モー娘。初期メンバーとしてデビューした福田明日香さん。5年前から原因不明の体調不良に見舞われ、一時は体重が36キロまで落ち、2か月弱の入院生活を送りました。「20代で無茶したツケが今きた」と振り返る福田さんが今、実感するのは「健康でいることの幸せ」と活動再開へのある想いでした。

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「食事を受けつけなくなり」体重36キロに

── 初期のモー娘。メンバーとして大活躍された福田明日香さん。1999年に「学業に専念したい」と一度は芸能界を引退したものの、その後2011年に芸能界復帰。活動を続けられてきましたが、体調を崩し、去年の秋からは入院していたそうですね。いつ頃からどんな症状があったのですか。

福田さん:今から5年前、36歳の頃から調子が悪いと感じる日が増えていきました。気がついたら体重がどんどん減り、栄養失調で倒れてしまったことも。

キーボードを弾きながら歌う福田明日香さん

私には10歳になる娘がいるのですが、当時はまだ小学校に入る前でした。離婚してシングルマザーとして娘を育てていくなかで「しっかり働かなきゃ」と思っていたころに、仕事を休んで通院する日が増えてしまったんです。ただ、病院で精密検査をしたのですが特に異常はなく、原因がよくわからないままでした。

── 理由がわからないというのは不安ですね。

福田さん:そのあと数年、なんとかやってきたのですが、38歳頃にまた体調が悪くなり、今度は食事をすることもままならなくなりました。いちばん痩せていたときは36キロくらいまで体重が落ちてしまい、子どもからも心配されて。食べることが大好きだったのに、食事を受けつけなくなり、人に会うたび「痩せたね」とか「ガリガリだよ」と言われるようになりました。

それがだんだん恥ずかしくなって、人と会うことも、人前に立つこともしんどくなり、大好きな歌も歌えなくなりました。病院でいろんな検査をしたのですが、やはり異常がないので、医師からは「心因性のものではないか」と。自律神経の乱れからきているのは間違いないようで、しっかり治すために入院治療を勧められ、思いきって入院に踏みきったのが去年の秋でした。

入院中に考えたこと「20代で無茶したツケがきた」

── どのくらい入院していたのですか。

福田さん:2か月弱です。栄養管理をしながら、ゆっくり休むことになりました。

── ここまで体調を崩したのは初めてだったそうですね。

福田さん:20代のころに自律神経失調症と診断されたことがあり、緊張感や不安感があって眠れないことはあったのですが、自分ではメンタルは強いほうだと思っていました。人目を気にして発言も控えるようなタイプではないですし(笑)。なのでまさか自分がここまでダウンするとは思っていませんでした。

── 休養に専念していた入院中に、どんなことを考えていましたか。

福田さん:20代で無茶をしていたことのツケが今きたのかなと思っていました。私の場合は生理不順もなく、健康だと思っていたので、若い頃に無理ができたんです。当時はまだ結婚も出産もしていなかったので、暴飲暴食など不規則な生活をしていたうえに、地方を飛び回ってのライブ活動など、がむしゃらに働いていました。30歳で娘を出産したのですが、だんだん子どもに手がかからなくなり、ふと気が緩んだときに一気にダメージが来てしまったのかなと。私の周りの芸能界や音楽関係の方も、ハードな労働環境で無理をしてきた人ほど、突然ダウンする話をよく聞きます。

でも、やっぱり度を超えた無理はしちゃいけないと痛感しました。日常のなかでは、ある程度の無理やストレスも必要だとは思うのですが、自分を過信しすぎてはいけませんね。

── 入院前は歌うこともできないほどだったそうですが、入院中に歌への思いに変化はありましたか。

福田さん:退院の日に、病院の共用スペースで何げなく鼻歌を歌っていたのですが、それに気づいたある女性患者さんが私の横に来て、「あなたの歌、聴いてもいいですか」と声をかけられました。私のことは知らないようで、「私でよければ」と答えて歌うと、その方が泣き始めたんです。

