仙台育英vs明豊

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見逃し率で分かる仙台育英の好球必打の姿勢とますます見逃せない平沢大河のパフォーマンス

平沢大河(仙台育英)

仙台育英の宮城大会でのチーム打率は.423。これは鳥羽の.429に次いで参加校中ナンバー2である。実はスカウトが「彼は特A(ドラフト上位候補)です」と評価する平沢 大河(遊撃手)が宮城大会で打率.176と絶不調に陥っていた。それでいてチーム打率が4割を超えている。この打線の迫力が1回表に発揮された。

 1死後、何と平沢の2ランホームランを含む5連続長打が飛び出し4点、さらに2死後に8番打者のタイムリーが続いて5点を先制した。この1回の攻撃で目立ったのは好球必打。打者9人を送る猛攻の中で、3球以内に打って出た打者が6人いる。佐藤 将太が初球、青木 玲磨が3球目、平沢が2球目、佐々木 良介が2球目、佐々木 柊野が初球、谷津 航大が2球目である。

 好球必打は打者の判断基準だから、投手の役割が大きい野球を論じるのに不適切ではないかと言われそうだが、この仙台育英対明豊戦だけでなく、大番狂わせと言われた津商対智辯和歌山戦でも好球必打型のチームが勝っている。

 好球必打を最も適切に表現するのは「見逃し率」である。見逃し率とは全投球に占めるストライクの見逃しの割合のこと。要するに見逃しの少ないチームのほうが試合に勝っているということである。早速、8月9日の見逃し率を見ていこう(見逃し率は数値が低いほうが好球必打の傾向がある)。

 津商12.8%>対智辯和歌山18.4% 創成館12.1%>対天理17.6% 滝川第二11.1%>中越18.7% 仙台育英12.6%>明豊17.9%

 試合後に「やっぱり見逃しの少ないほうが勝っているんだ」と、結果論的に見ても昂奮しない。しかし、5回が終わってグラウンド整理をしているとき、見逃し率の途中経過を見ると違う感慨がある。圧倒的な有利が伝えられた智辯和歌山だったが、2対2のスコアで5回が終わったときの見逃し率は智辯和歌山の20.6%に対して津商は14.8%だった。 これを見てもほとんどの人は智辯和歌山の打線の迫力を1回裏に見ているから「今に盛り返すさ」と思ったに違いない。しかし、私は「優勝候補の智辯和歌山が負けるぞ」と、このとき思った。そういう目でゲーム後半を追っていたので一投一打に昂奮した。 

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 話を第4試合に戻すと、仙台育英対明豊戦の5回終了時の見逃し率は「明豊12.8%対仙台育英16.1%」。その時点でのスコアが仙台育英の8対0だったので、ここから明豊が逆転するとは思わなかったが、目をみはったのは6回以降の仙台育英の攻撃である。「明豊投手陣のことは大体わかったから、ここからは積極的に行きますよ」と言わんばかりに好球必打に徹したのである。最終的に見逃し率は明豊の17.9%に対して仙台育英は前出のように12.6%と上回った。こういう楽しみ方が見逃し率にはある。

 さて、選手で注目したのは平沢である。シートノックのときからフィールディング、スローイングの動きが別次元だった。宮城大会で絶不調を極めた打撃は1回に右中間スタンドにぶち込んでいるように復活モードに入ったと思っていいだろう。振りの強さとしなやかさ、振り出しのコンパクトさに対して打ち終わったあとのフォロースルーの大きさなど、すべての面で魅了された。ドラフト上位候補の評価は不動になったとみていいだろう。

 宮城大会のときの不調の名残は守備面に見えた。3回裏、明豊の8、9番打者のゴロを下がって捕球体勢に入り、堂田 弘平のゴロはスローイングエラーした。試合後にコーチの方に聞くと、「宮城大会は人工芝の球場で行われるので、強い打球に対して下がって処理するクセがついたのだろう」と話してくれた。不満はこの2つのプレーだけである。

 走塁は4回表の二塁打のときの二塁到達が8.03秒と俊足の部類。この一打は詰まり気味の右前打と言っていい。平沢は外野手の深い守備位置を見て、途中からエンジンを全開にして二塁を狙いにいく。まるでオコエ瑠偉が東東京大会決勝で見せてセンター前二塁打のように。勝手な想像だが、話題になったこのオコエのプレーに刺激された走塁だろう。走攻守が高いレベルで3拍子揃った平沢からますます目が離せなくなった。

(文=小関 順二)

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