◀初めから読む 母子の部屋は、一階にあるその角部屋である|うさぎの耳〈第一話〉返事ができない。ただ、相手の目をじっと見ていた。日に焼けた皮膚に深く皺の寄った顔の中で、優しい馬の目と、どこか似ていた。そんな嘘をつかせて、申し訳ないと感じた。「あの、会うまで帰らないと、夫に伝えてもらえますか?」馬舎の前では、先ほどの眼鏡の女性と、その横に長い黒髪を結んだ女性が、心配そうにこちらを見ていた。も