九州国際大付vs作新学院

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山本武白志の変貌の要因は「タイミング」の取り方

山本武白志(九州国際大附)

 3回戦の初日、第1試合は早稲田実業が8対4で東海大甲府を、第2試合は花咲徳栄が1対0で鶴岡東を、第3試合は東海大相模が11対2で遊学館を下し、関東勢が3連勝を飾った。いずれも前評判の高かった学校ばかりで納得がいくが、第4試合で作新学院が勝てば関東勢の4連勝となり、“東高西低”は露骨になる。そして、16日の3回戦で関東一が秋田商に、健大高崎が中京大中京に勝てば、甲子園大会の準々決勝が関東大会に様変わりする可能性があった。関東の野球関係者やファンには嬉しいが、他地区の関係者やファンには屈辱である。その関東勢の独走に九州国際大付が待ったをかけた。

 個人的な話になるが、出場校がひと回りした翌日、日刊スポーツ紙に「小関順二氏初戦総括」というコラムが掲載された。初戦の戦いを振り返り、注目選手50人を一覧表の中で紹介するというものである。10年くらいやっている仕事で、これがあるから見落としのないように試合に集中しようと思っている。その一覧表に九州国際大付の4番山本 武白志を載せなかった。

 その素質の高さを知らなかったわけではない。昨年の7月19日、福岡大会5回戦の福岡工大城東戦で山本は筑豊緑地公園球場レフトスタンド向こうに切り立つ崖にホームランを放り込んでいる。この試合を見た数日後、Webの観戦記に「来年は騒がれる存在になっているだろう」と書いた。しかし、その後の選手権を見て、福岡大会の存在感はどこへ行ってしまったのだと思った。一言で言えば、タイミングの取り方に迷いがあった。タイミングが取れない――それは即ちバットを強く振れないということである。

 今大会の1回戦、鳴門戦はどうだったかというと、タイミングは取れていた。早い段階で前足を引き、その状態のまま投手のボールを待つというスタイルだ。しかし、昨年夏の迷いと鳴門戦の5打数1安打という結果を見て、一覧表に入れることをためらってしまった。そんな私を嘲笑うように、2回戦の大阪偕星学園戦では第3、4打席で連続ホームランを放った

 1本目は5対4でリードした5回裏に3ラン、2本目は8対9でリードされた7回裏に同点ソロホームランという内容である。ともに緊迫した場面で飛び出したホームランというところに価値がある。そして、作新学院戦では0対0の6回にソロホームランを放っている。打ったのは1ボールからの2球目、135キロのストレートだった。

 ちなみに、この試合で投じられた14球のうち見逃しはわずか1球。こういう攻める姿勢はチーム全体にも共通していて、「全投球に占めるストライクの見逃しの割合」つまり見逃し率は8.3%という低さだった(それだけ好球必打だった。対戦相手の作新学院は18.8%)。今大会でも最も低い見逃し率と言っていいだろう。準々決勝の対戦相手は甲子園初ホームランを放ち、抜群の勝負強さを見せている清宮 幸太郎(1年)が3番を打っている早稲田実業。好球必打はこのスラッガー対決の行方を左右するかもしれない。 

  

(文=小関 順二)

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