「ウィキペディアはネットの肥溜」 西和彦の過激批判の「真意」
「Wikipedia(ウィキペディア)はネットの肥溜」。こんな刺激的なタイトルのコラムを、元アスキー社長の西和彦さんがネットで公表し、話題になっている。西さんは3年前にもウィキペディアを厳しく批判したことがある。なぜいま、改めて「ウィキペディア批判」なのか。その真意を聞いた。
コラムは2009年10月6日、評論家の池田信夫さんが運営するオピニオンサイト「アゴラ」に掲載された。そこには、ウィキペディアの記述をめぐって論争したときの経緯やウィキペディアが抱える問題点が綴られている。
「ウィキペディアにはウソがたくさん入っている」
西さんは06年、自分の経歴について書かれたウィキペディアの記事が「独断と偏見の固まり」であると批判し、自らの手で記事の大部分を削除した。その後、記事を編集している他のユーザーと激しい論争が繰り広げられたが収拾がつかず、現在は記事が編集できないようにロックされたままとなっている。
「僕は昔2チャンネルのことを『便所の落書きみたいなもの』といったことがあるが、WIKIは『真実と嘘と無知と偏見と嫉妬と虚栄が混じったネットの肥溜みたいなもの』ではないだろうか」
西さんはコラムでこのように書き、ウィキペディアは「中身が間違っていて、浅い、薄い、軽すぎる」と厳しく批判した。3年間の沈黙を破って、再びウィキペディアを非難するのはなぜなのか。
「一つはアゴラでコラムを書くことになったので、その第1弾としてウィキペディアを取り上げることにしたのです。ウィキペディアの問題はネットの本質的なことにつながっていますから。もう一つは、今度11月に東大でウィキペディアのフォーラムがあるので、その前に問題提起をしておこうと思いました」
と説明する。それにしても「ネットの肥溜」という表現は刺激的すぎる。
「『ネットの肥溜』と書いたのは、ウィキペディアは養分としては面白いものがあるけれど、とても汚くて、ウソもたくさん入っているからです。別の言葉でいえば、ウィキペディアは『地引網』みたいなもの。なかには何が入っているかわからない。食べられる魚もあるかもしれないが、ゴミや死体も混じっているよ、ということです」
「ウィキペディアでは、真実ではなく力が勝つ」
ウィキペディアの記事については、これまでも信憑性を疑う声が投げかけられてきた。人文科学のリソースサイト「アリアドネ」は06年3月、研究者を対象に「ウィキペディア日本版をどう評価するか」というアンケートを実施したが、「基本的に正確」(26人)と答えた人よりも「問題が多い」(33人)という人のほうが多かった。
著名人の項目については、不確実な経歴情報が安易に記述される傾向があるといわれ、書かれた本人が「間違っている」と抗議することもたびたびだ。早大名誉教授の大槻義彦さんは09年3月、ブログに「ウィキペディアのでたらめ」と題した記事を掲載し、「私の発言を歪曲している」と批判した。元ライブドア社長の堀江貴文さんも同じころ、「ホリエモン」という愛称のきっかけなどが誤っていると、ブログ上で指摘している。
しかし、テレビで初めて見た芸能人のプロフィールや自分が知らない専門用語の意味を簡単に調べられるという点で、ウィキペディアが便利なツールであることは確かだ。西さんもそのことは認めたうえで、次のように語る。
「問題は、ウィキペディアがウソも混じっている信用できないメディアなのに、『ペディア(pedia)』という名前をつけて『百科事典』だと自称していることです。実際には信じていない人が多いと思うけれど、毎年新しいユーザーがインターネットに入ってくるのだから、『ウィキペディアはおかしい』ということを教育していかないといけない」
もう1点、西さんが問題視しているのは、ウィキペディアの編集体制だ。
「ウィキペディアは記事の内容が気に入らなければだれでも編集できる。そのため編集合戦が起きることがあるが、ウィキペディア日本版の編集世話人は独断と偏見で仕切っているので、真実ではなく力が勝ってしまう。結局、匿名の人間たちの『無限の力』によって、真実を書こうと思っている人は途中であきらめなければいけないわけです」
このようにウィキペディアに対しては辛辣な姿勢を貫く西さんだが、09年11月22日に東大で開催される会議「Wikimedia Conference Japan 2009」には注目している。これは、ウィキペディアに代表されるウィキメディア(ウィキを使って自由に編集できるオープンコンテンツ)に関する日本で初めての本格的な会議。その中のワークショップでは「ウィキペディア記事の信頼性評価」についても検討される予定だ。西さんは、
「このフォーラムをきっかけに、ウィキペディアをもっと良くしようという動きが出てくるのか、注目している」
と話している。
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