デリカミニのフロントフェイス(写真:三菱自動車)

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アウトドアテイスト満点で外遊びも楽しめる軽自動車であるホンダ「N-BOXジョイ」と三菱「デリカミニ」(写真:本田技研工業/三菱自動車)

ホンダの軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」のSUVスタイル版として、2024年9月27日に発売された「N-BOXジョイ」。同様のコンセプトを持つライバル車には、三菱自動車(以下、三菱)の「デリカミニ」もあり、2023年5月の発売以来、順調な売れ行きをみせている。

ちょっと愛嬌のある顔つきや小粋なボディ、アウトドアを意識した装備など、両モデルには共通点も多いが、それぞれの優位性や商品性の違いはどんな点なのか。また、各モデルはどのようなユーザーに向いているのか。各部を比較することで、両車の魅力や特徴などを浮き彫りにしてみる。

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N-BOXジョイとデリカミニの概要

N-BOXジョイは、2023年10月に登場した3代目N-BOXをベースとし、従来のスタンダードとカスタムに加えて今回初設定した新グレードだ。一方のデリカミニは、三菱の軽スーパーハイトワゴン「ekスペース」のSUV仕様「eKクロス スペース」の後継機種。基本的な装備は踏襲しつつも、内外装を変更し、三菱が誇る「デリカ」シリーズの名を冠したモデルだ。いずれも、近年人気の高いアウトドアをイメージさせる装備などを加味していることが特徴で、直接のライバル関係となることは間違いないといえる。


オフロードでの走破性と居住性を両立した三菱のミニバン「デリカD:5」(写真:三菱自動車)

余談だが、デリカ・シリーズといえば、50年以上の歴史を誇る三菱の人気ブランドだ。1968年に発売した「デリカ トラック」を元祖とし、商用のワンボックスカーやミニバンなど、さまざまな車種に展開。とくに1994年に登場したワゴンタイプの「デリカ スペースギア」は、本格的4WDシステムの装備により、高い悪路走破性を実現し、「オフロードも走れるミニバン」として大ヒット。そのコンセプトや個性が現在の「デリカD:5」に引き継がれている。こうした背景により、デリカミニは、三菱が長年支持を受けているブランド直系の軽モデルという位置付けといえる。

アウトドア感のある個性的なスタイル


ホンダ「N-BOXジョイ」の外観(写真:本田技研工業)

話をもとに戻し、両モデルの外観を比較してみよう。とくに特徴的なのはフェイスデザインで、どちらもタフさとキュートさを両立していることが印象的だ。N-BOXジョイは、角を丸くしたスリット入りのフロントグリルや、ブラックの樹脂製ロアカバー部とボディカラー部をミックスしたフロントバンパーなどを採用。ちょっと愛嬌のある丸目のLEDヘッドライトには、アルミ蒸着を施すなどで、アウトドア用ギアの道具感なども演出する。


三菱「デリカミニ」の外観(写真:三菱自動車)

一方のデリカミニは、Xをモチーフにした三菱独自のデザインコンセプト「ダイナミックシールド」を採り入れたフェイスデザインを採用。「DELICA(デリカ)」のロゴが入った立体的なフロントバンパーが、本格的4WD車のイメージを持つデリカD:5を彷彿させ、インパクト感満点だ。また、それでいて、ヘッドライトに内蔵された半円形のLEDポジションランプなどが、どこか子犬のようなキュートさも加味する。

ちなみに、このモデルのキャラクターで、テレビCMなどでもおなじみの「デリ丸。」も人気が高い。とくに小さな子どもを持つ若いファミリー層から大きな支持を受けているそうで、ぬいぐるみやTシャツなどのアパレル、タオル、キーホルダーなど、さまざまな関連商品もよく売れているという。


デリカミニのCMなどでも話題の「デリ丸。」(写真:三菱自動車)

両モデルのラインナップは、いずれもNA(自然吸気)エンジン車とターボエンジン車を用意。駆動方式は、全タイプに2WD(FF)と4WDを設定する点も同じだ。

また、ボディサイズは、N-BOXジョイが全長3395mm×全幅1475mm×全高2WD(FF)1790mm/4WD1815mm。一方のデリカミニは、全長3395mm×全幅1475mm×全高2WD(FF)1800mm/4WD1830mm。全長と全幅は同じだが、全高はデリカミニのほうが高い。とくにデリカミニの4WD車は、前後タイヤに165/60R15という外径の大きなサイズを採用。155/65R14サイズを履かせるN-BOXジョイと比べて、車高がより高く、さらにSUVらしさを強調する設定となっている。

