サッカー日本代表のザッケローニ監督 （撮影：岸本勉/PICSPORT）

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　ワールドカップ開幕を約９か月後に控えて、日本代表はどんな課題を抱えているのか。

　最初にあげるべきは、世界のトップレベルとも伍して戦える守備力の整備である。序列の根本的な組み替えが進む１トップに光が当たっているが、９月の２試合は守備の手応えを深めることに力点を置くべきだ。

「我々には我々のアイデンティティがあり、それを貫き通さなければならない」とザックは語る。イタリア人指揮官が言うところのアイデンティティとは、「守るための守備ではなく、次の攻撃につながるための、攻撃をしやすくするための守備」である。「守備一辺倒の戦い方はしない」とも言う。

　現在のチーム編成は、守備一辺倒の戦い方に適していない。本田、香川、岡崎、清武らの持ち味を可能な限り引き出す方向性に、メディアとファンの多くがロマンを感じているのは間違いないだろう。僕もそのひとりだ。　

　高度な技術と創造性を併せ持つ柿谷の代表入りで、攻撃的な魅力はさらに高まっている。

　だが、オプションは持っていい。

　たとえば、強豪相手に１対０でリードをしていたとする。残り10分からアンカーを置いた４−１−４−１とし、失点のリスクを最小限に止めるのはオプションとして悪くない。

　アンカーを配したシステムを持ち出すのは、それにふさわしい適任者を見つけることができるからだ。細貝、高橋秀、山口螢らは、ボールを奪うことに力を発揮する。

　その一方で、遠藤や長谷部に比べると攻撃面での貢献度は落ちる。遠藤に近いのは東アジアカップに招集された扇原だが、ザックは彼でなく山口を選んでいる。
遠藤と長谷部の代わりを担う人材はいないものの、違った役割ならチームに貢献できる選手はいる。そうした現状を踏まえると、４−１−４−１はチーム事情に則した選択肢と言っていい。

　先のグアテマラ戦では、終盤に３−４−３をテストした。森重、今野、吉田による３バックが注目を集めたが、遠藤に代わって青山が出場したことに、僕はより大きな意味を見出す。

　３バックを採用する広島でプレーする青山は、このシステムに馴染んでいる。広島と代表でコンセプトの違いがあるとしても、マイボールの局面で求められる役割に大きな違いはない。実際にグアテマラ戦では、持ち味であるタテパスで攻撃のきっかけを作ろうとしていた。

　ザックが扇原を招集していないのも、青山がいるからかもしれない。残念ながら青山は体調不良で離脱し、ガーナ戦には出場できなくなってしまったが……。

　10日のガーナ戦を終えると、ＦＩＦＡが定める国際Ａマッチは10月、11月の２試合、来年３月の１試合の５試合だけとなっている。ワールドカップ開幕直前にもテストマッチは組まれるはずだが、テスト的要素を兼ねた試合はあと５試合しかない。
ガーナ戦でリードを奪ったまま終盤を迎えたら、山口を送り出して４−１−４−１で戦ってみるといい。グアテマラ戦のように３−４−３へシフトし、攻撃力アップを狙ってもいいだろう。

　コンフェデ杯以降の日本代表は、「Ｗ杯では攻撃的に戦うのか、それとも守備的に変えるのか」といった二者択一を迫られている印象がある。だが、４−２−３−１によるポゼッションサッカーが保有戦力にふさわしいのは、かなり多くの人が認めるところだ。ならば、４−２−３−１をベースに据えながら、世界のトップ・オブ・トップに割って入るオプションを手にしていくのが現実的と言える。

　残り15分から守備に軸足を置いてリードを守りきり、Ｗ杯のベスト８入りを果たした──それを守備的と言ったら、あまりに傲慢だと僕は思うのである。