ドイツの「核融合エネルギー」実験装置、稼働を開始

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「クリーンで安全な原子力」の実現に向けて、ドイツの核融合実験装置「ヴェンデルシュタイン7-X」が稼動を開始した。

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ドイツの科学者たちは2月3日(現地時間)、融合実験装置「ヴェンデルシュタイン7-X」(W7-X)のスイッチを入れた。この実験装置が「クリーンで安全な原子力」の利用につながればと、彼らは期待を寄せている。

場所は、グライフスヴァルトにあるマックス・プランク・プラズマ物理学研究所。同国のアンゲラ・メルケル首相によって少量の水素が放出され、ステラレーター型核融合実験装置であるW7-Xは稼動を開始した。

放出された水素はその後、太陽に存在するものと類似した超高温のガスであるプラズマになるまで加熱された。W7-Xでは最高で摂氏1億度を目指している。

W7-X自体はエネルギーを生み出すためのものではなく、プラズマを原子炉内の所定の位置に所定の時間(30分間)留めておく技術のテストに使用されることになっている(1mgのヘリウムガスを使用した初のプラズマ実験は2015年12月10日に行われ、100万度、0.1秒程度の持続に成功した)。

核融合技術の実現は数十年先になると考えられているが、核融合推進派の人々は、この技術は化石燃料と核分裂炉に対する実行可能な代替手段になる可能性があると主張している。

フランスに建設中の別の核融合実験装置「ITER(イーター)」(日本や米国、EU、ロシア等を含む国際協力で進められている)では、プラズマを所定の位置に留めるために電流を使うのに対して、W7-Xでは磁石を使った複雑なシステムが用いられている。ドイツのチームによると、この方法のほうがプラズマを長時間、所定の位置に留めておくことができるという。

ドイツは、核融合プロジェクトに10億ポンド(約1,720億円)以上を費やしてきた。そのうちの3億ポンドがW7-Xに投じられている。

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