世界的に見て、日本は畜産の方法が明らかに遅れているというものが2つある。

 鶏や鴨など、鳥類の飼育密度と屠畜方法だ。畜産動物のアニマルウェルフェアは世界から完全に取り残されているのだが、その理由は“まともな法律がない”ということだ。飼育密度の違いについて、解説する。

世界よりはるかにぎゅうぎゅう詰め

 簡単に説明すれば、日本の卵用の鶏も、肉用の鶏も、世界の1.7倍以上ギュウギュウ詰めにされている。多くの国が最低限与えなくてはならない飼育密度を規定するが、日本にはなんの規程もない。

卵用の鶏を見てみよう

 日本の採卵養鶏場は、1羽の鶏に一般的に430平方cm与える。日本の大手養鶏場はたった285平方cmしか与えていないこともわかっている。この数字、世界から見ると異常だ。韓国やEU、米国の各州はケージ飼育だったとしても1羽あたり750平方cm与えなくてはならないとしている。

国内の採卵養鶏場。この中に9羽の鶏が閉じ込められている

 世界はケージフリーに向かい、畜産動物をケージの中で飼育することをやめる方向だ。日本企業もほんの少しずつ、ケージフリーへの動きが出てきたところだ。だが、同じケージ飼育だったとしても、日本の飼育はひどい。自分の体の大きさよりも小さな面積の中で、仲間に押しつぶされ、弱い鶏はグイグイと押され、ケージに挟まり死んでいく。あまりにギュウギュウ詰めであるため、死体が鶏たちの足元にあって潰されていても従業員は気がつくことができない。

肉用の鶏を見てみよう

 日本の肉養鶏の養鶏場は、1平米あたり56kg分の鶏を詰め込む。しかし、世界は1平米あたり、33kg程度だ。これは義務化されていなくても多くの場合その程度しか詰め込まない。それ以上詰め込めば、鶏が死亡し、不衛生になり、足裏に焼けただれた皮膚炎ができ、カンピロバクターやサルモネラ菌の感染が高くなるためだ。そもそも従業員が鶏をふんだり蹴(け)ったりせずには前に進めなくなる。つまり、日本では鶏をふんだり蹴ったりしながら見回りをするのが日常であるということだ。

国内の肉用鶏(ブロイラー)の飼育場

法律がないことはリスク

 日本でも動物愛護法を改正し、畜産動物に適正な飼育密度を提供する必要がある。国によって最低限のアニマルウェルフェアが保証されることは、人々の健康のためにも、食の安全のためにも、動物のためにも、企業のビジネスのためにも有益だ。逆を返せば、現在のなんの規制もない状態は、リスクなのだ。

 社会を良くするために、署名にご協力いただき、動物愛護法改正を後押ししてほしい。

(次回は12月9日公開予定です)

【前の回】強まる日本の食品企業に対する抗議 鶏のケージフリー率は1.13%の世界最低レベル