日本のリニア開発は1962(昭和37)年にスタート。写真は1977(昭和52)年に製造され、当時世界一の517km/hを記録したML500。

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中国に存在する、同国の高速鉄道が世界へ進出するにあたって日本の「超電導リニア」が大きな脅威になるという考え。そこには「粘着式鉄道」の限界と中国の野望が見えてきます。

速度でも安全性でも勝てない中国

 磁力を用い、500km/h以上で浮上走行する日本の「超電導リニアモーターカー」について、中国が「高速鉄道」の世界市場で戦って行くにあたり大きな脅威になると、同国のメディア上海商報が伝えました。

 中国高速鉄道は21世紀に入ってから、日本の「新幹線」やドイツの「ICE」といった高速鉄道先進国の技術を導入したことにより発展。2011年には「高速鉄道技術を独自開発」したとして日本やヨーロッパ、アメリカなどで特許取得の動きを見せるなど、世界市場への進出を図っています。

 また中国にはそうした鉄のレールと車輪で走る「粘着式」の高速鉄道ほか、磁気浮上式リニアモーターカーの「上海トランスラピッド」も存在。最高速度は430km/hで、営業運転速度が世界一速い鉄道になっています。

 しかし中国高速鉄道は、2011年7月に死者40人を出す大事故を発生させるなど安全性が疑問視されており、かつて350km/hだった最高速度を現在は300km/hなどに落として営業運転を行っています。

 また2002年に開業した「上海トランスラピッド」はドイツの技術を導入したもので、中国においてその後、特段の進展はありません。また技術を提供したドイツは、2011年に開発を中止してしまいました。

 つまり中国の粘着式高速鉄道は現在のところ、安全性などの関係で300km/h程度と日本の超電導リニアに比べ圧倒的に遅く、リニア「トランスラピッド」はその後の発展が不透明、という状況です。

 よって世界の高速鉄道市場において日本の「超電導リニア」は中国の脅威であり、そこで中国が戦うには技術を向上させ、スピードアップの必要があるというわけです。

 しかしはたしてそれが、簡単にできるものなのでしょうか。

中国が日本のリニアを狙う十分な理由

 鉄のレールと車輪で走行する粘着式の鉄道では、2007年にフランスのTGVが574.8km/hという記録を出していますが、これはあくまで特殊条件下におけるテスト走行です。基本的にこうした粘着式の鉄道は速度が高くなるにつれレールと車輪のあいだに作用する摩擦力が低下し、加速が難しくなります。

 だからこそ日本は、摩擦力に頼らず高速運転できる磁気浮上式の「超電導リニア」を開発しました。つまり粘着式の鉄道で中国が速度向上を図っても、大きなブレイクスルーがない限り、速度でリニアに勝てる可能性は低いのです。磁気浮上式の「トランスラピッド」についても、先述の通り先行きは不透明です。

 そのため中国は、日本の「超電導リニア」技術導入を試みる可能性があります。

 21世紀初め、中国が粘着式の高速鉄道を走らせるにあたって、日本から東北新幹線「はやて」などに使われていたE2系新幹線電車が中国に供与され、2007年より走り出しました。しかし中国はその後、高速鉄道技術を国産化したと主張。世界市場へ展開しようとしています。「超電導リニア」についても、同じような筋書きを考える可能性がありえます。

 しかし「超電導リニア」開発に深く関わるJR東海は、新幹線技術は国内メーカーと国鉄、JRの技術陣による「汗と涙の結晶」とし、中国への新幹線技術供与については「国を売るようなものだ」と反対していました。

 またJR東海の葛西会長は2014年4月、中国に「超電導リニア」を販売することは「技術を投げ売りするようなものだ」という考えを示しています。しかし台湾へ輸出することについては、「ビジネスとして成立すると信じられる」と可能性を示しました。JR東海は技術流出を警戒し、取引先における中国人社員の存在に神経を尖らせているとの報道も2011年に行われています。

 世界で20兆円規模とも言われる高速鉄道市場。そこで日本と中国が戦うことになるのは疑いのないところでしょう。また「超電導リニア」の技術は空母から航空機を発艦させるカタパルトなどへ転用できる可能性もささやかれているだけに、その意味でも「超電導リニア」の扱いには十分な慎重さが必要だと思われます。