文豪ドストエフスキーも一時期ギャンブルにはまり、破産寸前に陥った。最近では106億円もの巨額マネーを子会社から調達し、大半をカジノに注ぎ込んで逮捕された“ティッシュ大王”こと井川意高氏が思い出される。不景気の今においても、彼のような現代日本の“貴族”から酔っ払いサラリーマンまでを虜にするのが、闇に蠢く賭博場だ。
 「警察官僚出身の副知事に陣頭指揮を執らせ、石原慎太郎前都知事が大号令をかけた『風俗浄化作戦』は、繁華街から店舗型ヘルスなどを一掃したが、こうした中で、息をひそめながら繁盛してきたのが闇バカラ、闇スロット、大相撲の力士がはまり込んで名をはせた野球賭博などです。中でもバカラは闇の中で生き続けてきた人気の賭け事ですよ」(ギャンブル評論家)

 バカラを邦訳すれば『ゼロ』あるいは『破滅』という意味を持つ。丁半博打のように“生きるか死ぬか”のスリルを味わえるところが人を魅了するのだという。
 「競馬にしろパチンコにしろ、ギャンブルの多くは傾向や攻略法が出回っており、ある程度勝ち負けの命運をコントロールできる。しかしバカラはいくら努力しようが、結果を左右する確率自体はいずれも等しい丁半博打。そこが、たとえ一晩に数百万円のカネを失っても、再び闇バカラのドアをくぐるほど博打好きを魅了してしまう要点です」(同)

 一方、経営する側のメリットは計り知れない。
 「少人数で運営できるため人件費がかからない。その上スペースも目立たない“小箱”で済む。特に仕入れもせず、技術もいらず、なのに毎晩半端ではないキャッシュが転がり込む。こんな商売がオモテ社会でそのまま合法化されたら、まともな起業など誰もしなくなるだろう。非合法でも手を出す輩が後を絶たないのは、資金を出し続けられる金主がいるからだよ」(風俗経営に詳しい事情通)

 今年10月、警視庁中野署は、インターネット上で客に賭博をさせていたとして、常習賭博の疑いでネットカジノ店『ネバダ』経営者など3容疑者を逮捕した。
 「ネバダは歌舞伎町の区役所通りに面した雑居ビル地下1階の店舗内にパソコン12台を設置し、海外の賭博サイトに接続して客にバカラを行わせていた。店の看板は『インターネット』で、ネットカフェを装って営業。1日に10人前後の客が入り、摘発1カ月前の9月までに7000万円を売り上げていたようです」(警視庁担当記者)

 摘発されたネバダの経営者のような“ポッと出”や“お飾り経営者”によるバカラ屋は摘発で消えても、その上流にいる実質的な金主は当局からアンタッチャブルな存在だ。