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楽天株式会社は同社のMVNOサービス「楽天モバイル」において、050で始まるIP電話の電話番号を直接SIMに付帯し、楽天グループの音声通話アプリ「Viber」を使って固定電話や携帯電話と発着信できるサービスを発表した。MVNO間の競争が激化する中、低価格な音声通話で差別化を図る。

○データプランSIMで電話が受けられる

楽天が新たに提供する「050データSIM powered by Viber」(以下、050データSIM)は、従来のデータSIM(SMS付き)プランを拡充し、月額料金は現在のデータプランから据え置きで、050から始まるIP電話の電話番号を付帯したプランとなる。サービスの開始は9月下旬から。これにより、データ通信専用プランのSIMであっても、固定電話や携帯電話からの発着信が可能になる。

通話をするには「Viber」アプリをスマートフォンにインストールし、ユーザー登録をしてログインしておく必要がある。着信については携帯電話網側の処理が行われるが、実際に通話を受けてから先はViberの音声通話機能「Viber Out」にはアプリを起動しておく必要がある。IP電話では番号通知が機能しないケースがあるが、050データSIMではきちんと相手側には050で始まる電話番号が表示される。

通話料は当面、キャンペーン期間として無料になる。キャンペーンがいつまで継続するかは未定だが、楽天の説明では当分はプロモーションとして継続したいということだった。参考までに、8月30日時点でのViber Outの料金は、携帯電話宛が1分あたり10.01円、固定電話宛が3.06円。これはライバルとなるLINEのLINE OUTと比べると同等以下の水準となる。またLINE OUTは番号通知や固定電話からの着信ができないが、050データSIMはこうした点もカバーしている。

LINE OUTと050データSIMで通話料を比較した。キャンペーンが終わった場合でも、携帯電話向けはViberが2割近く安いが、為替レートにより変動もありうる。以下はいずれも1分あたりの通話料。

・携帯電話宛て(050データSIM / LINE OUT): 10.01円 / 14円

・固定電話宛て(050データSIM / LINE OUT): 3.06円 / 3円

○快適な通話は可能なのか?

050で始まるIP電話ではあるが、データSIMと同じ基本料金で通話も着信も可能な運用ができるのはかなりのメリットだ。こうなると、気になるのはViberがどの程度の通話品質を持っているかになるだろう。あくまで筆者の体感だが、SkypeやLINE OUTと比べると若干音質が劣るように感じるものの、携帯電話の通話そのものよりはクリアな品質だと感じられる。

あとはインターネット通信のお約束で、通信速度によって品質に影響が出る。楽天モバイルではベーシックプランでは200kbpsに固定となるが、この速度でも通話ができなければ商用サービスとしては失格だ。幸い、Viberは音声チャットアプリの中でも比較的低ビットレートでの通話に最適化されているサービスだとされており、実際低ビットレートでも比較的きれいに聴こえやすい。

MNO、MVNOを問わず通話料金固定などさまざまな手法でユーザーに訴求する試みが続けられているが、低価格と利便性の2点から、050データSIMはかなり魅力的なサービスに映る。現在電話に次ぐ連絡手段として普及しているLINEがSNS使い放題のプランを用意して近日中にMVNOに参入するという情報もあるが、050データSIMはこうした動きに対してかなりの牽制になったのではないだろうか。同じくメッセージングアプリ「カカオトーク」を持つソフトバンク系列やその他のMVNO、あるいはMNOがどのように対応してくるか、非常に興味深い。

(海老原昭)