東海大相模vs聖光学院
小笠原慎之介(東海大相模)
東海大相模が堂々とした横綱相撲で初戦を突破した。注目したのは得点した1回と3回の攻撃で、ともに2死走者なしからの得点だった。1回裏は3番杉崎 成輝から7番長倉 蓮まで四球を挟んだ4連打で4得点。この攻撃では19球中、ストライクを見逃したのはわずか2球。狙い球を定めた好球必打は迫力があった。
3回裏は5番磯網 栄登からの4連打で2得点。この回は好球必打がさらに徹底された。初球打ちが2人、1ボールからのヒッティングが1人、もう1人は1ストライクからの2球目を打った。この試合全体では見逃し率(全投球に占めるストレートの見逃しの割合)17.4%と大したことはないが(ノーマルな数値は14〜18%程度)、ここぞというときに狙い球を絞ってたたみかけてくる。強豪校に共通する攻撃スタイルと言っていい。
もう1つ注目した点がある。1回裏、1点を挙げたあとの2死一塁の場面。一塁走者の豊田 寛が2球目に盗塁するのだが、聖光学院の捕手・佐藤 都志也はこの回の攻撃が始まる前のイニング間の二塁送球であっと驚く1.78秒というタイムを出していた。プロ顔負けの強肩を見せられても怯まずに二盗を成功させたことにより、聖光学院の強力な武器の価値を引き下げたと言っていい。佐藤のスローイングに関しては、捕球後に体勢を左に移して投げるクセが目についた。実戦ではできないスタイルだ。それをいちはやく見抜いた東海大相模ベンチは冴えていた。
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東海大相模の先発は大方の予想に反して右腕の吉田 凌だった。昨年夏の出来を10だとすれば今年は春から調子が上がらず、今日の出来も6程度だった。しかし変化球中心にした配球でボールを丁寧に低めに集め、降板する9回1死まで的を絞らせなかった。とくに効果的だったのがチェンジアップ。これが狙われていると見ればスライダー中心の配球に切り替え、ストレートのボリューム不足を補った。
超高校級左腕の呼び声高い小笠原 慎之介が登板したのは9回1死走者なしの場面。わずか9球の“顔見世”登板だったが、この9球が凄かった。4番西山 伸之助には148キロ、148キロ、147キロと全球ストレートで二塁ゴロ、5番笠原 輝には初球スライダーのあと150キロ、149キロ、151キロという圧倒的な快速球で追い込むと、最後は落ちる変化球で三振に斬って取りゲームセット。9球の登板は待ち焦がれた身には物足りなさが残るはずだが、心地よい余韻をしばらく楽しめた。
(文=小関 順二)
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