人権団体アムネスティインターナショナル日本が主催する講演ツアー「子ども兵士のいない世界をめざして」に講師として招かれている元子ども兵士のバンヤさん(27歳、タイ在住)とチャイナ・ケイテッツィさん(29歳、デンマーク在住)が19日、東京都豊島区の立教大学池袋キャンパスでそろって講演した。それぞれの子ども兵士時代の体験と、社会復帰までの道のりなどについて話し「子ども兵士の存在を知ってほしい、忘れないでほしい」と訴えた。

 ミャンマー(ビルマ)で13歳から17歳までを子ども兵士として過ごし、現在はビルマ人権教育機関(HERIB)で勤務するバンヤさんは、「国別で見ると子ども兵士の数は(旧)ビルマが世界で最も多い」と述べた。バンヤさんによると、ミャンマー政府軍40万人の4割程度が子ども兵士で、政府軍に対抗するいくつかの民族武装グループの中にも、合計で7000人ほどの子ども兵士がいるという。

 ミャンマーには民族的な弾圧から、一カ所に定住できない国内避難民という存在があり、家族から離れて武装グループに加わりやすい条件がある。「民族を守るため」という宣伝で自発的に兵士となる者もいれば、生活の糧を得るためにやむなく軍に加わったり、誘拐などで強制的に徴兵される例もある。兵士となった子どもらは、敵兵だけでなく一般人を含む殺人や、村の焼き討ち、レイプなどをさせられる。乱暴な行為をすればするほど褒められるため、中にはそうした蛮行を英雄的行為として自慢する子どもらもいるという。

 ミャンマー政府は子どもの権利条約と女性差別撤廃条約を批准しており、18歳未満の徴兵はしないと表明しているが、子ども兵をめぐる環境に変化はない。紛争地域のモニタリングも大きく制限されており、国際機関などによる圧力を拒んでいる。

 ウガンダ生まれ、デンマーク在住で、『Child Soldiers(子ども兵士)』の著者チャイナ・ケイテッツィさんは「子ども時代を取り戻せないことが最もつらい。料理人から、スパイ活動や上官のボディーガードまで、何でもやらされた。不特定多数からの性的虐待も受けた」と話した。 

 チャイナさんは1984年、8歳のときに当時の反政府勢力だった国民抵抗軍(NRA=現政権)に捕まり、その後11年間NRAで兵士として上官のボディーガードを担当した。不特定多数から性的関係を強要され、14歳で父親不明の息子を産んだ。1995年に他の兵士から武器を盗んだと疑われ、処刑を免れるためケニア、タンザニア、ザンビア、ジンバブエを経由して、バスで南アフリカへ逃亡。4年間、南アフリカに滞在した後、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の援助で、デンマークに移送された。

 デンマークで心理療法士1人とソーシャルワーカー2人に、社会復帰の手助けをしてもらったチャイナさんは「私はまだラッキーだった。軍から逃げることはほとんど不可能だし、家や家族を失い、逃げる場所もないことが多い。逃げたとしても、どこの国に行くかで受けられる支援に差があるし、社会復帰をしたとしても元の国に戻り、再び兵士になる人もいる」と、元子ども兵士に対して国際的な対応策が確立していないことを訴えた。

 元子ども兵2人は「友達や家族に伝えてほしい。それを繰り返せば、やがてはその声が政府にも届くだろう」と、子ども兵士の問題に関心を持つ人が増え、その結果として子ども兵が減っていくことへの望みを語った。同講演には、国際協力などに関心の高い学生ら約160人が集まった。【了】

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