近年、「職場うつ」が増えているという(写真:bee / PIXTA)

世の中には、実に多種多様な「健康書」が氾濫している。しかし医者によって言っていることも大きく違い、何を信じたらいいのかわからない。「人生100年」時代、本当に信頼できて、誰でもお金を掛けずに毎日できる簡単な健康習慣とは、いったいどのようなものなのか。
4月26日、東洋経済オンラインのメルマガでもおなじみのムーギー・キム氏の渾身の著作『最強の健康法―世界レベルの名医の本音を全部まとめてみた』(SBクリエイティブ)が、『ベスト・パフォーマンス編』と『病気にならない最先端科学編』の2冊セットで刊行された。本書は日本を代表する50名に上る名医・健康専門家による直接解説を、東大医学部で教鞭をとる中川恵一氏、順天堂大で教鞭をとる堀江重郎氏が二重三重にその正確性をチェックしたうえで制作されている。
東洋経済オンラインでは同書を元に、多くの名医たちが実践しているおカネの掛からない確かな健康法を紹介していく。第2回は、「職場うつ」の傾向と対策を解説する。

産業医として28社もの企業に関わる医療法人社団同友会産業保健部門の大室正志氏は、「近年、職場うつが激増しています」と話す。厚生労働省が集計したアンケートによると、発症した原因にはいくつか傾向があるという。

圧倒的に多い原因は「仕事量」

「まず圧倒的に多いのは『仕事量』です。仕事が多すぎて心身が休めないと、誰だってうつっぽくなりますよね。続いて職場の人間関係。これも非常に大きいです。一緒に働く他人は、自分でコントロールできない問題ですから。また、自分の適正と仕事内容のミスマッチも大きな原因です。こうした職場要因の他にも、家庭の要因、たとえば親の介護などが加わった複合的要因のケースなどもありますね」(大室氏)


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また、安定した大企業でずっと同じ仕事をしてきた人が、肩たたきにあったり、窓際に追いやられたりして発症したうつ病は、重症化しやすいという。「年をとってから仕事環境が変わると、他に選択肢がありません。そこで精神的に追い詰められてしまうのです」と大室氏は説明する。

ちなみに、うつ病の診断基準には「2週間以上、抑うつ状態が続いている」などチェックリストがあるが、実情はそれほど単純ではないという。うつ病ではないけれど、その周辺領域の「うつっぽい状態」には明確で排他的な診断はつけづらいという。

うつ状態になる原因は人それぞれ


「たとえば、救急車で緊急搬送されてきた人が『おなかが痛い』と言っているけれど、検査機器を調べてもわからない、というときにはとりあえず『発熱と腹痛』と診断書を書きます。同様に、うつになっていることは事実だけど、統合失調症の初期症状かもしれないし、双極性障害(旧称『躁うつ病』)かもしれないけれど、実態はよくわからない、というときは全部まとめて『うつ状態』とします」(大室氏)

こうしたうつ状態になる原因は人それぞれであり、中には「幸せな気分にさせるセロトニンが出にくい」といった体質的な要因を抱えているケースもあるという。


では、どう対策すればいいのだろうか。

本書に登場する長尾クリニックの長尾和宏院長によると、歩くだけでセロトニンが分泌されるため、実は歩くだけでうつ病対策になるという。

同じく本書に登場する新宿溝口クリニックの溝口徹院長によると、セロトニンなど脳内物質の原料として重要なビタミンBや鉄分を摂る、栄養面のアプローチで治す人もいるという。

うつ病は原因も深刻さも多様だが、大室氏が語るように仕事量・人間関係で無理をせず、他にも選択肢のある生き方、考え方を心がけたい。