報徳学園vs前橋育英

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勝負を分けた初回の攻防

報徳学園vs前橋育英

 「1回(裏)の4失点が重かったです」。前橋育英の荒井直樹監督はいつものように落ち着いた口調で敗因を語った。1回裏の4点へのきっかけを作ったのが報徳学園の2番・永山裕真(3年)のバントヒット。

 その前に、両チームの試合前の戦略から触れてみたい。前橋育英の先発は192センチ右腕の根岸 崇裕(3年)。報徳学園の選手と首脳陣に話を聞くと、根岸の登板はあるかもしれないと思いつつ、先発で来たのは予想外だった。想定は当然、1回戦で先発したエース左腕・丸山 和郁(3年)。試合前取材の時にも、報徳学園の選手には、対丸山を想定した質問ばかり飛んでいた。

 一方、前橋育英の荒井監督は根岸先発の理由の一つに調子の良さを挙げる。1回戦では丸山が先発したが、対報徳学園打線ということを考えれば、秋のように後ろに残しておいた方が丸山の良さが生きるという思いもあった。根岸本人に先発を伝えたのは試合直前だったそうだが、キャッチャーの戸部魁人(3年)には数日前に方針を伝えている。「報徳学園の1回戦の映像を見ている時に、監督から根岸でいくのでそのつもりで映像を見るようにと言われました」と戸部は試合前に話した。

 話を試合開始時に戻す。1番・小園 海斗(2年)がレフトフライに倒れた直後、永山は根岸の1球目をピッチャー前へ転がし、俊足を生かした。記録は内野安打。試合前に戸部が「根岸はバント処理や牽制には目をつむらなければいけない」と明かしていた。

 打席の永山はそこまで根岸の特徴を見抜いていたわけではないが、リズムに乗せないという意図のあるセーフティバント。「自分で決めました。転がった瞬間にいけると思った」と振り返る。バント処理に向かった根岸は完全に意表を突かれた形となった。

 リズムを掴んだ報徳学園。リズムに乗り切れなかった根岸。ここから四死球やタイムリーなどで一挙4点。結果的に両チームにとって重みのある1回の攻防となった。

 前橋育英の荒井監督は2回からエース・丸山をマウンドに送ると報徳学園打線は沈黙。しかし報徳学園のエース・西垣 雅矢(3年)の前に得点することができず、結局1回の4点しか入らない形で試合は終わった。

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