前田、黒田だけじゃない…投手王国・広島カープ“今季優勝”の絶対条件
黒田博樹の“男気”復帰でチーム内に活気が芽生えた広島カープ。前田健太との“両エース”が揃い、優勝の期待は膨らむばかりだが、前田は今オフにもポスティング移籍すると言われている。つまり、前田と黒田が居並ぶのは今季だけかもしれず、最大にして唯一のチャンス。昨年8勝15敗とカモにされたDeNAの中畑清監督も「一番警戒している」と語っている。
しかし、今季のカープは昨年9勝のバリントンと25セーブのミコライオの両助っ人が退団。昨年に比べ投手力は落ちている、とも考えられる。
かつては北別府、川口和久、大野豊、佐々岡などの先輩投手が王国を築いた。その伝統は今も続いており、投手が試合を作り、接戦をものにしての優勝は絶対条件だ。そこで、カープ優勝に欠かせない「ピッチャーの条件」を挙げてみたい。
「5人目の先発」が出てくるか黒田、前田(昨年11勝)、野村祐輔(7勝)、大瀬良大地(10勝)と先発4本柱が揃った今季。4人で何勝できるかが優勝を左右する。
「優勝ラインを80勝とした場合、黒田と前田で30勝、野村と大瀬良で20勝が最低条件。足りない30勝を誰が埋めるか。大きなポイントです」(スポーツ紙記者)
バリントンを除く投手の合計勝ち星は37勝と数的には十分だが、同じく9勝の中田廉は肩の違和感で出遅れており、残る投手の合計は28勝となる。もちろん全投手が揃って昨年以上の成績を挙げるとは思えない。
「昨年の先発陣は九里亜蓮(2勝5敗)、福井優也(4勝5敗)、篠田純平(3勝4敗)。勝ち越したのは途中入団のヒース(3勝0敗)と戸田隆矢(4勝2敗)でした。ドラフト組は計算できません。その点、新外国人のジョンソンは唯一の左腕ですし、2ケタの期待がかかります。昨年未勝利の今井啓介も含め、開幕5試合目の4月1日、DeNA戦が注目です」(前出・記者)
カープ優勝年をみると、1975年=池谷公二郎18勝、79年=北別府学17勝、80年=山根和夫14勝、84年=小林誠二11勝、86年=金石昭人12勝、91年=佐々岡真司17勝と、いずれも前年を上回る、あるいは期待以上の勝ち星を挙げた若手投手が彗星のごとく登場している。優勝には5人目の先発が不可欠だ。
「勝利の方程式」を築けるか昨年カープのチーム総セーブ29はセ・リーグ最低(巨人は41)で、このうち25セーブはミコライオによるもの。加えて中田に不安となると、抑え崩壊の可能性も十分にある。
「先発が7回とすると8・9回で2人必要だよね。永川の抑えには不安もあり、CSで活躍したヒースを抑えにするか。いすれにしろ、絶対的な存在が出ないと厳しい」とは評論家の愛甲猛氏。ナックルカーブを武器とするヒースはミコライオ級とも言われ、彼の活躍で抑えは埋まる。
セットアッパーは一岡(昨年16H)・永川(15H)・中崎(10H)・戸田(6H)と十分揃っているが、一岡の離脱は大きく響いた。加えて今村猛の復調も絶対条件だ。
CS本拠地開催を0.5ゲーム差で逃した昨年、ラスト10試合は5勝5敗。勝負どころでリリーフ陣が踏ん張れなかった。輝かしき栄光に江夏豊や津田恒美の存在があった通り、勝利の方程式を築くことも絶対的条件だ。
カギとなる「カード別ローテ」今季も巨大な壁となりそうな巨人(昨年10勝13敗)、阪神(10勝14敗)。この両チームに対する先発ローテもカギとなりそうだ。
エース前田は巨人戦に7試合先発、1勝4敗、防御率3.12。通算でも9勝13敗と負け越している。対して黒田は通算20勝17敗。渡米前の2年は7勝2敗とキラーぶりを発揮。97年の初登板・巨人戦で初先発・初完投・初勝利を挙げてもいる。
巨人3連戦に前田と黒田をともに先発させるのはリスクが大きい。開幕直後はともかく、中盤の巨人戦は黒田の初戦登板で勢いをつけたい。
巨人戦に投げさせたいのが、黒田同様、巨人戦が初先発初勝利だった福井だ。入団後4年で14勝20敗。2年目以降停滞中だが、巨人戦防御率は年度別に3.18・1.50・2.25・3.60。他チームと比べて突出した好成績(ほかが悪すぎるのだが……)だ。
巨人戦は前田を温存し、黒田・福井+α。2カードで3勝3敗なら御の字か。
前田は阪神戦通算13勝8敗(昨年1勝1敗)と相性がいい。巨人戦2勝2敗、阪神戦3勝3敗と好勝負した大瀬良につなぎたい。
昨年16勝8敗とカモにしたヤクルト戦は3勝(0敗)の大瀬良中心か。
現時点で不調の戸田だが中日戦、DeNA戦を2勝0敗。両チームに対してはヒース・野村も1勝ずつマーク。篠田純平も試合を作った。この2カードは4人で回したい。
おもしろいことに、投手王国カープを優勝させた監督はいずれも野手(古葉竹識・山本浩二・阿南準郎)であり、近年も投手出身監督は見当たらない。
「能力がありそう」(愛甲氏)な緒方新監督。投手起用はみどころだ。
(取材・文/後藤豊 Photo by Sakuraikubuki via Wikimedia Commons)