ライブドア(LD)事件で証券取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載など)の罪に問われた元社長、堀江貴文被告の第25回公判が28日、東京地裁(小坂敏幸裁判長)で開かれた。被告人質問に先立って、裁判所が職権で証人採用した伊藤眞・慶応義塾大学商学部教授(会計学)に対して弁護側が質問。伊藤教授は自社株を借株した際の処分差益について、「自社株処分に関する当時の会計基準が、直接該当するわけではない」と述べた。

 LDは2004年9月期に、堀江被告から借り受けたLD株の売却益を企業買収に充当。そこで残った売却益を堀江被告に返還するLD株の購入費にしたほか、連結決算に売り上げ計上した。検察側は、これは認められていない自社株売却益の売り上げ計上だと主張している。

 伊藤教授は自社株売却益について、21日に検察側が行った前回の尋問同様、「損益計上するのは間違い」と証言。一方で、当時の会計基準は自社株を空売りして損益を発生させることを想定しておらず、当時の会計基準に直接該当する規定はないとも述べた。


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 伊藤教授への尋問内容の要旨は次の通り。(質問者は高井康行弁護士)

── 2002年の金融商品会計の実務指針改正時、自己株を空売りして、損益を発生させることは想定されていたのか。

 対象外なので、想定する必要がない。

── 当時、自社株を売って、どこに計上するのか本格的に議論されていたか。

 ないと思う。

── 論文などで取り上げたことは。

 ないと思う。

── この問題を、証人(伊藤教授)が考えるようになったきっかけは、証人出廷が決まってからか。

 そうです。

── 前回、(自社株売却益の会計処理について「その他の資本剰余金になる」とした)証人の考えは唯一絶対で、証人の考えに反する処理をしたら違法だと思って証言したのか。

 違法であったかはどうかは分からない。自己株会計基準に沿って考えると、損益にするというのは間違っている。

── (小坂裁判長)当時、(自社株売却益の計上について)例外的な扱いをしていた会計士はいたか。

 普通の会計士は私の考えでやっていたと思うが、中には違う会計処理をしていた人もいたかもしれない。

── (質問者が高井弁護士に戻る)ここでは、自己株式の処分は新株発行を準用した基準になるのでは。

 そうです。

── この会計基準には、自己株式の内容に関する規定は他にないのか。

 ないと思う。

── そうすると、自己株式を借りて処分するというのは、基準に直接該当するとはいえないわけか。

 直接該当するとはいえない。

【了】

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