話を聞くと夫婦関係の悩みがある方で、「私の歌を聴いて救われた」って。こうやって歌に耳を澄ましてくれる方がいて、涙してくれて。私の歌が、人の救いや癒しになれるのなら、また歌ってみたいと心から思えた瞬間でした。これまでもたくさんの方の前で歌ってきましたが、「私は自分の歌を大事にしていかなきゃならない」と思えたんです。

── まさに音楽の力ですね。

福田さん:私自身も歌に救われました。テレビの歌番組をかじりついて観ていた、歌が大好きな子どもだったんですけど、これまでの人生のなかで何度も「もう歌えない」という場面に直面してきました。でも、体調が戻り、元気になったときにしたいことはやっぱり歌うことでした。歌が私の元気のバロメーターなってくれているんだなって。

誰もが幼いときに好きだったことってあると思います。うちの娘は絵を描くことなのですが、好きなことをすると、自分を整えることにもつながります。今は改めて原点に立ち戻れた気がしているんです。芸は身を助けると、昔の人はよく言ったものですね。心が喜ぶこと、見ていて癒されることが、自分を救うことにもなると思いました。

4~5年ぶりに体重が戻り「健康がいかに幸せか」

── 2か月弱の入院を経て、退院後に感じたことは何ですか。

福田さん:体が回復して思うのは、「健康がいかに幸せで恵まれていることか」ということです。自分の心身をコントロールしながら健康な状態を保つことが本当に大事。もともと食べることが大好きで、むしろ食べすぎてしまうくらいだったのですが、食べられなくなった時期があったからこそ、今、食事を美味しくいただけるありがたみを感じています。4~5年ぶりに体重も戻ってきました。

本当によくないのですが、朝食が基本だと小さい頃から言われてきたのに、産後は忙しさを理由に朝ごはんを抜いてしまっていたことが多くて。子どものことが優先で自分はあと回しになりがちだったので、もう絶対しないよう気をつけています。今は「自分の健康が子どもの健康」だと思って、自分を整えることに注力しています。

漢方薬を飲みつつ、食事も栄養バランスを考え、体を冷やさないことも気をつけています。朝起きてまず白湯を飲み、そのあとお粥を食べます。寝る前にはハチミツを食べて、ストレッチをして、質のいい睡眠を心がけて。ここまで徹底した生活改善をしているのは人生で初めてですが、もう二度と大変な思いをしたくないので頑張っています。

8月から音楽活動再開を決めた

── 体調が戻ってきたようで安心しました。8月から歌手活動を再開されると伺いました。復帰のきっかけを教えてください。

福田さん:周りから「また歌ってほしい」というお声はずっといただいていたのですが、ちょうど体が回復してきたタイミングで、「命をつなぐプロジェクト」のアンバサダーをしていただけませんかというお誘いを受けました。知多半島臨海部の企業緑地を、地域や行政などと連携して生物多様性の保全と持続可能な地域づくりをする活動なのですが、体調を崩した期間に自分ととことん向き合った経験が、活動と重なる部分がありました。

地球環境について考えていくと、自然のバイオリズムのように私の人生も大きな波があるように感じて。『青の呼吸』というタイトルのテーマソングを書き下ろし、人と地球環境が繋がっているというメッセージと、私なりに感じている命の大切さへの思いを乗せています。みなさんの期待に応えたいという気持ちと、やっと皆さんに届けたいものができて、ようやく届けられるところまで来たタイミングで再始動させていただく形です。

入院を経て変化した、歌うことへの思い

── ここ数年、音楽活動から離れていました。どのような思いでまた歌と向き合っているのですか。

福田さん: 療養期間の最後のほうは、歌の練習をしていたらスピーディに快方にむかいました。「歌は仕事」という前に、自分が歌うことを楽しむ姿勢が大事だと再確認しました。

入院中に、私の歌で癒されたと言ってもらえて、誰かの救いになるという体験ができたことは、自信に繋がりました。「子どもが元気で、自分が元気で今日も幸せ」という気持ちを日々噛み締めて、大事にするようにしています。今の私の思いを歌に乗せてみなさんにお届けしていきたいです。

取材・文:内橋明日香 写真:福田明日香