野村周平、同世代へのライバル意識はなし あるのは「負けてない」という自信!
この日の撮影は、まさに一発勝負。都心の交差点で信号が切り替わるわずかな時間の中で、野村周平はこの状況を楽しむかのように軽やかな足取りでレンズの前に立ち、いたずらっぽい笑みを浮かべた。映画『ライチ☆光クラブ』では、この笑顔を封印し、独特のダークな世界観に身を投じている。個性派がそろう同世代の中でも、際立った活躍を見せる22歳。自らが置かれた状況をどう受け止めているのか? 撮影同様に飄々とした様子で“いま”を語ってくれた。

撮影/平岩亨 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

ここは監獄…!? ハードな撮影合宿を経て



――今回の『ライチ☆光クラブ』では主演として最初に名前がクレジットされており、演じたタミヤも「光クラブ」の創設者でリーダー。ただ、グイグイとメンバーや物語を引っ張っていくリーダー像とは違いますね。

リーダーであり主役ではあるんですが、タミヤは至って普通の少年です。僕が役を作り上げていくというよりも、タミヤの周りが非常に濃いメンバーばかりで、彼らが個性的であればあるほどタミヤの存在が際立つので、“普通”を突き通すようにしました。




――大人になりたくない少年たちが秘密結社を作り、自分たちだけの世界を築いていく。この物語の世界観に対してはどんな印象を持たれましたか?

最初に原作のマンガを読んだんですが、あまり見ないタイプの作品ですよね。絵のタッチもリアルなんですけど、じゃあ理解できたかというと…難しかったですね(苦笑)。なぜ彼らが大人にならないと宣言し、あのような行動に出るのか? 共感はできず、僕とは無縁の世界だな…と感じました。




――そのように「共感できない」と感じる作品に対し、俳優としてどのようにアプローチしていくんですか?

脚本を読んで、あとは現場の空気を感じつつ、直感で演じています。今回、内藤(瑛亮)監督とは2度目ということで、わかり合っている部分も多かったですし。

――共感はできないながらも、現場に入って…

現場に立つと、その世界の中で生きられるというか…。現場で話をしていても「よーい、スタート!」と声がかかると、スッと作品の世界に入り込んで、自然とつかめていくんです。今回は特に実物大のセットが素晴らしかったので、入りやすかったですね。

――「世界に入り込む」ということは、演じている最中は完全に役柄の意識で生きている感じ…? それとも、どこかで冷静に自分と相手を見つめているんでしょうか?

感覚としては“無”ですね。役に入り込み過ぎてしまうと、役柄を超えてひとり歩きしてしまうんですよね。相手の言葉を落ち着いて受け止め、合わせていくことも必要ですし、そこはカチカチに固め過ぎず、臨機応変に現場にいるようにしています。そういう意味でバランスが大切ですね。