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米国で、今年のホリデーシーズンに「ポーチ・パイレーツ (Porch Pirates)」の被害が昨年よりも増えているそうだ。米国では受取人が不在の際に、配達人が安全と判断したら荷物を玄関先に置いていく。そんな宅配荷物を盗んで歩くのがポーチ・パイレーツである。クリスマスプレゼントをAmazonなどから購入する人が増えているのだから、盗難が増えるのは当然の成り行きだ。

家の近所でも盗難被害が相次いでいて、男女カップルのポーチ・パイレーツが報告されている。物騒なことだから、近所の人とクラウド対応のワイヤレス・セキュリティカメラの導入について話すことが多い。配達された時に通知ですぐに気づけるし、盗難に遭っても映像が残っていたら再発送や返金を受けやすくなる。ただ、たとえばGoogleの「Nest Cam」シリーズは1台199ドル〜349ドル。しっかりと記録できるように屋内と屋外に数台設置するとなると導入コストが悩みどころ。近所にポーチ・パイレーツが現れても、即導入に踏み切れる価格ではない。だが、1台20ドル (約2300円)だったらどうだろう。米国でオンラインショップをよく利用する人なら迷わず購入するだろう。

米国で10月末に発売されたセキュリティカメラ「WyzeCam」が好調に売れている。Amazon.comで売り切れ状態がしばらく続いており、再入荷がいつになるか分からない状態だ (今年はクリスマス前までにゲットするのはすでに困難な模様)。開発・販売するのはWyze Labというスタートアップだ。

WyzeCamはmicroSDカードのほか、無料サービスで約14日分のアラート映像がクラウドに保存され、またモバイル機器を使ってライブストリーミング映像 (1080p)を確認できる。1/2.7" CMOSセンサーのカメラは、デジタル8倍、視野角110度。赤外線LED×2によるナイトビジョンの撮影可能距離は最大9メートル。ワイヤレスはWi-Fi (802.11 b/g/n、2.4GHz)だ。セキュリティカメラとして標準的なスペックである。だが、価格が安い。1台29.99ドル。発売期間の特別価格の今は、WyzeCam.comで1台19.99ドル、Amazon.comで25.98ドルで購入できる。

なぜ、そんな価格が可能なのかというと、開発・販売するWyze Labsのホームページで同社は次のように説明している。

「Amazonで働いていた時に知り合った創業メンバーが、Amazonのコアとなる原則をWyze Labsに持ち込んだ」

オンラインショップからの荷物が盗難に遭いやすい米国で、特にホリデーシーズンにはセキュリティカメラの高い需要が見込める。クラウド対応のホームデバイスは、これから長く成長し続けていく分野になるだろう。だから、利益がほとんど出ないような低価格に設定しても、市場に足場を築ければ、多売によって長期的な成功を見込める。短期的な利益を求めず、長期的な成長に投資するAmazonの戦略である。

WyzeCamのハードウエアは独自開発ではなく、中国のメーカーからライセンスした。ハードウエアに目立った特徴はないが、ローエンドのスペックではない。突出したスペックは求めず、既存の製品と競争するのに必要十分な機能・性能を備え、安く安定して供給できるハードウエアを選択した。1台29.99ドルでも、NestやNetgearの製品と比べて見劣りするような製品ではない。WyzeCamの独自性は人々が必要としている機能を使いやすく提供するソフトウエアにあり、そこに開発力を注ぎ込んだ。

安いとはいえ、Wyze Labsという無名メーカーからの初めての製品である。1台29.99ドルという値札を見た消費者は「安い!」と思うだろう。同時に「安かろう、悪かろう」と危ぶみ、敬遠するのが自然な反応だ。そこで製品の立ち上げにAmazon Lauchpadを利用し、また販売をAmazonと自社サイトに絞り込んだ。できることが限られるスタートアップにとって、Amazonの流通力は大きな助けになる。またAmazonにおけるレビューやランキングを信じる消費者は多く、そうしたAmazonでの活動に集中することで効率的に信用を高められ、WyzeCamブランドを少しずつ浸透させていける。

「Amazonを利用しているだけ」と思う人もいるだろう。でも、Amazonの傘の下で活動したら、どのような製品でも成功できるわけではない。Amazonでは、安くても「中国の模造品 (Chinese knockoff)」と酷評されている製品をたくさん見つけられる。ただ、安いだけで低価格は武器にならない。

著名ブランドによる高価な製品が市場を占め、それが消費者のニーズに応えていない製品。普及帯以下に価格を下げられて、より良いソリューションを提供できる製品分野を選ぶことが肝要だ。そうでなければ、全く新しい製品分野を開拓するのがスタートアップにとって成功のチャンスが大きいが、前者の方が「低価格」というインパクトのあるマーケティングを展開できる。WyzeCamのハードウエアは”中国の模造品”と呼ばれてもおかしくない。価格も中国の模造品ほど安い。しかし、米Amazonにおいて、WyzeCamは価格を含めて独自性のあるソリューションとして受け入れられている。