ウィルキンソンは炭酸水の"直飲み"を定着させようとしている(記者撮影)

アサヒ飲料が販売する炭酸水「ウィルキンソン」ブランドが絶好調だ。2007年に161万箱にすぎなかった販売数量は、8年連続で過去最高を更新。毎年ほぼ2ケタ成長を続け、2016年に1630万箱と10倍超に拡大している。

今年も俳優のディーン・フジオカ氏を起用したテレビCMを積極的に放映しているほか、アサヒビールから缶チューハイの「ウィルキンソン・ハード」を発売するなど、強化策を進めている。

そのかいもあって、今上期(1〜6月)の販売数量は前年同期比32%増。同社が主力と位置づける三ツ矢サイダー、ワンダ、十六茶といったブランドが1%増程度にとどまったのとは対照的だ。

ハイボールブームがきっかけ

躍進のきっかけは2009〜2010年に起きたハイボールブームだ。それまでのウィルキンソンは瓶のみの販売。しかもカクテルの割り材用炭酸水としてバーやホテル向けなど業務用が中心だった。

ブームで、ハイボールを作る際にウイスキーの割り材として使う炭酸水の需要がまず伸びた。ウィルキンソンの特長は強炭酸。「バーテンダーも一度ハイボールなどの作り方をウィルキンソンで覚えてしまうと、なかなかブランドを変えてもらえない」(競合メーカー)。

加えて、家でハイボールを作った人は、余った炭酸水をそのまま飲んでいるケースが多いことが当時のアサヒ飲料の調査でわかった。

欧米と違い、日本では炭酸水を直接飲むのは一般的ではなかったが、「飲んでみるとそのままでも意外にいける、という声が顕在化してきた」(アサヒ飲料・マーケティング本部の水上典彦氏)。

そこでアサヒ飲料は、それまで瓶入りのみだったウィルキンソンに、2011年にPETボトル入りを追加。「そのまま飲む、“直飲み”という新しい飲み方を提案したことで、急激に売り上げが伸びた」(水上氏)。

もう1つ、数量拡大の要因には健康志向がある。国内の飲料市場全体は2016年に約5兆円(富士経済調べ。以下同)。そのうち有糖も含む炭酸飲料の市場規模は約5560億円で1割ほど。2012年の5376億円からほぼ横ばいが続いている。

一方で、糖類を含まないミネラルウォーターや緑茶は市場そのものが拡大傾向にある。無糖の炭酸飲料も、市場としては360億円と決して大きくはないが、2012年の179億円から2倍以上に増えた。その中でもウィルキンソンは50%超と圧倒的なシェアを誇っている。

実は日本発祥のウィルキンソン

今年4月から放映しているテレビCMではディーン・フジオカ氏を起用。40代男性をターゲットとしている(写真:アサヒ飲料)

急成長するウィルキンソンだが、実はそのブランドの歴史は古く、しかも日本発祥だ。

アサヒビールの社史によれば、1889年ごろ、英国人のジョン・クリフォード・ウィルキンソン氏が兵庫県の山中で炭酸水鉱泉を発見。ウィルキンソン社を設立し、鉱泉を瓶詰めして「仁王印ウォーター」として販売を開始した。1904年には製品名を「ウヰルキンソン タンサン」に変更している。

その後、第2次世界大戦中に同社は「外国人の財産」として政府の管理下に置かれた。その際に政府はアサヒビールの前身となる大日本麦酒に経営を委託していた。こうしたつながりもあり、1951年にウィルキンソン社が製造を、大日本麦酒から分割された朝日麦酒が販売を行う体制となる。

1970年代後半になると製造と販売が2社に分かれていることのデメリットが顕在化。数年に及ぶ協議の末、1983年には朝日麦酒が商標権を取得し、ウヰルキンソンの製造・販売を一元化して行うことになった。そして1989年、表記を「ウヰルキンソン」から「ウィルキンソン」に変更し、現在に至っている。

ウィルキンソンについて水上氏は「日本のブランドだということを知らない人がほとんど。意図的に日本ブランドだということを全面には出さないようにしている」と話す。

10年以上前までは業務用として主にバーなどで消費され、知る人ぞ知るブランドだった。当時のイメージを崩さずブランド価値を高めることで、消費者のリピート率を高めたい考えだ。

とはいえ、炭酸水を日常的に飲む人はまだ少数派。アサヒ飲料の推定では、消費者の6割ほどが日常的に無糖の炭酸水を飲まないという。そういった非飲用層に向けて、2016年にコーラ味の「ウィルキンソン タンサン ドライコーラ」を発売。日常的な飲用への足掛かりと位置づけた。

無糖炭酸水は、リピート率は高いものの新規で飲み始める人が少ない。アサヒ飲料は夏場の暑い日に屋外でサンプリングなどを行ってはいるものの、初めて飲む消費者の中には苦手な人もまだ多いという。

今の伸びを継続させていけるかどうかは、炭酸水を日常的に飲む人をどれだけ開拓していけるかがカギになる。