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●加害者になるリスクと、被害者になるリスク昨年12月1日に改正道路交通法が施行され、自転車が通行できる路側帯は、道路の左側部分に設けられた路側帯のみとなり、違反者には罰則(3ヵ月以下の懲役又は5万円以下の罰金)が付くようになりました。自転車が関わる交通事故への対策として、法の整備とともに、全国各地で自転車専用通行帯の整備も進められてきています。

「この10年間では、自動車対歩行者の事故は減ってきているのですが、自転車対歩行者の事故はなかなか減りません」と、自転車事故の現状を教えてくださったのは、au損害保険株式会社(以下、au損保)の柳保幸専務取締役。

au損保では、昨年10月にスタートさせた新ブランドの保険商品「あ・う・て」の中に、充実の補償サービスと、示談代行、ロードサービスも付帯した、自転車事故重視の保険「じてんしゃBycle(バイクル)」の提供を開始しました。なぜ今、自転車保険が注目されているのか、その実情を柳専務にインタビューしました。

――自転車は日常的に移動手段として、とても身近なものですが、なぜ今自転車保険が注目されているのでしょうか?

「ライフスタイルは人それぞれ異なりますが、世帯主の死亡、家族の病気、住宅火災、自動車事故など、予期せぬ出来事により生活設計が狂い、生活が困窮することがあり得ます。このような不測の出来事により、人々が損失を被ることを、「リスク」と呼びます。

そもそも、保険とは、多くの人々がお金を出し合って資金プールをつくり、その中のだれかが自動車事故や自転車事故によって損失を被ったときに、資金プールから損失を補償するという「助け合い制度」なのです。

自転車は便利、しかし一方では交通事故を生み出してしまう可能性がある乗り物です。強制保険に入り、さらに任意保険にも加入して備えている自動車事故と同様に、自転車事故で他人を死傷させてしまった場合も、被害者やその家族の生活に多大な影響を及ぼしてしまう。また、見落とされがちですが、加害者も高額な賠償責任を負うことになるのです」

――どんなに気をつけて自転車に乗っていて、自分は大丈夫だと思っていても、だれもがリスクを抱えているんですね。

「自転車にまつわるリスクには、加害者になるリスクと、被害者になるリスクの2つがあります。昨年7月4日の神戸地裁での高額賠償判決では、当時小学生の少年が加害者になっており、母親に対して約9,500万円の賠償命令が下されています。加害者になった人に賠償資力が無い場合、被害者への十分な賠償ができないどころか、加害者、加害者家族もまた経済的・精神的な重荷を背負うことになってしまいます」

――そこで自転車保険が必要ということになってきます。御社の自転車保険である「じてんしゃBycle」は未成年者も加入できますか?

「未成年の場合、18歳未満の方は本人が直接保険契約を結ぶことはできませんが、親が保険に加入し、同居の家族全員を対象とすることができます。家族全員を対象とする自転車保険に加入することは、自転車を運転する子供を持つ親として、必要なことであると広く認識いただきたいですね」

●示談代行サービスまで付帯してくる「じてんしゃBycle」――au損保では以前から自転車保険として「100円 自転車プラン」を手掛けられていましたが、「じてんしゃBycle」へと移行し、どのように変わったのですか?

「以前の保険商品は、手軽に入りやすくはありましたが、補償内容が不十分であると考え、より充実した補償サービスを付帯した「じてんしゃBycle」の提供を開始しました。

とくに自動車の保険よりも充実していると言えるサービス内容の特徴としては、示談代行サービスが付帯していることです。「じてんしゃBycle」は、保険金の支払いにより加害者の賠償額を確保するだけでなく、対人・対物賠償事故において、自転車事故による被害者と加害者との紛争の解決においても、社会的に極めて重要な役割を果たしてきています」

――たしかに、子供が事故を起こし、加害者家族のケア、事故を起こした子供本人のケア、仕事や家事育児と平行して不慣れな示談交渉を行うことを考えると、保険サービスからプロに任せられるメリットは大きいですね。

「保険料も4人家族での加入ならば、1ヵ月2000円程度。1人当たり、月に500円程度です。補償内容からすれば、家計から捻出して入るべき価値は十分あると思います。

身近な節約可能なものの、タバコ1箱、缶コーヒーなどの値段と比べてみてください。少しの節約からこの保険に加入すれば、大きな補償で家族の安心を得られます。

自転車事故の話を中心にしてきましたが、交通事故全般によるケガを補償し、自転車事故の場合保険金が2倍というのが自転車保険としてのもっとも大きな特徴です。自転車以外では、歩行中のクルマとの接触事故や、駅構内での事故も対象となっています。

また、賠償責任補償は日常生活での事故も対象で、買い物中にお店の商品を誤って破損してしまった場合なども補償します。

また、すべてのプランに付帯するロードサービスも自動車では知られていますが、自転車ではまだあまりない取り組みです 。電動アシスト自転車のバッテリー切れやパンクなどのトラブルへの対応など、すでに要請を受けて出動した実績もあります」

――自転車の左側走行義務化や、歩道の走行禁止(例外あり)、また基本的な信号厳守などの交通ルールは、年代や世代を問わず、改めて理解を深める機会が必要ですね。

au損保では交通ルールやマナーの周知にも力を入れ、スマートフォンのアプリ「自転車の日」で、そのような情報を得られるようにしています。

また、「じてんしゃBycle 家族型」の普及と合わせて、とくに小学生の自転車走行におけるリスク軽減に向けた取組みを積極的に展開していきたいと考えています。

子供や親に対して、自転車走行にかかわる指導と同時に、リスクに備える自転車保険の普及に取り組み、現在の未成年者の多くは無保険の状態であると推測される状況から、一刻も早く脱却を図らなければならないと考えています」

自転車事故は特殊な事例ではなく、被害者としても加害者としても、身近にあるリスクなのです。

このように、加害者にも被害者にもなり得る自転車事故は、自動車事故同様にそのリスクから生活を守るために、単身で自転車でよく乗る人も、家族が自転車を多く利用する人も、 保険で備えることが必要なのかもしれません。

文:齋藤むつみ