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●Windows 9 リーク情報の真偽を探る先週は「Worldwide Partner Conference 2014(WPC2014)」の開催や「Kinect for Windows v2センサー」オープンベータ版の提供開始など、話題に事欠かないMicrosoftだが、やはり注目はスクリーンショットが流出した次期Windowsの存在だろう。今回はスクリーンショットの真偽に加え、Microsoft Researchが披露した「ADAM」についてレポートする。

○Windows 9 リーク情報の真偽を探る

Windows 8.1 Update 2 (以下、未発表製品はすべて仮称)、もしくは開発コード名「Threshold」ことWindows 9でスタートメニューが復活することは、開発者向けカンファレンス「Build 2014」で発表済みである。しかし、Mary Jo Foley氏がZDNetに寄稿したように、6月の時点でWindows 8.1 Update 2への搭載が見送られたことが明らかになった。

そして先週、開発中のWindows 9がネット上に流出したと、多数の海外メディアが報じた。その中のひとつNeowinの記事によれば、ビルド番号は9788 (Windows 8.1 Updateのビルド番号は9600.17031)。掲載されたスクリーンショットを見る限り、Build 2014で公開されたものと大差はない。ピン留めしたWindowsストアアプリはライブタイルとして動作し、デスクトップアプリと混合した状態に並んでいる。

さらにSoftpedia.comの記事では、「PC settings (PC設定)」がウィンドウモードで動作するスクリーンショットを掲載。こちらもBuild 2014の時点で、Windowsストアアプリの「メール」がウィンドウモードで稼働していたため、それほど目新しいものではない。

確かなのは、Windows 8.1 Update 2においてスタートメニューの復活が見送られる可能性が高いということだが、それは"リークされたスクリーンショットが本物"であればの話だ。7月14日、My Digital Lifeのフォーラムに投稿されたDUF_氏の記事を追いかけると、「VirtualBoxの仮想マシンでスクリーンショットを撮影した」と質疑に応えているが、リークしたファイル名などは明かしていない。その応答を読む限り、フェイクの疑いは晴れていない。

もちろん、本件にMicrosoftが回答することはないため、真偽のほどは不明である。さらにデスクトップ環境の利用を主軸に置くユーザーが多く、Windows 8/8.1の広まり具合を踏まえると、Windows 9を単なる"スタートメニューが復活したWindows"としてリリースするのは、あまりにも淡泊過ぎる。

だが、実質的に無償提供OSとなっているWindows 8.1 for Bingの存在、そしてMicrosoftのスタンス変更などを踏まえると、改善点や新機能を最小限に抑えたWindows 9がリリースされる可能性は皆無ではない。

新会計年度の開始に伴い、MicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏が社員に向けて発したメールや、WPC2014で同社COOであるKevin Turner氏が「プロダクティビティ(生産性)が武器だ」と発言したように、Microsoftは"デバイス&サービス"から"プロダクティビティ&プラットフォーム"へ舵を切ったばかりである。

ここでいうプラットフォームはWindowsだけでなく、モバイルOS上で動作するソフトウェアサービスを指すとNadella氏はメールで説明している。さらにTurner氏もWindows 9の開発に対しては、ユーザーフィードバックをさらに受け付け、2015年春のリリースを予定していると述べた。決して、余裕のある開発期間ではない。

●深層学習で人工知能の進歩を目指す「ADAM」○深層学習で人工知能の進歩を目指す「ADAM」

Microsoft Researchは、「ADAM」の研究結果を公式ブログで発表した。ADAMは機械学習や人工知能を具現化するプロジェクトのひとつで、視覚化したオブジェクトを人間のように認識し、判断することを目標としている。

同研究所のEVP(上級副社長)であるHarry Shum氏は、2014年7月14日から15日まで開催した「Faculty Summit 2014」でADAMのデモンストレーションを披露した。Deep Learning(深層学習)の研究として続けられてきたADAMは、脳のニューロンネットワークをコンピューター内部に作り出し、カメラでとらえた内容を、人間の目と脳のように認識するという。

実際のデモンストレーションはJohnson Apacible氏が担当し、Windows Phoneで映し出された犬種が正しく認識することを披露した。1匹目のダルメシアンでは手間取っていたものの、2匹目のローデシアン・リッジバックや、3匹目のテリアは問題なく認識。デモンストレーションの最後にはShum氏に対して犬種認識に絡めた冗談も語った。

今回は犬種認識に限られたが、ADAMの応用例は幅広い。たとえば、ドーナツをスマートフォンで撮影すると、ドーナツの種類とカロリー、糖質などを映し出すソリューションや、腕にできたあざを映すと、過去の症例を元に分析して医者にかかる必要があるか判断できる。いずれもダイエットや健康管理といった我々の日常生活に密着する課題に貢献してくれそうだ。

ADAMのようなDeep Learningプロジェクトは目新しいものではない。2012年にはGoogleがWebページ上の画像やYouTubeの動画を利用し、コンピューター上で猫を認識する研究が成功したと公式ブログで発表している。Googleが猫だからMicrosoftは犬という訳ではないだろうが、興味深い取り組みであることは確かだ。

なぜならADAMは、Microsoftの音声認識・発声システム「Cortana」と連動し、電話に話しかけるように犬種を質問して、回答は音声とテキストで示すNUI(ナチュラル・ユーザー・インターフェース)を具現化しているからだ。このようにMicrosoftが持つ各種リソースと連動することで、より大きな広がりを見せる可能性がある。

Shum氏が「PCのパラダイムシフトが起きているが、今は中間に位置している。そして重要なのは、コンピューターの能力やストレージ、帯域幅ではない。人々の時間と注目だ」と語ったように、かつて児童雑誌に描かれていた未来予想図の一端が現実になる、新しい未来の入り口がそこまで来ているのだ。

Faculty Summit 2014の公式サイトでは、以前紹介したリアルタイム音声翻訳の「Skype Translator」や、データセンターの処理能力をさせるためにクラスターを構成する「Catapult」など多くの研究結果が披露されている。興味を持っている方は同サイトのオンラインイベントから、各種動画や資料をご覧いただきたい。

阿久津良和(Cactus)

(阿久津良和)