上位打線だけではなく、下位打線にも勝負強い打者を揃える中京大中京

 強いチームは上位打線だけではなく、下位打線の選手も目立つぐらいの力量がある選手もそろっている。 中京大中京と鹿児島実と名門校同士の一戦は中京大中京の下位打線を打つ選手の活躍が光った一戦だった。 2回裏、中京大中京は一死一、三塁から内藤 諒一(2年)が左前へ落ちる適時打で1点を先制し、だが3回表、鹿児島実は有村 健太(3年)の適時打で1対1の同点に追いつく。

 その後は両投手が好投。中京大中京の先発・上野 翔太郎は、コントロール重視の投球。140キロ前後(最速143キロ)の速球、さらに130キロ前後のスライダー、カーブ、チェンジアップと両サイドに投げ分ける完成度の高い投球。ここぞという場面でしっかりと力で押す投球を見せ、開幕戦で18得点を挙げた鹿児島実もなかなか捉えることができなかった。

 鹿児島実の橋本 拓実も好投。この日はセットポジションからの投球となった。右オーバーから投げ込む直球は常時130キロ〜140キロ。最初は130キロ中盤であまり調子が良くないと思っていた。しかし尻上がりに135キロ以上の速球を計測することも多くなり、力で押す投球もできるようになっている。

 またスライダー、フォークの中に、100キロ前後のカーブを投げるなど、緩急を織り交ぜた投球で中京大中京打線を封じることができていた。 試合が動いたのは6回裏、中京大中京は一死から4番伊藤 寛士(3年)が左前安打で出塁。伊藤が盗塁を仕掛け、見事に成功。一死二塁のチャンス。伊藤は足自体は速くないが、一瞬の隙をついた見事な盗塁であった。そして矢田崎 明土(3年)の適時打で勝ち越しに成功すると、さらに一死満塁から内藤がストレートを捉えて、右越え適時打二塁打で4対1と勝ち越しに成功する。

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 この内藤の一打は大きかった。7回表、鹿児島実は長谷部 大器(3年)の犠飛と安藤 優幸(3年)の適時打で4対3と1点差に迫られるものの、7回裏、4番を打つ伊藤が一死三塁のチャンスから左前適時打を放ち、5対3と点差を広げる。通算40本塁打以上を打つ伊藤。伊藤は外角打ちが非常に上手い。弧を描くようなスイング軌道で、打球を運ぶ感覚で飛ばすが、ここ一番ではレベルスイングができる。状況に応じてコンパクトなスイングができる。6回裏に盗塁を決めたように、機転が利いたプレーができる選手である。さらに8回裏にも一死二塁から内藤が左中間を破る適時二塁打、さらにエース上野の適時打が飛び出し、7対3に。

 この日4打点の内藤。とても8番打者とは思えないぐらいの打撃の完成度を誇る好選手。スクエアスタンスで構える姿は力みがなく、投手をしっかりと見据えたバランスの良い構えができており、インパクトまで無駄がなく、さらに下半身のステップを見るとしっかりと踏ん張りが効いており、フォームの安定度もなかなか。まさに好選手であった。こんな打撃センスが高い選手を下位に控える。改めて層の厚さを実感させる。

 そして投げてはエースで主将の上野 翔太郎(3年)が尻上りに調子を上げていき、140キロ台の速球、キレのある変化球で鹿児島実打線を抑え、3失点完投勝利でベスト16入りを決めた。上野の投球は完成度の高さだけではなく、気持ちの強さに加え、一試合を通して、どこで力を入れればいいか、計画性を持って投げることができている。ドラフト候補云々の投手ではないが、投球の引き出しの多さを見ると、さすが、全国レベルの強豪が揃う愛知大会を勝ち抜いた投手だと実感させる。

 次は関東一と対戦するが、お互い打撃力が高く、かなり激しい試合が予想される。3回戦屈指の好カードとなるだろう。

(文=河嶋 宗一)

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