滋賀学園vs東海大市原望洋

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218球を投げ抜いた金久保優斗に与えられた課題

盛岡大附vs高岡商

延長に入り、滋賀学園の棚原 孝太(3年)と東海大市原望洋の金久保 優斗(3年)が粘り合い、ゲームは膠着状態。両チームの選手のほとんどが、我慢比べだと感じていた。

 その膠着状態が動いたのは14回表。金久保が滋賀学園の先頭打者である7番・田井改周(3年)に四球を与えてしまう。次の8番は投手である棚原。送りバントが考えられるケースで、棚原もバントの構えを見せた。だが、金久保が力んでしまう。痛恨の連続四球。この後、9番・中西 亮太(3年)のゴロをさばいたファースト・大野太一(3年)がベースを踏んだ後、ダブルプレーを狙ってセカンドに悪送球。これを二塁走者の田井が生還し、滋賀学園に待望の1点が入った。ここから金久保が粘れなくなり、滋賀学園打線に4連打を浴びる。気がつけば4点のビッグイニングとなった。「四球がなければ勝てた試合。自分の責任です」とうつむいた金久保。冬場に磨いてきたコントロール。でも延長が長くなり乱れてしまった。終わってみれば球数218。同じイニングを投げた滋賀学園の棚原が192球だったことを見てもやはり多い。野球の神様が、『まだ課題は克服してないよ』と金久保に教えたかったのかもしれない。「最後まで投げ切る力と勝てる投手になりたい」と夏へ向けての思いを語った金久保。素質は十分に見せたピッチングだったと言いたい。

さて、勝負のポイントとは少しずれるが、触れておきたいことがある。まずは球数。今回もインターネット上では球数が多すぎるとの声が多かったと聞いた。確かに218球と192球の数字が目立ってしまうのは否めない。それよりも注目してほしいのは9回を終えた時の両投手の球数で、ともに127球だった。これは9回を投げ切る投手としては標準的な数字と言えるだろう。結果的に延長で球数が増えてしまったということになる。じゃあ、継投すればいいという声がおこるかもしれないが、展開上中々そうはいかない。しかも両チーム初戦。前の試合での疲労はまったくない。その状況であることも最後まで投げ切る要因の一つとなった。

 こういう試合がある度に球数制限の話は出てしまうのは仕方ないし考えていく余地はある。でも、野球は球数制限をしてもそれを1イニングで上回ってしまうことが0%ではなく、もっと言えば、アウトをとれなければ永遠に終わらないスポーツである。球数制限をしてベンチ入り18人が全員登板して、その数を上回ることだって確率は低いがあり得る。そうなった時はどうするのか。確率が0ではない以上、そのことは考えなければいけない。だからこそ、安易に球数制限と言えないのだと取材を通じて感じる。

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