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《党内処分を終えたのに非公認とするのはおかしい》

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 すでに衆院選(15日公示、27日投開票)の事実上の戦いが始まっている中、連日のように報じられているのが、石破茂首相(67=自民党総裁)ら執行部から非公認とされた裏金議員や陣営などから漏れているという“恨み節”だ。

 党山口県連から公認申請のあった杉田水脈・前衆院議員(57)=比例中国=は10日までに出馬辞退の意向を党に伝えたが、この判断も執行部が裏金議員の比例重複を認めない方針が背景にあったと報じられている。

 このため、支持者らのSNSでは、《憲法に規定された二重処罰の禁止に触れる》《憲法39条の一事不再理の原則に反する》《石破首相は事後法の禁止を知らんのか》と大騒ぎになっているのだが、果たしてそうなのだろうか。

 確かに憲法39条では「事後法・遡及処罰の禁止、一事不再理」を規定している。

「一時不再理」とは、刑事事件の裁判で判決が確定している場合、その事件を再度審理することを許さないとする刑事手続上の原則のことだ。

 ただ、それを主張するのであれば、裏金議員は全員、金額の多寡にかかわらず、政治資金規正法違反や所得税法違反(脱税)などの疑いについて、厳格な刑事事件の手続きに則った上で、裁判所の判決を待つべきだろう。党内処分など単なる内規に過ぎず、その線引きも曖昧。執行部が決めた裏金議員の公認、非公認だっていまだに基準がよく分からないのだ。

■裏金作りの悪質性を改めて猛省するべき

 もとが法律や明確な基準に沿った厳格な処分ではなく、「いい加減」で「適当」だったのに、「二重処罰だ」「一事不再理の原則に反する」と叫んでみたところで説得力はない。

 旧安倍派の議員や支持者らは普段、「憲法は戦後GHQの押し付け」「改憲が必要だ」などと主張し、こぶしを振り上げていた。にもかかわらず、こういう時だけ「憲法を守れ」と訴えるのは「ご都合主義」であり、身勝手な言い分ではないのか。

 それに一般社会の裁判の判例を見ても、事案の悪質さや状況によっては、社会的公正さを保つための「二重処罰」はいくらでもある。

 例えば、フィルム製造業者間のカルテル行為について、公正取引委員会が独占禁止法違反で課徴金を求めた行為が憲法39条(二重処罰)に触れるのかどうかが争われた裁判では、東京高裁は「課徴金と刑事罰を併科することは違反するものではない」(平成5年5月21日判決)と判断。「行為時の法解釈に従えば無罪となる行為について処罰することが憲法39条に違反するかどうか」が問われた裁判でも、最高裁は「違反しない」(平成8年11月18日判決)としている。

 裏金議員らは「二重処罰」「憲法を守れ」という前に、常習的、組織的な裏金作りという行為の悪質性を改めて猛省するべきではないのか。

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