ほかにも両モデルは、豊富なボディカラーを用意することも類似点だ。N-BOXジョイは2トーンカラー5色とモノトーン2色の全7タイプ。デリカミニは2トーンカラー6色とモノトーン6色の全12タイプを設定する。2トーン仕様車は、ルーフ部がブラックとなる点も両モデルは同じ。また、グリーン系やブラウン系など、近年人気が高いアースカラー系のカラーを数多く採り入れることで、アウトドア・テイストを強調している点も類似しているポイントだ。

室内の広さや装備を比較


N-BOXジョイのインテリア(写真:三木宏章)

一方の室内。両モデルのサイズは、N-BOXジョイで長さ2125mm×幅1350mm×高さ1400mm。対するデリカミニは、長さ2200mm×幅1335mm×高さ1390〜1400mm。長さでデリカミニ、幅でN-BOXジョイのほうにやや余裕があり、高さはほぼ同等だが、全体的な広さでいえば、ほぼ互角といえるだろう。

各モデルでは、いずれも撥水加工を施したシート表皮を採用し、アウトドアでの使用を考慮しているが、デザインなどに違いがある。まず、N-BOXジョイでは、「レジャーシートをイメージした」というチェック柄ファブリックを全タイプに採用する。カラーリングには、汚れの目立ちにくいベージュに、補色関係にあるオレンジやブルーの色糸もミックスすることで、ポップな印象と落ち着いた色彩を両立。クルマ用シート表皮には黒系やグレー系の多いなか、かなり思い切った色調や柄の採用だ。なお、NAエンジン車はトリコット×チェック柄のコンビシート(いずれもファブリック)、ターボ車にはプライスムース(合成皮革)とチェック柄ファブリックのコンビシートを設定する。


デリカミニのインテリア(写真:三菱自動車)

一方、デリカミニでは、合成皮革とファブリックのコンビシートを採用。座面・背もたれ部の表皮には、ダウンジャケットから着想を得たという立体的な3Dパターンのエンボス加工を施す。これにより、蒸れにくく、座り心地のよい機能性を持たせているという。

ラゲージスペースの違い


N-BOXジョイのラゲージスペース(写真:三木宏章)

また、両モデルは、セカンドシートの背もたれを前へ倒すことで、フラットな荷室を作ることもできる。自転車など大きな荷物も積めるほか、車中泊やアウトドアで足を伸ばして横になれるリビングなどとして使うことができる。

とくに、荷室をよりフラットにできるのはN-BOXジョイだ。N-BOXシリーズの特徴であるダイブダウン機能を備えるため、セカンドシートの背もたれを座面と一緒にフロアへ収納できるためだ。しかも、N-BOXジョイでは、フロア後端を、ほかのN-BOXシリーズ(スタンダード、カスタム)と比べ80mm高く設定。荷室の角度をより水平に近くすることで、大人2名がフロントシート背面に寄りかかり、ノンビリと足を伸ばしやすい設定を実現する。また、セカンドシート背面にはプレートも追加。人が座ったり、横になったりした際に、背面内にあるシートフレームによる凹凸を感じない工夫も施している。


デリカミニのラゲージスペース使用イメージ(写真:三菱自動車)

対するデリカミニは、セカンドシートの背もたれを前に倒しても、座面などの厚みがあるため、N-BOXジョイほどフラットにはならない。そのため、荷室は、前方がかなり高く、後端へ行くほど低くなる。荷室をくつろげる空間として使える点では、N-BOXジョイのほうが上といえるだろう。

ただし、デリカミニでは、上級グレードのTプレミアムやGプレミアムに、PVC(塩化ビニール製)シートバックを施したセカンドシートを採用。また、樹脂製のラゲッジボードも装備することで、濡れたり、泥のついたアウトドアグッズなどを気にせず積載できる工夫を施している。

これら違いにより、N-BOXジョイの荷室は、荷物の積載だけでなく、人がくつろげる空間としても演出していることが特徴。対するデリカミニの荷室は、あくまで積載スペースとしての使い勝手を重視している点が異なるといえる。

装備面を比較


N-BOXジョイの後席(写真:三木宏章)

