新東名「静岡区間」なぜいま6車線化? 渋滞対策にあらず、しかし必要な機能強化
新東名高速の静岡県内区間が、暫定4車線から6車線に拡幅されます。この区間、もともと6車線ぶんが確保されていたものの、渋滞などを契機とした拡幅ではないといいます。なぜいま決まったのでしょうか。
東名の静岡県区間は「課題大きい」 新東名6車線化で円滑性確保へ
国土交通省は2018年8月10日(金)、新東名高速の静岡県区間(御殿場JCT〜浜松いなさJCT間)を暫定4車線から6車線に拡幅すると発表しました。
新東名の静岡県内区間は、暫定4車線の箇所でも6車線ぶんの用地が確保されている(画像:pixta)。
同区間では現在、約145kmのなかで6車線の区間(合計55km)と暫定4車線の区間が混在していますが、構造物はほぼ全線にわたり6車線に対応してつくられているとのこと。なお、建設費の縮減や早期の開通を目的に暫定2車線や4車線で開通した区間は全国に存在しており、新東名や新名神でも、その多く(未開通区間も含む)が暫定4車線となっています。
このような箇所では、交通量の増大や渋滞の顕在化などから本来の車線数へ拡幅されるケースがあります。しかし今回の区間では、お盆などの多客期に新清水JCTなどで10〜15km程度の渋滞は発生するものの、慢性的というわけではなく、NEXCO中日本も「6車線化の決定は渋滞などを契機としたものではありません」といいます。なぜいま6車線化を行うのでしょうか。
国土交通省によると、ひとつには、物流の生産性向上に向けた環境整備を急ぐ必要があるとしていいます。東名・名神および新東名・新名神は、全国における貨物輸送車の半数が利用しており、6車線化によって大型の物流車両と一般車両の輻輳を避ける目的があるとのこと。そのうえで、東名との「ダブルネットワーク」の安定性を向上させ、円滑な交通を確保するとしています。
特に、東名の静岡県区間は高波や地震などによる災害リスクポイントが存在し、通行規制をともなうリニューアル工事の影響もあることから、「特に課題の大きい」区間とされています。東名が通行止めとなった際には、その迂回路となる新東名で30km以上の渋滞も発生しているといい、このような背景から、ほかの区間に先立って新東名の静岡県区間で6車線化が決定したそうです。
6車線化は「自動運転のため」でもある!
6車線化を推進するもうひとつの目的が、物流業界の人手不足を背景とする車両の大型化や、自動運転への対応です。
新東名を中心とした区間では2016年から、1台の大型トラックに同サイズのコンテナを連結した、全長25mにもおよぶ「ダブル連結トラック」の走行実験が継続しているほか、2018年1月には浜松SA〜遠州森町PAで、CACC(Cooperative Adaptive Cruise Control)と呼ばれる制御技術を用いた大型トラックの隊列走行実験も実施されました。
後者は、有人の先頭車両に車間を約35mずつ開けながら、複数のトラックが自動運転で追従するというもの。実験では後続の各トラックにもドライバーが乗り込みましたが、アクセルやブレーキ操作は自動制御され、将来的には「後続無人」での運用が想定されています。新東名の6車線化は、この隊列走行の実現も視野に入れているのです。
過去にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施した、CACCを用いたトラックの隊列走行実験のようす。2018年1月には新東名で行われた(画像:NEDO)。
隊列走行実験では2車線区間において、大型トラックなどが隊列を追い越す際に、多数のクルマが連なって走行する状況が発生したといいます。実験に参加した運転手からは、3車線区間のほうが運転しやすく、2車線に減少する箇所で一般車両との錯綜が起こり、車線変更が難しいというコメントが寄せられているとのこと。新東名での実験後、全線片側2車線区間である北関東道の壬生PA〜笠間PA間でも実験が行われましたが、ここでは約50km×12回の実験中に20回の割込みが発生したそうです(新東名では約15km×13回の実験中に2回)。
国土交通省は、ダブル連結トラックについては2018年度の本格導入を予定。トラックの隊列走行については、2020年にまず新東名において「後続無人」での走行を実現し、早ければ2022年に隊列走行トラックを商業化することを目指しています。
一方、新東名 静岡県区間の6車線化は、国土交通省高速道路課によると2020年度以降で、完成したところから順次運用を開始するそうです。また、NEXCO中日本と西日本は今後、静岡県以外の区間についても、新東名および新名神の6車線化に向けた本格的な調査を実施するとしています。