CDが最も売れていた90年代、大ヒットを次々と生み出し音楽業界の盟主に君臨していたエイベックス・グループ。trf(現TRF)、安室奈美恵、globe、Every Little Thingなどなど、時代を超えて愛されるアーティストたちの影には、残念ながら「時代を超えられなかった」アーティストたちも多数存在していた。
中でも、「そう言えばいたなぁ」レベルの四天王を、筆者が独断と偏見で選んでみた。あなたはご記憶だろうか?

1996年6月デビュー Favorite Blue


プロデューサーとしても活躍する木村貴志と、モデル活動もしていたヴォーカル松崎麻矢の男女ユニットFavorite Blue。


97年2月発売の1stアルバム、翌98年2月発売の2ndアルバムがともにオリコン1位を獲得しているが、シングル曲が思い浮かぶあなたは相当なマニア。収録されていたのはオリコン30位前後の曲ばかりであり、その寄せ集めでもアルバムが売れていたのだから、実にイイ時代である。
同じくエイベックスのEvery Little Thingと同期とあって何かと比較されていたが、タイアップがテレ朝系深夜エロドラマや、迷作・珍作として名高い映画『北京原人 Who are you?』だったりで、その差は歴然だった。
木村は並行してmove(後にm.o.v.eに名称変更)でも活動。アニメ『頭文字D』の主題歌でヒットを飛ばしている。

1996年8月デビュー D&D


沖縄アクターズスクール出身の3人組ガールズユニットD&D。アメリカ系ハーフのOLIVIAがメインヴォーカルを務めていた。


ルックスも良く、歌唱力もダンスも抜群だったが、難点は日本語がほとんど話せなかったこと。『HEY!HEY!HEY!MUSIC CHAMP』を始め、トークバラエティ的な音楽番組全盛の時代、満足なプロモーションができなかったのは痛かった。
OLIVIAのソロ活動に伴い、残り2人がAya&Chika from D&Dとして細々と活動したこともあったが、これではハンバーグのないハンバーグプレート。ニンジンとブロッコリーだけでは売れないのは当然であった。

1996年9月デビュー 大賀埜々(おおが やや)


96年9月に小室哲哉プロデュースでデビューした大賀埜々。
B級アイドル好きの小室が見初めただけあって(?)、彼女も元々はアイドル候補生。89年にフジテレビが運営していたタレント育成講座『乙女塾』のレッスンを受け、翌90年にはPCエンジン向けの実写取り込みアドベンチャーゲーム『みつばち学園』に出演をしている。


デビュー曲『Close to the night』は作曲に木根尚登を迎え、期待十分でのデビューだったが、思ったよりもセールスは振るわず。テレビ露出も少ないままに4曲目からは“小室の右腕”久保こーじにシフト。事実上の戦力外通告である。
そして、ラストシングルはなぜか松任谷正隆プロデュースに。結果はオリコン100位圏外であった。

1996年5月デビュー 天方直実(あまがた なおみ)


95年にテレビ東京系『ASAYAN』の企画「コムロギャルソン」に出場したことがデビューのきっかけとなった天方直実。グランプリは逃しているが、久保こーじプロデュースの形で96年5月にデビューを果たしている。しかし、前述の大賀埜々同様、この時点ですでに小室ファミリーの出世コースからは外れていたのだった。


98年6月の8thシングルは待望の小室プロデュースとなるが、時すでに遅し。「amagata」名義での心機一転を図るも、ヒットとはならなかった。

あらためて掘り起こしてみると、全員96年デビューだったことに驚いた。エイベックスの年表によると、この年は「エイベックス・サウンド多様化」の年となるそうだ。つまり、デビューのチャンスも多かった年だったのだろう。その実験結果はともかくとして…。
(バーグマン田形)