インタビュー:たむらぱん「内に向かう気持ちが湧くといいな」
――嫌だと思っていたことも、ちょっと視点を変えるだけで、良く見えてくるみたいな。予想してなかった方向から殴られたような、ハッとさせされる歌詞が所々にあって。その中でも10曲目の「チョップ」って、Mr.Childrenの「everybody goes〜秩序のない現代にドロップキック〜」(1994年)を思い出しちゃったんですけど。
たむらぱん:あー!あった。8cm CDの時代に買いました(笑)。いきなりテンション高いCDをバッて出した時ですよね。――でも、それくらい「いつになくテンション高いなぁ」と思いましたよ。
たむらぱん:(笑)。「チョップ」は当たり障りなく、「あぁ、そうだよな」みたいに聴いてもらえたらというか、自分でもそうしておきたい、みたいな。あまり突っ込まれると、生々しいことをいっぱい言っちゃいそうで、嫌だなぁと思って(笑)。根底に色んな深い所がありつつ、でも聴いている限りは楽しそうみたいな、ごまかされた感じが気に入ってるんですよね。――9曲目の「大丈夫」の歌詞にあるように、一人遊びに困らなかったり、人と人との繋がりが若干希薄になりつつある時代ですが、世の中がこうなったらいいなと思うことはありますか?
たむらぱん:友達が言っていて、「でも、そういう所からだ!」と思ったんですけど、電車が24時間動いていないと、終電で帰らなきゃいけない人は、それ以降夜遊びができないから、タクシーで帰れる人との差が生まれるじゃないですか。そういう所が平等になるといいなと(笑)。アフター5の時間が長くなるとか、「タクシーだから」みたいな変なプレッシャーが無いとか、そういう所でちょっとした気持ちの余裕がみんなに生まれそうな気がするんですよね。――逆に、ちょっと余裕が無い人が多いと感じる場面はありますか?
たむらぱん:自分も「気持ちに余裕をもちたい」と言っていても、そうじゃないかもしれないし、分からないですけど。何かを振り返る前に物事が進んでいく感じとか、すごく忙しい日々の仕事とか、自分のことをちょっと忘れちゃうようなことってあるのかなと思って。1番後回しになるのって、割と自分のことのような気がするんですよね。たまにでもいいから、それが優先になると、ゆとりが出るのかな?と思うんですけど(笑)。――最後の13曲目に「スクランブル街道」という曲がありますが、渋谷のスクランブル交差点って、地方から上京してきた人にとっては最初冷たく感じるのかもしれませんが、やがて時間が経つにつれて何とも思わなくなりますよね。プロフィールに「岐阜県飛騨高山育ち、その後東京へと移り住む」と書かれている、たむらぱんとしては如何ですか?
たむらぱん:この曲を作った時に書いたというよりも、似たような感覚になった時の具体的な分かりやすい例みたいなものが思い出としてあって、そのことを書いた感じなんです。基本的に曲は、あまりリアルタイムではなく書いた方が、客観的になれるというのもあって、思い描きやすいと思うんですよね。――歌詞を書いていて、自分の好みや癖を感じたり、変わったなと思うことはありますか?
たむらぱん:特に変わったのは「大丈夫」という曲ですね。今までは前向きに励ます言葉って、曖昧に表現して曲に乗せていたと思うんです。「大丈夫」は歌詞の内容的には「誰かに頼ってもいいじゃん」みたいな部分もある、ガツガツした感じではないんですけど、タイトル的にはすごく分かりやすい言葉じゃないですか。この曲はデビューしてから書いた曲なんですけど、こういう曲を表現できるようになったのは多分、デビューしてCDをリリースしてライブをした中で、自分もそういうことを人に対して言っても大丈夫かなと思わせてもらったんですよね。同時に自分の存在とか、自分のやれることも分かってきたと思って。そういう変化で、タイトルにそういうものがリアルに書けるようになったのはあると思うんですよね。