装備面では、もはや軽スーパーハイトワゴンには必須といえるリアの電動スライドドアを両モデルともに装備する。N-BOXジョイでは、ターボ車の場合、助手席側と運転席側の両側に標準装備。NAエンジン車では、助手席側のみ標準装備で、運転席側はオプション設定だ。また、電動スライドドアには、予約ロック機能も採用。スマートキーを携帯していれば、電動で閉まる前にクルマから離れても、自動で施錠してくれる機能も備える。

対するデリカミニでは、全タイプに助手席側の電動スライドドアを採用。しかも、足先を車体下へ入れるだけで自動開閉するハンズフリーオートスライド機能付き。たくさんの荷物で両手がふさがっているときなどに便利だ。また、上級グレードのTプレミアムやGプレミアムには、運転席側にも同様のスライドドアを装備する(スタンダードのTやGの運転席側は手動式)。より利便性が高い装備を選べる点では、デリカミニのほうが上だといえる。


デリカミニのシートアレンジイメージ(写真:三菱自動車)

ほかにも、N-BOXジョイとデリカミニでは、運転席と助手席のシートヒーターを全タイプに設定。寒い日の快適性などにも考慮する。また、収納関係でも、両モデルは荷室の後端下部に「アンダーボックス」を用意。洗車グッズからアウトドア用グッズなど、多様な荷物の積載に便利だ。さらに、デリカミニでは、ルーフレールも全車に標準装備。外観によりアウトドア風味を加えるとともに、屋根に荷物を積載するルーフキャリアが簡単に装着可能。見た目のタフさと、機能面の充実度の両立を図っている。

パワートレインでは、N-BOXジョイが排気量658cc、デリカミニが排気量659ccで、いずれも3気筒のNAエンジンとターボ車を設定する。スペックは、N-BOXジョイのターボ車が最高出力47kW(64PS)/6000rpm、最大トルク104N・m(10.6kgf-m)/2600rpm。NAエンジン車は最高出力43kW(58PS)/7300rpm、最大トルク65N・m(6.6kgf-m)/4800rpmだ。

対するデリカミニは、ターボ車が最高出力47kW(64PS)/5600rpm、最大トルク100N・m(10.2kgf-m)/2400〜4000rpm。NAエンジン車が最高出力38kW(52PS)/6400rpm、最大トルク60N・m(6.1kgf-m)/3600rpmだ。ターボ車は両モデルほぼ互角、NAエンジン車はN-BOXジョイのほうが多少パワフルだといえる。


デリカミニの走行イメージ(写真:三菱自動車)

ただし、デリカミニでは、ターボ車とNAエンジン車の両方にマイルドハイブリッドシステムを採用する。発進時や加速時などに、電動モーターがエンジンをアシストすることで、スムーズな走りと高い燃費性能を両立するシステムだ。一般的なハイブリッドのように、モーターのみで走るEVモードなどはないが、走行用のモーターやバッテリーを小型にできるなどで、部品搭載スペースの限られる軽自動車に向いているシステムだといえる。

ただし、スペック上の燃費性能では、若干だが、N-BOXジョイのほうがいい。両モデルのWLTCモード値は、ターボ車の場合、N-BOXジョイが18.4〜20.2km/L、デリカミニは17.5〜19.2km/L。また、NAエンジン車では、N-BOXジョイが19.3〜21.3km/L、デリカミニは19.0〜20.9km/L。マイルドハイブリッドなどの装備がないN-BOXジョイだが、燃費面もなかなか良好だといえるだろう。

4WD車が人気のデリカミニ


デリカミニのリアビュー(写真:三菱自動車)

走行面では、とくに、デリカミニはかなり4WDの性能にこだわっている点が面白い。前述のとおり、15インチの大径タイヤを採用するほか、4WD車には専用開発のショックアブソーバー(前後)も装備。アウトドア・レジャーや荒れた路面での走行安定性を向上させ、快適な乗り心地を実現するという。また、滑りやすい道での発進をサポートする「グリップコントロール」も搭載。雪道やぬかるんだ路面で片側の駆動輪が空転した場合、スリップした駆動輪をブレーキ制御することで、路面をグリップしているほうの駆動輪の駆動力を確保し、より発進しやすくする機能も有する。

ちなみに、三菱によれば、デリカミニを購入したユーザー全体の約5割が「4WD車を選択する」という。一般的なモデルの場合、4WD車より2WD車を選ぶユーザーが多い傾向にあるなか、デリカミニには、「アウトドア×4WD」といったイメージが定着していることも関係しているだろう。それだけこのモデルは、他にはない個性を持っていることの証しだともいえる。

