コレクションは3000本！「DVDに変わった時に『世の中からなくなってしまう』と激しいショックを受けた」…今でもビデオテープにこだわり続けるコレクターの《VHS愛》
「この世からなくなってしまう」という強迫観念
NetflixやAmazonプライム、Huluなど、各種配信サービスにより、家にいながらにして大量の動画が見られる時代に、TSUTAYAに代表されるレンタル店は急激に店舗を減らしている。ところが、そんな令和の時代に、DVDよりさらに前の時代のメディアであるVHSにこだわり続ける漢がいた！ ホラー監督の川松尚良氏と共に「Team V.H.S」を結成し、資料提供や雑誌への寄稿、配信など、ビデオにまつわる活動をしている神宮慎也さんは、まだ40歳という年齢ながら、VHS愛を貫き、大量のVHSを自宅に保有。VHSにちなんだ発信をX（旧Twitter）で続けている。その情熱は一体どこから来るのか？
「僕は40歳ですが、レンタルビデオ店に通っていた者としてはほとんど最後の世代じゃないかな。レンタルビデオ屋に通い始めたのは、幼稚園ぐらい。親に連れられて、週に１回はウルトラマンや仮面ライダーのビデオを借りていました。学校をサボりながらずっとレンタル店に通っていたのですが、2000年くらいですかね。
それまでビデオだったのが急にDVDに入れ替わった時期があったんです。そのうちこれも借りようと思っていたビデオがなくなっていて、それ以来ですかね。自分がビデオを持っていないとこの世からなくなってしまうという強迫観念みたいなものにとりつかれてしまいました（笑）
僕が住んでいた兵庫県の西明石という地域は、とくにレンタル店の競争が激しくて、レンタル１本100円といった格安サービスを早くから始めていたんです。それで中高生のころは週に10本くらい借りて、返してはまた借りてというのをずっと繰り返してましたね。
「どうやって帰ったか分からない」ほどのショック
特に好きなのはアメリカのB級アクション映画。ジャン＝クロード・ヴァン・ダムとか、ドルフ・ラングレンとか、そういうスカッとするおじさん向けのビデオですね。そういうのを好んで借りてました。新作は料金が高いので、主に旧作を借りてましたね。
学校の友達にも、そういうのを好んで見ている人間はいなかったですね。友達の家の近くに新しいいい感じの大きな店舗ができて、品揃えがよかったんでよく行ってましたけど、友達はそんな僕を不思議そうに見てましたね。
家の近くに３軒大きな店舗があって、プラス離れたところにも何軒かあったので、全部回って通ってましたね。そのなかにビデオ合衆国という、関西で展開されていた店舗があったんですが、ある時いつものように行ったら、この間までVHSだった棚が全部DVDになってて、そうするとなくなった作品がいっぱいあるんですね。
１本50円のセールに遭遇して収集が加速
その時はどうやって帰ったかも覚えてないくらいショックを受けたんです。レンタル店にレンタル落ちの中古ビデオが売られているとそれまでも買っていましたけど、それからですね。VHS収集が加速したのは。１本50円からとか、中にはご自由にお持ち帰りくださいなんていうのもあったので、お金はかからないので、とにかく買って家に持って帰ってましたね。
いまは既製品のVHSが2000本、ほかにテレビを録画したVHSが1000本くらいは持っていると思いますね。もっとも、これでも他のコアなコレクターと比べると少ないと思いますが……。
映画館は音が大きいのが苦手で、滅多に行かないんです。やっぱりVHSで家で好きな時間に見るのがいいですね。パッケージから取り出して、デッキに吸い込まれるように入っていって、その手間がかかるのがいいんですよね。レンタル店に返す時には巻き戻さないといけないのもよかったですね。パッケージも大きくて、ちょうどいいサイズで、見ているだけ持っているだけで楽しい。
画質もいまのブルーレイとかは僕にはかえって綺麗すぎるというか、VHSのSD画質っていうんですけど、ブラウン管のテレビで見て、フィルムの傷とかほこりもついていたり、そういうのがかえって愛着を感じるんですよね。
配信の時代になったことで、映画がパッケージを持たなくなってきて、物質としてのパッケージを持ったVHSがより特異な存在になっていると感じますね。ビデオ屋で現物を見ながら選ぶのがどれだけ楽しかったか。それを知らなかった世代の人に言ってもわからないと思うのですが、やはり僕は楽しかったのが忘れられないです。僕だけかもしれないけど、配信で見てもなんか記憶に残らないんですよね。映画はやっぱりVHSで見るのが楽しいんです」
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