■中国戦は広島の色が強いチーム構成だった

東アジアカップが始まっている。中国との初戦、足が止まってからの撃ち合いで3-3の引き分けに終わり、日本代表に対する酷評が多いが、即席チームならばああいう試合に終わるのもありえる話。中三日が空き、熟成と順応が進んだ第二戦で真価が問われるだろう。

第一戦の先発メンバーはサンフレッチェ広島色が濃い11人だった。現広島にかぎれば三人だが、元広島の駒野友一と槙野智章、元サンフレッチェ広島ジュニアユース→広島皆実高校の森重真人も含めれば六人になる。

これは偶然ではない。各クラブから三人、または四人を選んだケースでは、そのクラブの色が見えやすい。

広島からはセンターラインの選手が多く選ばれている。ゴールキーパーの西川周作、3バックの中央の千葉和彦、ボランチの青山敏弘、2シャドーの一角に入る高萩洋次郎（代表ではトップ下）。サイドとフォワードを除けば、骨は広島で組み立てられるというわけだ。

浦和は3バックの右と左である森脇良太と槙野、そして2シャドーに入る原口元気（代表ではサイドハーフ）。広島を浦和で補完すると、3バックにも適応できて最終ラインからボールをつなぐことができるチーム像が浮かんでくる。

ではセレッソ大阪はどうかというと、見事にディフェンスの選手なし。扇原貴宏も山口螢もいちおうボランチとしての選出なのだろうがそれほどディフェンシヴなイメージはなく、決定的な仕事をする柿谷曜一朗も含めて中盤から前の補強と考えられる。

■FC東京からはディフェンスの選手ばかりが選ばれた

追加招集のメンツまでもがサイドバック／ボランチ／センターバックでプレー可能な徳永悠平だったFC東京は、セレッソとは対照的にディフェンスの選手ばかり。その徳永、ゴールキーパーの権田修一、センターバックの森重、ボランチとセンターバックでプレーする高橋秀人が選ばれた。守備の補強であることは言うまでもない。なお、高橋同様にボランチとセンターバックを兼ねるチャン ヒョンスは韓国代表に選ばれている。

このように代表選考でそれぞれのクラブが志向するサッカーが見えてくるのは興味深いことだ。広島と浦和は同系の組織的なサッカーを志し、香川真司や清武弘嗣、乾貴士を代表に送り込んでいるセレッソは攻撃に特徴がある。

そして東京は守備ということになるのだが、ちょっとおかしくはないだろうか。このクラブは原博実監督の当時に「90分間攻撃サッカー」というフレーズを掲げ、以来攻撃攻撃と呪文のように叫びつづけてきたはずである。いまも攻撃的で魅力的なサッカーを見せると言っているが、評価されているのは守備の選手だ。

■FC東京が目指すべき方向性

梶山陽平や李忠成の印象があって下部組織からも攻撃のタレントがぞくぞく輩出されているかのように思う向きがあるかもしれないが、年代別代表に守備的なポジションの選手が多く選ばれる時期もあった。また、以前にA代表の選手が多かった頃も、土肥洋一、加地亮、徳永悠平、茂庭照幸、今野泰幸といううしろめの選手ばかりが選ばれていた。

大熊清監督時代の堅守速攻が基本にある東京は、攻撃サッカーを志した原東京時代にも「鬼プレス」が基調のトーンを奏でていた。いまでも最後は土俵際の粘りでなんとか凌ぐ面がある。ロンドン五輪に於ける徳永を思い浮かべるとわかりやすい。いろいろなものを剥いていくと最後に残るのはアレなのだ。

守備の評価が高いのはいいが、攻撃の選手がひとりも代表に選ばれないのはやはり寂しい。激しく混乱した第一戦で森重は相応の落ち着きを見せ、高橋も奪ってからパスを出すところまでの仕事はしたが、最終的に決めるところで目立ったのはやはり柿谷だった。

言い換えると、今後の東京がめざすべきは、日本代表に攻撃の選手を送り込めるチームになることだろう。得点王争いをする渡邉千真、体格の大きなプレーメーカーとして中盤に君臨する長谷川アーリアジャスール、前線のダイナモとして機能する東慶悟、強力な左足を持つ三田啓貴らが代表選考に食い込めるようになれば、チーム力も一段と上がったといえるのではないだろうか。

■著者プロフィール
後藤勝
東京都出身。ゲーム雑誌、サブカル雑誌への執筆を経て、2001年ごろからサッカーを中心に活動。FC東京関連や、昭和期のサッカー関係者へのインタビュー、JFLや地域リーグなど下位ディビジョンの取材に定評がある。著書に「トーキョーワッショイ」(双葉社)がある。
2012年10月から、FC東京の取材に特化した有料マガジン「トーキョーワッショイ！プレミアム」をスタートしている。