日本人は実用英語に弱い(写真はイメージです)

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 今回の罵詈雑言は日本の英語教育について、です。

 ワタクシは実は大学学部時代に交換留学でアメリカに行くまでは、日本だけで教育を受けた、いわゆる「準ジャパ」という人間です。外資関係者、海外在住日本人、留学経験者など外国と接触がある人々の間では、英語を使う日本人を「帰国子女」「準ジャパ」に分けて話すことがあります。「準ジャパ」とは、大学入学以前に親の仕事などで海外に住んだことがなかったり、インター(インターナショナルスクール)には通っていなかった人間のことを指します。

「帰国子女」(&インターに通っていた人)と「準ジャパ」の間には、英語力に関して、深くて広い溝があります。その理由は、「準ジャパ」が受けて来た英語教育というのは、目的が達成されないバカ科目だからであります。

 ワタクシの親は海外との接触があるわけではなく、家族も親戚も英語は全然できません。しかし、「エービーシーはわかるから、俺は英語がわかる、いいか、この缶コーヒーにはボスと書いてある!」とドヤ顔で語る親戚がいるのです。

英語圏で「これはペンですか?」と言う人間はいない

 実家も首都圏近郊ではありますが、田んぼとクソみたいな工場が広がっており、人口の8割はヤンキー、地元で最もカッコいいと言われていた男子はリーゼントにボンタンで高校中退、車はシャコタンで後ろの窓にはYAZAWAのステッカー、10代で結婚妊娠、家族は借金つくって夜逃げ、貧乏な同級生が住む貸家に犬のウンコを投げて逃げてくるのが娯楽、というナマコの様なところです。

 そういう街では当然、英語などできる人間はいないのですが、「これはYAZAWAと書いてある。俺は頭がいい」と威張ってしまう。そういうところです。

 さて、そういうDQN集積地でワタクシが受けて来た英語教育というのは、公立学校のいわゆる一般的な英語教育なわけです。「これはペンです」「はいそうですか」「タイタニックが沈んでいます」「そうですかよかったですね」公立の学校や受験英語ではそういうのを延々と繰り返して覚えたり読んだりするわけですが、英語圏では日常生活でも仕事でも「これはペンですか」と聞く人間は基地外扱いされて終了です。

 ワタクシは20歳過ぎて英語圏に留学したり、仕事したりしました。そこでは日本で習った「タイタニックが沈んでいます」は全然役に立ちませんでした。

「今日は家に手紙がきました。KKKという団体からで、外国人留学生は帰れと書いてありました。この団体は留学生と交流したいのでしょうか? 私はこういう団体は日本で聞いたことないのでとても興味があります」

「私はあなたに先月アパートの敷金を払いました。これが領収書と小切手の写しです。でもあなたはそれをもらっていないといっています。しかもうちのアパートのトイレは故障していて昨夜からウンコが溢れています。修理代はアナタが払うと言っていたはずですが、今日になりそれは嫌だといっています。それはなぜなのか説明してくれないと、私は今日もウンコまみれで寝るのですがどうしたらいいですか」

「アナタの会社は1年365日サーバーの監視をやってくれるといいました。それはここに書いてあります。でもアナタの会社のエンジニアは毎日午後3時に家に帰ってしまいます。その理由はサーフィンをやりに行くからです。先週にはアナタの会社が監視しているはずのサーバーから情報が盗まれて、その結果、私の会社のお金は銀行から全部なくなってしまいました。しかも、アナタの会社のエンジニアに電話した所、サーバーは私の会社が知らないうちに砂漠地帯に移動したことがわかりました。その理由は砂漠地帯だと家賃が安いからだそうです。彼はお気に入りのコーヒーカップをサーバーの上において仕事しているそうです。そして、アナタの会社はとてもフレンドリーなので、友達や家族がサーバーを置いてある部屋で寝泊まりしたり、鍋をやっているそうです。あなたは契約書を書いたのは半年前に会社を辞めたジョンさんで、引き継ぎがなく、契約書は引っ越しの時になくしたので監視の時間の件は知らないといっていますが、私はアナタの会社と電話会議でこの件についてとても話したいです」

「ジャッシュさんへ。大変残念なお知らせですが、私達はアナタに対して会社を去ることをお願いすることを決定しました。それは法務部、監査部、人事部、情報システム部の調査による結果に沿ったものであり、人事委員会が決めたことです。アナタはクリスマスパーティーの後に、会社のビルの中にある警備員室で同僚のナターシャさんと性行為に及んでいました。その行為は監視カメラに記録され、その動画は、会社の何者かにより会社のイントラネットに掲載され、約500名の社員が閲覧しました。アナタはそのことに憤慨し、犯人であると思われたデビッドさんをオフィスで殴打し、デビッドさんは全治2か月の重傷を負いました。しかし、アナタはこの件に関して、心理的な衝撃を受けたため、鬱病とパニック障害を発祥したといい、傷病休暇を取得して休んでいます。しかし先日アナタの同僚のネイトさんは、アナタがバハマでクルーズを楽しんでいることをFacebookを通して発見しました。人事委員会はアナタの行いは詐病だと断定し、会社を去ってもらう決定をしました」

ネトウヨこそ実用英語を学ぶべし!

 必要だったのは、こういうことを書いたり読んだり話したりすることです。「タイタニックが沈んでいます」「この穴に当てはまる単語はなんですか。ここから選びなさい」では、トイレから溢れるウンコは解決されないし、砂漠に移動されてしまったサーバーの暴走を止めることは不可能なのです。「タイタニックが沈んでいます」を繰り返しやらされたために、納期をぶっちぎる会社の取引先に文句を言えず、学校の英語教師に犬のウンコを投げたくなった人は一体何人いるでしょうか。

 そして、ワタクシはこのクソの様な日本の英語教育に関して、さらに怒っていることがあります。それは、ネトウヨは実用英語が全然うまくならないがために、世界進出していないことです。皆さんは常日頃、外国人や隣国に対する文句を発信しているわけですが、なぜかほとんど日本語で、敵対視している人々には全然とリーチしておらず、なぜか国内プロレス状態になってしまっており、ワタクシは歯がゆく思っているのです。

 ところでワタクシは実は親切なので、このほど『添削!日本人英語』(朝日出版社)という本を書きました。この本には、

仕事をしない海外取引先へ訴訟を示唆するメールゴミを回収しない市役所に文句をいう手紙部下を褒めるメール友達に借金を申し込むメール課題をこなさない学生を叱責するメール自家用戦車を持っている友達をミリフェスに誘うメール貴族が主催するパーティーの招待状の書き方

 などの実例を、そのまま使える例文とともに紹介してございます。全然仕事しない海外の取引先や、隣国に文句を言いたい方はご活用下さい。

著者プロフィール

コンサルタント兼著述家

May_Roma

神奈川県生まれ。コンサルタント兼著述家。公認システム監査人(CISA) 。米国大学院で情報管理学修士、国際関係論修士取得後、ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経てロンドン在住。日米伊英在住経験。ツイッター@May_Romaでの舌鋒鋭いつぶやきにファン多数。著作に『ノマドと社畜』(朝日出版社)、『日本が世界一貧しい国である件について』(祥伝社)など。最新刊『添削! 日本人英語 ―世界で通用する英文スタイルへ』(朝日出版社)好評発売中!

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