楽天モバイルが料金プランを改定。主力のスーパーホーダイはどう代わったか?:週刊モバイル通信 石野純也

個人向けMVNOシェア1位を誇る楽天モバイルが、夏商戦に向け、料金プランを改定しました。スーパーホーダイは、5分間の通話定額と、データ容量がセットになったプラン。通信容量を使い切っても、速度制限が1Mbpsと緩いのも特徴です。昨年9月にサブブランド対抗として導入され、楽天モバイルの主力プランになっていました。楽天で楽天モバイル事業を率いる大尾嘉宏人氏によると、音声通話つきプランの約70%がスーパーホーダイを選択していたといいます。

▲選択率は、音声契約に限ると70%にのぼるという

この料金プランの割引を改定したというのが、今回の発表の中心的な内容です。元々楽天会員向けには、1年間1000円の割引がついていましたが、これを2年間500円に変更。長く、薄く割引がつくようにしたうえで、新たに契約期間に応じた「長期割」を導入しています。

長期割は、ユーザーが選んだ最低利用年数に応じて、割引額が変わる仕組みです。一般的なキャリアの"2年縛り"との違いはは、更新がなく、その期間を過ぎれば無料で解約できるところにあります。この長期割は1年契約だと0円(楽天会員向け割引のみ)、2年契約だと500円、3年契約だと1000円。楽天会員向け割引と合計すると、1年契約で500円、2年契約で1000円、3年契約で1500円の割引を受けられることになります。

▲楽天会員割引と長期割の2本立てで料金を割り引く仕組みを導入

ただし、長期割は2年間限定の割引サービスです。楽天側は「2年間ずっと」とうたっていますが、3年契約を選んだ場合、3年目は楽天会員向け割引も、長期割も切れてしまい、素の料金を支払う必要が発生します。正直なところ、「ずっと」という言葉から思い浮かべるイメージと、「2年限定」のそれが正反対で、最初は頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになりました。

「2年間、毎月途切れることなく」といった程度の「ずっと」だと考えると、一応の理解はできましたが、「ずっと」の語感が強いため、割引が永続するように思えてしまいます。割引が永続するように聞こえて紛らわしいため、契約時には注意が必要。キャリアの料金広告の紛らわしさは、先に開催された総務省の有識者会議でも議題にのぼっていたため、楽天側にももう少し配慮があっていいと感じました。

▲3年契約で「2年間ずっと」という表記には違和感も......

それはさておき、期間限定ではありますが、スーパーホーダイは、割引が手厚くなることで、より毎月の料金が安くなったといえます。これはサブブランドと比べてもそうで、2GBプランで1480円(3年契約時、2年間の料金)というのは、ワイモバイルやUQ mobileを光契約とセットで契約したり、家族と一緒に契約したときの料金と同水準です。楽天モバイルの場合、1人でも、光回線がなくてもいいため、より1480円を実現しやすいといえるでしょう。

▲同じ"1480円から"を打ち出すワイモバイルよりも、条件はシンプル

さらに、ワイモバイルやUQ mobileは2年目から2480円に料金が上ってしまうため、ここでさらに楽天モバイルとの差がつきます。ソフトバンクの回線をそのまま使うワイモバイルや、KDDIの関連会社であるUQ mobileには、ネットワークの品質が及ばない楽天モバイルですが、そのぶん、ある程度分かりやすい形で料金を下げてきた点は評価できるポイントといえます。

ただし、元々、スーパーホーダイは、契約年数に応じて端末代が割り引かれていました。2年契約だと1万円、3年契約だと2万円といった具合に、端末が安くなっていたのです。これによって、ハイエンド端末でもある程度安く、ミドルレンジ以下のモデルなら初期費用の負担が0円に近い形で契約できました。別の見方をすると、現行のスーパーホーダイと違って、割引を先にまとめて受け取れたともいえます。

▲元々スーパーホーダイには、契約年数に応じた端末割引がセットになっていた

この観点で、新旧プランを比較すると、旧スーパーホーダイは2年契約で1万円、3年契約で2万円の割引を受けられたのに対し、新スーパーホーダイは2年契約で1万2000円、3年契約で2万4000円と割引額がアップしていることが分かります。一方で、割引は24回もしくは36回に渡って適用されるため、ユーザー側からすると、割引が先延ばしになっていると見ることもできます。

割引額が増えたのはうれしい半面、端末代の負担が増してしまう格好になるため、契約に二の足を踏むことになりかねません。初期費用を軽減したいユーザーが、ミドルレンジモデルに流れるといった形で、端末の売れ筋傾向にも変化が出るかもしれません。

▲以前のスーパーホーダイなら4万9800円で買えたP20だが、新プランでは6万9800円に。ハイエンドモデルが買いづらくなってしまった

確かに上記で比較したように、ワイモバイルやUQ mobileより月額費用は抑えられますが、以前のスーパーホーダイとじっくり比べていくと、新規契約者を獲得するのが難しくなっているようにも見えました。初期費用の負担を抑えた方が、先々の割引を増やすより、"MNPの壁"を乗り越えさせやすいからです。

対サブブランドの観点で見てもそうで、ワイモバイルやUQ mobileも、MNOほどではないにせよ、端末割引も行っています。ここまで含めたトータルコストで見ると、楽天モバイルのメリットは薄くなってきます。そのため、より価格競争力のある端末を調達したり、得意の"三木谷割"を駆使するなど、今後は楽天モバイルならではの「プラスα」が必要になってくるような印象を受けました。

▲大胆な端末割引など、新たな施策が必要になりそう

また、楽天はMNOとして、2019年10月に新規参入をする予定です。最終的にはMVNOもMNOに取り込んでいく方針を掲げており、この状況で3年契約を結ぶのはなかなか悩ましいところ。現状ではMNO参入の影響は「まったく出ていない」(大尾嘉)といいますが、今後がどうなるかは未知数です。ユーザーがきちんと選択できるようにする意味でも、楽天にはもっとしっかりとロードマップを出してほしいと感じました。