後20年。編集者が人柄や絵の魅力を伝える座談会も開催
柿本は1枚の絵を仕上げるのに人一倍時間をかけたけれど、それでも仕上がりに満足することはなかったという。

作品から醸し出されるあたたかな雰囲気は、じっくりと絵の具を重ねて描く特有の手法から生まれる。それはまるで、柿本が子どもの心に向けて、ていねいに優しいメッセージを塗り重ねているよう。

1998年に83歳でこの世を去ってから、今年で20年目。2018年10月20日(土)の14時からは、柿本にゆかりのある絵本編集者4名による座談会「絵本の画家・柿本幸造を語る」を開催。鎌倉の家に今も残されているアトリエの様子や、当時の思い出など、親交のあった編集者だからこそ語れる貴重なエピソードが聞ける。受付は9月30日(日)から開始。興味のある人はチェックして。


『どうぞのいす』 作:香山美子 ひさかたチャイルド 1981年
絵本の世界を体感!座れる“どうぞのいす”で記念撮影も
代表的な作品となった1981年刊行の『どうぞのいす』は、10月7日(日)の14時から大型絵本による読み聞かせのイベントも行われるので、周りに小さな子どものいる人には嬉しいイベント。また、同じく大型絵本の「どんくまさん」シリーズの読み聞かせには、人形操演も加わるから、読み聞かせと人形劇でお話を立体的に楽しめる。こちらは9月22日(土)から受付開始なので、申し込みはお早めに。

展覧会の期間中は、立体作品となった“どうぞのいす”がロビーに登場。実際に椅子に座って記念撮影もできるとか。絵本の登場人物になったような気持ちで、童心に返って記念撮影するのもいいかも。

あたたかな色彩と美しいデザインの絵には、懐かしさとともに心が洗われるような癒しを感じる人も多いはず。柿本の描いた絵本の世界を、この機会に堪能して。