ドイツ・エッセンが誇る世界で最も美しい炭鉱、世界遺産「ツォルフェアアイン炭鉱業遺産群」
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から現在へと引き継がれてきたかけがえのない宝物、「世界遺産」。
世界にはさまざまなユネスコの世界遺産がありますが、世界遺産の数のランキング世界5位のドイツに、世界で最も美しいとされる炭鉱がある事をご存知でしょうか?
今回は、ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州のエッセンという都市にある、世界で最も美しい炭鉱、世界遺産「ツォルフェアアイン炭鉱業遺産群」をご紹介します。
・ドイツ全体をも支えた工業都市エッセン
工業都市としてのエッセンの歩みは、1811年にフリードリッヒ・クルップがこの街で製鉄業を始めたことからスタートします。
当初は燃料に木炭を使っていましたが、ルール川から石炭層が見つかり石炭の採掘がはじまります。
これにより、エッセン周辺には製鉄所や鉄の加工所が瞬く間に乱立し、石炭や鉄製品はルール川によりドイツはもとより、ヨーロッパ中に輸出されクルップ家は鉄鋼財閥として繁栄を極める事になります。
現在のティッセン・クルップ社は、かつてのエッセンのクルップ社とデュッセルドルフのティッセン社とが合併してできた企業であり、現在もエッセンに本拠地を置く鉄鋼業のトップ企業の1つです。
・富の源泉となったツォルフェアアイン炭鉱とツォルフェアアイン・コークス工場
そんなドイツの工業化の根幹ともいえるルール地方の都市エッセンにおいて、富の源泉と言える場所が、今回ご紹介するツォルフェアアイン炭鉱とツォルフェアアイン・コークス工場、つまり世界遺産「ツォルフェアアイン炭鉱業遺産群」です。
ツォルフェアアイン炭鉱は、デュースブルク生まれの企業家フランツ・ハニエルによって発見されました。
当時ハニエルは、製鉄業のためにコークスを捜し求めて様々な場所を試掘していましたが、現在のエッセン郊外を試掘した結果、膨大な石炭層が眠っていることが明らかなります。
1847年、ハニエルはツォルフェアアイン鉱業会社を設立、その後ドイツの工業化を爆発的に押し進める基盤となった炭鉱ともいえる「ツォルフェアアイン炭鉱」がスタートする事になります。
半世紀後の19世紀末には、ハニエルによって発見されたツォルフェアアイン炭鉱はドイツにある全ての石炭鉱山の中で最も石炭が採れる鉱山へと成長していきます。
・20世紀初頭の繁栄の歴史
ドイツで最も石炭が採れるツォルフェアアイン炭鉱は、炭鉱そのものがもたらす富によって20世紀初頭に大幅な増強がなされます。
20世紀初頭には採掘坑は第10採掘坑まで増設され、新しいコークス炉も建設されます。
19世紀末に100万トンを誇っていた産出量は、ほんの20年足らずの第一次世界大戦前には2倍以上、250万トンもの石炭を採掘する巨大な炭鉱とコークス工場群として、巨大なドイツのエネルギー産業の中心へと成長します。