個人でも可能な電子出版 誰でもできる電子出版 第十三回


■はじめに
今回の記事も情報系の内容です。去る10月23日にMacの新OS、Maverics(MacOS 10.9)がリリースされました。多くの機能強化があったようですが、電子書籍的にはMac版のiBooksが同梱されたのが大きなニュースです。



iBooksは2010年にiPadとともに登場しました。当時はEPUBという形式は日本ではあまりなじみがありませんでしたが、アメリカでは既に広く利用されており、Appleの電子書店が採用したフォーマットということで日本でも少しずつ広がっていきました。

初期のiBooksはEPUB 2をサポートし(EPUB 3はまだ策定されていなかった)、フォントを変更する場合には欧文フォントしか選択肢がありませんでした。

それでも日本語は表示できましたし、表示結果も当時の水準では十分なものでした。CSSのサポート状況も良好で、リリース間もない時期から読者、制作者双方にとって利用価値の高いものでした。

Apple製のEPUBリーダーアプリということで、早い時期からMac版のiBooksを望む声がありましたが、iPhoneやiPod Touch向けにはリリースされたもののMac版は一向にリリースされる様子がありませんでした。そのような経緯があり、今回のMac版iBooksは待望のリリースだったのです。

■Mac版iBooksの使い方
MavericksではiBooksは最初からインストールされています。アプリケーションフォルダの中を探すと見つかります。

起動してApple IDでサインインすると、過去にiOSデバイスでiBookstoreから購入・入手した電子書籍のサムネイルがライブラリ画面に並びます。

書籍の右上にクラウドマークがついているものは、書籍データがクラウド上にあり閲覧するにはダウンロードが必要であることを意味します。



ローカルにある電子書籍はライブラリ画面からダブルクリックで開けます。iPadでの横向き表示に近い左右2ページ表示がデフォルトですが、書籍風の装飾は省かれています。

表示は美しく、書籍を読む上での表示上のストレスはほとんど感じることはありません。また、iOS版と同様に表示用にいくつかのフォントが用意されていて、好みのものに切り替えることができます。



ページ切り替えはiOSではスワイプで行いましたが、Mac版では以下のような方法で行うことができます。

1.画面端にカーソルを合わせると現れるページ切り替えボタンをクリック
2.左右(遷移したい方向)の矢印キーを押す
3.トラックパッドを2本指でスワイプ




iOS版でもあった、マーカーやメモの機能ももちろん使えます。メモに関してはキーボードの方が入力しやすいので、学術資料、参考書、マニュアル類などメモを追加する機会の多い書籍ではMac版のiBooksはとてもありがたいものになるでしょう。



さらにMac版では、複数の書籍を同時に開ける、というメリットがあります。



同じ書籍を複数のウィンドウで開くことはできないようですが、複数書籍を同時に開くというのは案外便利なものです。実際に利用するシーンは案外多いのではないでしょうか。

■制作者にとってのMac版iBooks
Mac版のiBooksは読者だけでなく、制作者にとっても大きな福音となっています。今までiBooks向けの電子書籍を作成する場合、iPadなど実際のデバイスに転送する手間が少なからず負担となっていました。

従来は、iBooksと同じレンダリングエンジン(WebKit)を利用しているReadiumなどで表示確認をし、問題なさそうであればデバイスに転送して確認する、という手順をとるのが一般的でした。

Mac版iBooksの登場で、デスクトップ環境での表示確認の精度が向上し、デバイスに転送する頻度が低下するものと思われます。

自分で制作した電子書籍はデスクトップからライブラリにドラッグ&ドロップで追加することができます。



iBooks Authorで作成中のコンテンツの動作確認にも使えます。Mac版iBooksを開いた状態で[プレビュー]ボタンをクリックすれば、自動的に転送してコンテンツを開いてくれます。

このように、Mac版iBooksは読者にとっても制作者にとっても非常に有意義なアプリであるといえます。

■最後に
記事中に書いた通り、Mac版のiBooks電子書籍制作者にとって待望のアプリでした。次に期待したいのはWindows版のiBooksですが、こちらは個人的にハードルが高いような気がしています。

iOSやMacOSはAppleのプラットフォームで、フォント周りを始め全て自社の管理下にあり、すべてを制御できます。WindowsではAppleが制御できない部分も出てくるでしょう。ですが個人的に見るところ、Appleは表示結果の同一性(プラットフォームに関わらず表示結果の差異が少ない)にこだわりを持っている気がするからです。

できることなら、高いレベルでプラットフォーム間の表示結果の差異を抑えたWindows版iBooksをリリースしていただきたいものです。

■著者プロフィール
林 拓也(はやし たくや)
テクニカルライター/トレーニングインストラクター/オーサリングエンジニア
Twitter:@HapHands
Facebook:https://www.facebook.com/takuya.hayashi


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