ほかにも、両モデルでは、ターボ車にパドルシフトも採用。マニュアル車のような感覚でクルマを操ることが可能だ。さらにアイポイントが高く、運転しやすい点も両者同じ。狭い路地での見切りがいい点なども同様で、女性から高齢者など、幅広いユーザーが運転しやすいクルマに仕上がっている。

運転支援・先進安全装備を比較


デリカミニのACC作動イメージ(写真:三菱自動車)

両モデルでは、スイッチ操作でパーキングブレーキをオン/オフできる「電動パーキングブレーキ」を装備する点も同じだ。デリカミニは、イグニッションONかつブレーキペダルを踏んでいる状態でスイッチを押すと解除する設定。N-BOXジョイは、発進時にアクセルペダルを踏めば、自動的に解除される仕組みとなっている。また、同じく両モデルには、「オートブレーキホールド」も採用。停車時にブレーキペダルを踏み続けなくても停止状態を保持するため、ストップ&ゴーが続く渋滞路などでの疲労軽減にも貢献する。

先進安全装備の充実度も、両モデル互角といえるだろう。衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制機能、車線逸脱防止支援など、数々の機能を有する。また、高速道路などで設定速度での走行や、適切な車間距離を保ちながら先行車を自動で追従する「ACC」も両モデルともに標準設定。渋滞などで前車が停止したときは、自車も停止する全車速追従機能付きなのも同じだ。さらに、車線内を走行できるようにステアリング操作を支援する車線維持支援機能も採用するなど、さまざまなシーンで安全運転を支援する機能が満載だ。


N-BOXジョイのリアビュー(写真:三木宏章)

ほかにも、デリカミニでは、カメラで撮影した後方の様子を映し出す「デジタルルームミラー」を用意(TプレミアムやGプレミアムに標準、TやGはオプション)。雨天時や夜間はもちろん、後部座席に人が乗っていたり、たくさんの荷物を載せていたりしても、後方視界を妨げにくいなどの利点がある。しかも、バック駐車時に空から車両を眺めるような映像も出せる「マルチアラウンドモニター付き」だ。ルームミラーに関して、N-BOXジョイは、オーソドックスなミラータイプなので、この点は異なる。

ただし、両モデルともに、駐車時の支援機能を持つセンターモニターをオプションで選ぶことは可能だ。バック駐車時に上空からの映像を出せる機能などは、デリカミニのデジタルルームミラーと同様。しかも、センターモニターのほうが画面は大きく見やすい。そう考えると、デリカミニのデジタルルームミラーは、駐車支援というより、走行中の後方視界を確保する点で、N-BOXジョイよりも優位性があるといえるだろう。とくに、雨天や夜間でも見やすいという意味では、一般的なルームミラーよりも優れているため、より安心・安全を望むならありがたい装備だといえる。

価格差はわずか、選ぶポイントは?


アクティブフェイスパッケージを装着したN-BOXジョイ(写真:三木宏章)

両モデルの価格(税込み)は、N-BOXジョイがターボ車204万4900円〜226万500円、NAエンジン車184万4700円〜206万300円。デリカミニは、ターボ車191万4000円〜227万1500円、NAエンジン車183万7000円〜218万2400円だ。比較してみると、価格面でも両モデルは非常に近いことがわかる。

そうなると、ユーザーがどちらを選ぶかは、やはり内外装のデザインや、どんな装備が欲しいかがわかれ目になるはずだ。とくに、デリカミニの場合は、先述した「デリ丸。」のような、愛くるしいキャラクターを好む層に大きく支持されそうだ。また、これも先述のとおり、「デリカ」ブランドに裏付けされたオフロード性能も、デリカミニの大きな個性。雪道や未舗装の山道など、より本格的なオフロード走行も楽しみたいユーザーは、デリカミニのほうを選ぶことがうかがえる。


デリカミニの走行イメージ(写真:三菱自動車)

対するN-BOXジョイは、内装のチェック柄シートなどが印象的。ハードな未舗装路を走破するというよりは、近場の公園や河川敷などでの日帰りキャンプなど、気軽にアウトドアを楽しみたい層に向いているといえるだろう。


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そう考えると、ライトな外遊び派ならN-BOXジョイ、より本格嗜好のアウトドア派ならデリカミニといった感じになるのだろうか。いずれにしろ、N-BOXジョイの登場により、デリカミニを含む軽スーパーハイトワゴンの市場に、今後どういった変化が出てくるのかが気になるところだ。

(平塚 直樹 : ライター&エディター)