キャリアは儲からない?絶好調“新型iPad”をauが取り扱わないワケ
遅い……。まだなのか……。アップルやソフトバンクモバイル(SB)から新型iPadが発売されたのが、3月16日。しかし、昨秋からiPhone4Sの取り扱いを開始し、今回のiPadもSBと同日に発売するとみられていたKDDI(au)は、約1ヵ月もたっているのに、まだ取り扱いを開始していないのである。
一部メディアは、3月初頭の時点で「auからの発売は4月以降にずれこむ」と報じていた。アップルとの販売契約交渉が難航しているためだという。
その真偽のほどはどうなのか? そして、いつになれば新型iPadが発売されるのか? いや、auはそもそも同機を取り扱う気があるのだろうか?
「交渉時に相当厳しい要求を突き付けてくるのがアップルですから、それが原因で契約締結が遅れている可能性は確かにあります。ただいずれにせよ、auから近々iPadが発売されそうな気配はないですね」
そう言うのは携帯電話ライターの佐野正弘氏だ。
「SBと同日発売できなかった時点ですでにタイミングを逸しているので、中途半端な時期に売り出したのではいかにもインパクトが弱い。夏モデル携帯端末の発売に合わせ、5月あたりから取り扱うのではという噂もありますが、それではSBより2ヵ月も遅れてしまうことになり、これも得策とは言い難いですね」(佐野氏)
もともとauは、タブレット端末に対してさほど積極的なキャリアではない。それは現在、個人向けのタブレット端末が同社のカタログ上に存在していないことからも明らかだ。
「日本におけるタブレット端末市場はまださほど大きくありませんから、しばらくその動向を見守っている段階なのでしょう」(佐野氏)
また、au自体のビジネスモデルの転換も無視することができないのだという。
「auは今、契約の純増数を血眼(ちまなこ)になって追い求めるのではなく、つながりやすさなどの顧客満足度を上げ、ユーザー1人当たりの単価を増やすことで収益アップさせる方向へと舵(かじ)を取っているんです。純増数を稼ぐためにとにかく端末のアイテム数を増やそう、とは考えていないのかもしれません」(佐野氏)
とすると、このままauはiPadについても様子見を決め込むってこと?
「あくまで個人的な勘ですが、現行モデルのうちは、発売はない気がしますね」(佐野氏)
そして、また、まったく別の観点からの推理もある。iPadには3G+Wi−Fi版(3G版)とWi−Fi版があるのだが、この“2種類のiPad”の存在がネックになっているというのだ。アップルとiPadの販売契約を結べば、3G版とWi−Fi版の両方を取り扱わなければならない。しかし過去の販売実績から、Wi−Fi版の人気のほうが圧倒的に高いことがわかっている。
「不良在庫となることが目に見えている3G版まで仕入れるぐらいなら、いっそのこと最初からiPadを扱わないでおこうという判断なのでは」
こう語るのは、ジャーナリストの石川温(つつむ)氏だ。だぶついた3G版の末路は安値での叩き売りか、SBのように実質タダで提供するしかない。また、端末本体での儲(もう)けを期待せず、データ通信料で稼ごうにも、前述のようにタブレット市場はまだまだ小さく、高収益は期待できない。結局、キャリアにとってiPadとは、あまりうまみのない商品なのだ。
「それでもSBが販売しているのは、『アップルに強いSB』というイメージを維持したいからでしょう」(石川氏)
しかも、auはアップルと無理に販売契約など結ばなくても、すでに現時点でiPadを絡めたビジネスができている。
「アップルストアや量販店でWi−Fi版を買ったユーザーが、auの提供するWi−Fiルーターを使ってくれればいいんですよ。在庫リスクや販売コストとは無縁のまま、効率よくデータ通信料を稼げます」(石川氏)
つまり、冷静な損得勘定をした上で、iPad発売を見送っているというのだ。iPhone4S取り扱い契約獲得時の必死さに比べれば、今回のauにはかなりの温度差があるようで……。
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そう言うのは携帯電話ライターの佐野正弘氏だ。
「SBと同日発売できなかった時点ですでにタイミングを逸しているので、中途半端な時期に売り出したのではいかにもインパクトが弱い。夏モデル携帯端末の発売に合わせ、5月あたりから取り扱うのではという噂もありますが、それではSBより2ヵ月も遅れてしまうことになり、これも得策とは言い難いですね」(佐野氏)
もともとauは、タブレット端末に対してさほど積極的なキャリアではない。それは現在、個人向けのタブレット端末が同社のカタログ上に存在していないことからも明らかだ。
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また、au自体のビジネスモデルの転換も無視することができないのだという。
「auは今、契約の純増数を血眼(ちまなこ)になって追い求めるのではなく、つながりやすさなどの顧客満足度を上げ、ユーザー1人当たりの単価を増やすことで収益アップさせる方向へと舵(かじ)を取っているんです。純増数を稼ぐためにとにかく端末のアイテム数を増やそう、とは考えていないのかもしれません」(佐野氏)
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こう語るのは、ジャーナリストの石川温(つつむ)氏だ。だぶついた3G版の末路は安値での叩き売りか、SBのように実質タダで提供するしかない。また、端末本体での儲(もう)けを期待せず、データ通信料で稼ごうにも、前述のようにタブレット市場はまだまだ小さく、高収益は期待できない。結局、キャリアにとってiPadとは、あまりうまみのない商品なのだ。
「それでもSBが販売しているのは、『アップルに強いSB』というイメージを維持したいからでしょう」(石川氏)
しかも、auはアップルと無理に販売契約など結ばなくても、すでに現時点でiPadを絡めたビジネスができている。
「アップルストアや量販店でWi−Fi版を買ったユーザーが、auの提供するWi−Fiルーターを使ってくれればいいんですよ。在庫リスクや販売コストとは無縁のまま、効率よくデータ通信料を稼げます」(石川氏)
つまり、冷静な損得勘定をした上で、iPad発売を見送っているというのだ。iPhone4S取り扱い契約獲得時の必死さに比べれば、今回のauにはかなりの温度差があるようで……。
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