部員10人の芝浦工大高、多くの収穫を得た敗戦

3打点の神谷 敦貴(駿台学園)

 駿台学園が1回表から試合を優位的に進めたが、10人の芝浦工大高の食い下がりが見事な試合だった。 1回表、駿台学園は一死二、三塁のチャンスを作ると、4番神谷 敦貴(2年)の犠飛で1点を先制。さらに5番中山 光明(2年)の本塁打で2対0とする。5回表、二死二塁から神谷が右中間を破る適時二塁打で3対0。駿台学園は上位打線を中心に振れている打者が多い。さらにレベルアップすれば、楽しみなチームである。

 駿台学園の先発・堤涼太(2年)が打たせて取る投球で、なかなか点が取れなかった芝浦工大高だったが、6回裏、安藤 豪希(1年)、矢部 泰佑(2年)の連打で無死一、二塁のチャンスを作り、一死二、三塁から4番増田恒輝(2年)がストレートを捉え左中間を破る適時二塁打で3対2と1点差に迫る。 183センチ82キロと実に恵まれた体格をした増田は一打席目からホームラン性のファールを打つなど長打力が光っていた選手だが、腕っぷしの強さを生かした長打であった。

 しかし7回表、今度は4番神谷が3打点目となる左中間を破る適時二塁打で4対2とする。4番打者が実に頼もしい活躍を見せた。ここで芝浦工大高は先発の國広翔大(2年)が降板し、2番手には一塁の増田がマウンドに登った。先ほどの豪打で注目度が変わってきた。これほどの体格からどんなボールを投げ込むのか、注目してみた。まだ未完成だが、将来性はかなり高い。

 テイクバックを大きく取って、まるで柔道の背負い投げのようなフォームから投じるストレートは常時125キロ前後(最速128キロ)だが、落差ある変化球が良い。増田は7回途中から無失点。打線は駿台学園の2番手を捉えきれず敗れたが、10人の芝浦工大高が4対2と接戦を演じたのは大きな収穫といえる。

 そういう意味で、増田は投打の中心選手になりそうだ。 増田は中学時代は成長痛で、殆どプレーができず、投手として入部したものの、ケガに苦しんできた。

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2番手の増田恒輝(芝浦工大高)

 投手として復帰を果たしたのは新チームからだ。わずか2か月でこれほどのボールを投げられるのだから、しっかりと体を作って、フォームを固めた時は、さらにストレートが速くなるのではないだろうか。「今日の打撃はなかなかの当たりでしたし、まだピッチングもこれから。未完成ですけど、春から夏にかけてぐっと伸びてくれれば」と古川真監督も期待を寄せる。増田も「今日はストレートの走りは良かったですけど、まだフォームの安定性もないですし、これからしっかりとフォームを固めて、体を作っていきたい」と今後の課題を語った。打撃では中村剛也(埼玉西武)の理論に憧れ、投球では西武時代の松坂 大輔に憧れて真似てきた。

 増田だけではなく、多くの選手が発展途上だ。「この2か月、驚くようなプレーを見せてくれているんですよね。練習じゃあまりできないことが試合でできていたりと。でもうちは秋勝つことではなく、夏に確信をもって勝てるチームにできるようにするために、打撃、守備、走塁の完成度を高めていかないと思います」全てにおいて課題があると指摘した監督。夏は驚くだけではなく、当たり前にこなせるまでのレベルにしなければ勝てないというメッセージでもある。それは選手としても自覚している。主将の楠 大輝(2年)も、「守備、走塁。打撃面ではスイングスピード、長打力といったものが欠けていることが分かりました」しっかりと自覚をしている。普段は大宮市内にあるグラウンドで2時間弱の練習を重ねる芝浦工大高ナイン。「多くの課題をもらいましたが、こんな経験は、本大会に出場ができなければ感じられなかったものなので、感謝しています」と古川監督が語るように、この経験を糧に春には驚くような戦いぶりを見せられるか。10人の芝浦工大高ナインの挑戦はここからがスタートとなる。

(文=河嶋 宗一)

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