ミッシェル・ウィー=まずは第1ステージを確実に通過することが最大の目標だ(写真/田辺安啓=JJ)

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あのミッシェル・ウィーが、ついに米LPGAのツアー出場資格獲得を目指し、Qスクールを受験する。鳴り物入りでプロデビューしたウィーは、Qスクール受験という道をずっと否定してきたが、もうこれしかないというところまで追いつめられた形になった。



米LPGAのQスクールは、1次試験、2次試験の2段階で行われる。しかし、1次試験は時期をずらして2か所で行われ、1か所で不合格となった場合、次なる箇所での1次試験を敗者復活戦的に受けることもできるため、実質的には3段階構造だ。



今回、ウィーが挑戦するのは、1次試験の1か所目。カリフォルニア州のミッションヒルズCCで現地9月16日から19日の4日間、72ホールで競われる。第2ラウンド終了後、カットし、4ラウンド終了後のトップ30が12月3日から7日にフロリダ州のLPGAインターナショナルCCで開催される最終試験へ駒を進める。そして、前述のように、トップ30から漏れた場合は、9月30日から10月3日にフロリダ州内で行われる2か所目の1次試験を受けることもでき、ここでトップ30に入れば、最終試験に挑むことができる。



今日から始まる1次試験には日本からも大山志保、佐伯三貴、アマチュアの宮里美香など5名が挑戦。全164人の挑戦者のうち、アメリカ人は99名、韓国人は12名、挑戦者の国籍は19カ国に及ぶ。



それにしても、あのウィーがQスクールを受ける運びになることを彼女のプロ転向前やプロ転向時に想像していた人は世界中を探しても、おそらくわずかしかいなかっただろう。一流コーチのデビッド・レッドベターをコーチに付け、一流マネジメント会社のウイリアム・モリス・エージェンシーを付け、ソニーを始めとする大企業と総額10億円を超えるスポンサー契約を結んだあのとき、世界のゴルフ界は「大物スターの誕生」を確信していた。



それなのに、以後、ウィーの成績がみるみる下降していったのはなぜか。理由はいろいろ考えられる。まだ心が成熟していないティーンエイジャーに対して過度の期待をかけ、過度の対応を要求した結果、プレッシャーが彼女の精神面をむしばんでいったことは確かで、それはメディアや企業をはじめとする世間にも責任がある。女子ゴルフ界において、女性ならではの陰湿な攻撃があったことも否定できない。同時に、他選手に対する尊敬や配慮がウィー本人に足りなかったことも否定できず、それはウィー自身の問題、あるいは彼女を育てた両親の問題でもある。



プロ転向しておきながら、スタンフォード大学という難関校へ進み、プロゴルフと学業の両方を同時に求めた彼女の歩み方も疑問だ。人間は二兎を負って両方をモノにできるほど器用ではない。その「二兎」がどちらも一流と来れば、なおさらだ。



ウィーはプロ転向以前からQスクール受験を避け、スポンサー推薦で出場して稼ぐ賞金額だけでツアー出場資格を得ようと目論んでいたが、不調となった今はそれも無理な話となり、結局、Qスクール受験という道を選ばざるを得ない状況まで陥った。



あのビッグスターが、ここまで落ちた――そう表現する人もいるだろう。けれど、彼女はやっと当たり前のスタートラインについたのだと考えれば、彼女の未来はこれからだと言うこともできる。かつて、吹き荒れたウィー旋風のほうが実は幻で、これからがプロゴルファーとしての彼女の本当の現実の歩み。だから、ウィーは今でも、どん底まで落ちてはいない。



今、そして今後、求められることは、ウィーと彼女の周辺が現状を素直に認め、把握し、かつてのスター気分を捨てて、待ち受けるあらゆるモノゴトに一人のプロゴルファーとして対応していけるかどうかだ。拒否し続けてきたQスクールを一般の挑戦者たちに混じって受けようとウィーが決意したことは、着実に地道に歩んでいこうという彼女の意志表示であり、貴重な「はじめの一歩」なのだ。当面は好奇の視線にもさらされるだろうけれど、高いポテンシャルを秘めているウィーだからこそ、今をなんとか乗り越えてくれたらいいなと願うばかりだ。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)