東京地裁(小坂敏幸裁判長)で28日開かれたライブドア(LD)事件の公判で、元社長、堀江貴文被告に対する最後の被告人質問が行われた。尋問内容の要旨は次の通り。


貸し株への認識

── (高井康行弁護士)貸し株については2003年当時、よく分かっていなかったと言っていたが、株券が物理的に移動すると考えていたのか。

 具体的には考えていなかったが、ほふり(証券保管振替機構)に入っていなかった時期もあるし、たぶん移動するのだろうと思っていた。

── 議決権は。

 調べたわけではないが、移動しないのではないかと考えていた。移動すると株主としての価値がなくなっちゃうから。

── 貸し株は一般的に消費貸借と考えられるが、知っていたか。

 消費貸借という言葉が分からない。法律家じゃないんで。

── 貸した先でどうなるのか、関心はあったか。

 あまり関心はなかった。売ったり買ったりするんだろうなー、というぐらいの認識しかなかった。自分が借りる側なら話は別だが。

── 株を借りた人がどうやって返すのか、詳しく考えたことはあるか。

 詳しく考えたことはなかった。売ったら買って返すんだろうなあ、と。

── 貸し株料については。

 知識はないがお金を貸しても利息は支払われるから、金利みたいなものだろうと思っていたが、当時の金利は二束三文だったので、貸し株料も二束三文なのだろうと思っていた。

── 熊谷(史人)さんから貸し株料について、具体的な説明を受けたことはなかったか。

 具体的には記憶がないんですけど。

── (貸し株料について説明した熊谷被告から堀江被告宛てのメールを読み上げる)当時はこんな説明を受けなければいけない程度の知識しかなかったのか。

 そう思う。

── みずほ証券に貸し株をしたことは覚えていたのか。

 みずほに貸し株をしたことは、割とずっと覚えていた。

── なぜ。

 うざかったから。しかし、最後には(見返りとして)会社に1000万円だか2000万円だかの仕事の発注をしてもらったし、初めてやった貸し株だったから。
── PLLCへの貸し株は。

 忘れていたが、思い出した。宮内(亮治)さんの調書を読んでだと思う。

── 100分割の時に、2つの証券会社に貸し株をしていたことは。

 それは覚えている。片方は丸三(証券)で、もう片方は保釈後に打ち合わせでメールを見せてもらって、ああこの会社かと思った。

── 「弥生」の買収で貸し株をしている件については。

 拘置所で、オオサワとかいう検事に「弥生の件でも貸し株をしているだろう」と言われ、「いやー、覚えていないですね」と言ったら、5秒ぐらいでボタンを押されて「帰れ」と言われた。なんてひどい検事なのだろうと思った。

── 「ニッポン放送」買収の際の貸し株については、どうか。

 忘れていたが、思い出した。裁判中、「貸し株貸し株」と言われ続けてたんで調べる過程で、リーマン(・ブラザーズ証券)に貸して、あの時やいのやいの投資家からも言われたなと思い出した。

── あなたはみずほ証券への貸し株には積極的だったのか。

 消極的だった。少なくとも当初は。

── どうして。

 LDの株で個人的に利得を得るのは違和感があった。1000万円をもらわなくても会社から十分給料をもらっていたし、生活に困っていないし、使い道もなかったから。

── あなたはメールで、貸し株料について「個人的にはいいから、会社に仕事をくれ」と言っているが。

 しつこかった。断りたかったが、口実がなかった。1000万とか2000万の仕事くれねえかなとダメ元で頼んでみたら、乗ってきた。

── 途中から宮内さんに一任しているか。

 毎回毎回、(みずほ証券の担当者は)僕に直接連絡してきた。僕が知らなくていいことをダラダラ(メールなどを)書いてきた。どうでもいいよ、と。仕事くれるならいいけど。建前みたいなことをごちゃごちゃ言ってくるんですよ。お前ら、どうせ儲けたいだけなんだろう、と。面倒くさいから、宮内さんに任せた。

── あなたの個人口座にみずほ証券から約12万円が振り込まれていたことは、知っていたのか。

 うーん、知らなかったですね。

── 12万円になった経過は分かるか。

 メールを今見直しているが、どうしてそうなったのかは分からない。

── 12万円も宮内さんとみずほ証券の間で決めたのか。

 おそらくそう。

── 12万円の主旨は。

 分からない。もらった仕事からしたら、微々たる額だ。

── 自分の口座を見ることは。

 ないっすね。キャッシュカードです。

ホリエモン情熱ファンド

── 「ホリエモン情熱ファンド」には、ライブドアファイナンス(LDF)から1円しか振り込まれていないが、知らなかったのか。

 知らなかった。少なくとも1000万円以上だと思っていた。

── 1円というのはいつ知ったか。
 
 保釈後。ファンドはすべて解散することになって、私が実質買い取らないといけなくなり、契約書を見たら1円だとなっていておったまげた。

── なぜ1000万円だと思っていたのか。

 僕がそういう話をしたから。国際事業部(など)に月600万円支払うことになっていた、年7200万円を会社に発注することになるわけだから、少なくとも1000万円くらい出しなさいよ、と言ったと思う。

「やりきるしかない」検証

── あなたは「やりきるしかない」という言葉は、突発的には出てこないと言っていたが、文章表現では使うのか。

 いや、あまり使わない。

── ブログは見てみたか。

 ほぼ全部。「やりきるしかない」と使っているのは、検察官が(21日の公判で)指摘した1カ所だけだと思う。

── ライブドアグループで、よく「やりきるしかない」と言っていた人はいるのか。

 いると思うが、パッと思いつかない。

── 裁判の証拠のメールは見てみたか。

 はい。

── 「やりきるしかない」と使っている人はいたか。

 羽田(寛)さん、宮内さん。

── あと、熊谷(史人)さんもいるが。熊谷さんは「先方はやりきると言っているんで」「やりきりたい」、宮内さんは「やりきる方向で」「やりきってください」、羽田さんは「気合を入れてやりきります」「必ずやりきります」「絶対にやりきりましょう」と書いている。つまり、あなたよりあなた以外(の部下)が日常的に使っている。

 はい。

つづく

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