リオ五輪出場が決まったら、次はオーバーエイジ(OA)である。メディアによる推理は、当分の間続きそうだ。

 五輪の登録メンバーは18人だ。そのうち2人は、GKに充てなければならない。残るは16人だ。OAを3人使うと、23歳以下のフィールドプレーヤーは13人になる。

 わずか13人である! OAが起用されないとしても、16人しか選ばれない。選ぶことはできない。

 23歳以下のサバイバルのほうが、よほど面白いではないか。
 
 最終予選から本大会までの数か月間で、メンバーは意外なほど入れ替わる。
 4年目のチームを振り返ってみる。

 最終予選のラストゲームに先発したのは、以下の11人だった(カッコ内は途中出場)。

GK権田修一、DF酒井宏樹、比嘉祐介、濱田水輝、鈴木大輔、MF扇原貴宏(山村和也)、山口蛍、東慶悟、清武弘嗣(永井謙佑)、原口元気、FW大津祐樹(齋藤学)

 出場のなかった控え選手は、GK安藤駿介、DF高橋祥平、大岩一貴、FW工藤壮人の4人である。

 国立競技場で歓喜に浸った18人は、どのような立場で五輪を迎えたのか。ロンドンへ辿り着いたのは、12人だった。

 海外クラブに所属しているため、最終予選に招集されなかったDF酒井高徳(当時シュツットガルト)とFW宇佐美貴史(当時ホッフェンハイム)が、関塚隆監督とともにロンドンへ向かった。国内クラブ所属のDF村松大輔、FW杉本健勇も、メンバーに食い込んだ。杉本はセレッソから東京ヴェルディへ期限付き移籍し、ギリギリで18人に滑り込んだ。

 リオ五輪最終予選決勝で同点ヘッドを突き刺した矢島慎也は、昨年のJ2で自信をつかんでいた。期限付き移籍先のファジアーノ岡山でフル稼働し、8ゴールをマークした。イラク戦で決勝弾をマークした原川力も、京都サンガでコンスタントにゲームに絡んだ。最終ラインの左右両サイドでプレーした亀川諒史も、昨年は期限付き移籍先のアビスパ福岡でポジションをつかんだ。

「J2で試合に出ている選手たちは、走り切れる選手に代わっているはず」と話していた手倉森監督は、実戦経験を積むことによる成長を改めて実感したはずだ。

 今季もリオ五輪世代の多くが、所属クラブを変えた。GK櫛引政敏は鹿島アントラーズに、キャプテンの遠藤航は浦和レッズへ新天地を求めた。原川は川崎フロンターレで、定位置獲得を目ざす。

 一方で、クラブを変えずに現状打破へ挑む選手もいる。最終予選で活躍した左サイドバックの山中亮輔、大会MVPに輝いた中島翔哉、FW鈴木武蔵らは、昨年のJ1(またはJ2)で周囲を納得させる結果を残していない。チーム結成当初から招集されてきた彼らは、周囲とのコミュニケーションやコンビネーションに秀でる。それがチーム内での存在価値を高めてきたが、これからは評価基準も変わってくるだろう。

「最終予選を勝ち抜いたら、所属クラブでレギュラーになる選手が増えると思う。18人に絞るのが難しいだろうし、それぐらいじゃないとメダルなんて取れない」

 手倉森監督はこう話す。リオ五輪へのサバイバルは横一線だ。誰ひとり何も約束されていない、健全で意志ある競争が繰り広げられていく。
これは、面白い。