マーリンズ・イチロー【写真:田口有史】

番記者が日本から来たイチローファンを特集「母国ではジョーダンのような存在」

 マーリンズに加入したイチロー外野手の熱狂的なファン「イチローマニア」の存在が、スプリングキャンプで大きな話題になっている。MLB公式サイトのマーリンズ番記者を務めるジョー・フリサオ氏が「イチローに会うために日本からジュピターへ」と特集している。

 フリサオ記者は、マーリンズのキャンプ地であるフロリダ州ジュピターに、ある日本人が登場したことを紹介している。

「男性の名前はカツ・スズキ(親戚などではない)。人づてに聞いたところによると、日本の英雄イチローに会うために日本からジュピターに旅行してきた。カツは彼のアイドルからサインをもらうために待っていた。そして、サインをもらうと翌日、日本に旅立った」

 キャンプ地のロジャー・ディーン・スタジアムにいた2人の人間からスズキさんについての証言を得たというフリサオ記者は「もっと早く知っていればと後悔している。40代前半の男にインタビューすることができたのに」と無念の気持ちを表している。

 メジャー15年目を迎え、MLB通算3000本安打の金字塔に156本と迫るイチロー・スズキは世界的な知名度を誇る。特集では「イチロー・マニアの存在は世界的に珍しい存在ではない」とした上で「41歳でオールスターに10度選出された男は、単なるベースボール界のスーパースター以上の存在だ。彼は伝説だ。彼の母国ではマイケル・ジョーダンのような存在なのだ」とも分析している。

このストーリーは「伝説と呼ぶべきか。単なる神話なのか」

 そして、「カツ・スズキの物語が何よりの証拠だ」と記したフリサオ記者は直接取材できなかった“もう1人のスズキ”の痕跡を辿ったという。

 カツさんは1日にジェンセン・ビーチ・マラソンに参加。翌日、イチローがフロリダ国際大学との練習試合に出ないと知りながらも、ジュピターまで片道48キロの旅に出たという。フェンス越しにイチローを待つマーリンズのファンに、どれだけイチローのことをリスペクトしているか、いかにイチローと同じ名字を共有することを誇りに思っているのか、を語ったとされている。

 そして、カツさんがサインをもらうまでの過程も詳しく記されている。

 イチローは練習を終えると車に向かい、10人程度のファンにサインするために足を止めたが、カツさんは辛抱強く離れた場所で待っていたという。イチローも日本人ファンの存在に気づき、サインと記念写真に応じた。そして、カツさんはフロリダ国際大戦を途中まで見てから帰途についたようだ。40代前半というイチローと同世代のカツさんの紳士的な所作や、流暢な英語を操っていたことにも触れられている。

「伝説と呼ぶべきか。単なる神話なのか。いずれにしても、このストーリーはイチロー・スズキの世界的なインパクトを明らかにするものである」

 フリサオ記者はこう記している。現地メディアは、マーリンズ球団史上初の日本人選手が想像を超えた存在であることを改めて痛感しているようだ。