20日、日銀本店で記者会見した福井総裁。(資料写真:宗宮隆浩)

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日本銀行<8301>の福井俊彦総裁は20日、東京都中央区の日銀本店で記者会見し、村上世彰(よしあき)容疑者が運用していた投資ファンド(村上ファンド)に個人で1000万円を拠出していた問題で、2005年末時点で運用資産の残高が2231万円と当初の2倍以上に達していたことを明らかにした。

 内訳は、民間時代の99年に拠出した元本1000万円に対し、約6年間で得た純利益が562万円、含み益が669万円で、そのほか投資組合が解散した関係で01年2月にも分配金242万円の支払いを受けていた。

 会見冒頭で、福井氏は「拠出を続けたことは日銀のコンプライアンス(法令遵守)ルール上、問題があることではないが、世の中をお騒がせしたことは私の本意ではない」と釈明し、混乱を引き起こした「ケジメ」(福井氏)として報酬の30%を7月分から半年間、自主返上する考えを示した。また、2月に同ファンドに解約を申し入れており、6月末にも清算される見通しで、その際に受け取る運用残高全額については「私の利益のためには使わず、慈善団体に寄付する」と述べた。

 公表された文書によると、運用残高は2000年9月末時点から1100万円前後で推移しており、02年12月末時点では959万円と目減りしている。04年12月末時点では1366万円としていたが、村上ファンドが株式を保有していたニッポン放送やTBSで経営権争奪戦があった05年の年末までには、前年比63%増と大幅に膨らんだ。福井氏は「前年との数字のギャップに驚いた。彼(村上容疑者)の当初の志に沿った動きになっていないのではないかという疑念を強める材料になった」と語った。

 また、株式保有の状況についても公表。総裁就任直前の03年1月末時点で、社外取締役を務めていた商船三井<9104>(1万株)、キッコーマン<2801>(5000株)、富士通<6702>(5000株)の3社、アドバイザリーボード(経営委員会)のメンバーだった三井不動産<8801>(5000株)、非常勤顧問だった新日本製鐵<5401>(1万株)の計5社の普通株式を保有し、就任後は売買は行っていない。今後の対応について、福井氏は 「売買しないことを担保するために、何らかの凍結措置をきちんとしたい」と話した。

 村上容疑者の逮捕については「私としては、今でも想定外」と認識を語り、「きちんと罪を償ってきれいな身になって出てきて欲しい」と続けた。【了】

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