“戦国東都”のドラ1最右翼、西川史礁の将来像は? 目指すはセンターを守れる中田翔 勝負強さと弾道に漂う大器の雰囲気

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西川は勝負強い打撃が持ち味だ(C)産経新聞社

 昨年は7人もの投手が1位指名を受けて話題となった東都大学野球。入替戦の厳しさから“戦国東都”とも呼ばれ、毎年多くの選手をプロに輩出しているが、今年再注目の存在と言えるのが青山学院大の主砲・西川史礁だ。

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 3年春に4番に定着していきなり3本塁打を放つと、大学日本代表に選ばれて国際大会でも活躍。今年3月は侍ジャパントップチームの強化試合にも招集され、2試合で3安打を放って見せた。この秋は死球を受けて右手人差し指を骨折し戦線離脱となったが、大学球界を代表する強打者として1位指名は確実視されている。

 では、西川がプロで期待される将来像はどんな選手となるのだろうか。近年プロ入りした東都大学出身で右のスラッガーと言えば、まず牧秀悟(中央大→2020年DeNA2位)と森下翔太(中央大→2022年阪神1位)の名前が挙がる。彼ら2人と西川の大学での成績を並べてみると以下のようになった。

牧秀悟:81試合 82安打5本塁打50打点 打率.285
森下翔太:78試合 63安打9本塁打36打点 打率.240
西川史礁:50試合 46安打6本塁打29打点 打率.284

 牧と森下の2人が1年春からレギュラーとして出場していたのに対して、西川が定位置をつかんだのは3年春と遅いため試合数と安打数は少ないが、打率については牧とほぼ同じで、ホームランについては2人を上回るペースであることがよく分かる。

 ただ3年生以降に絞ると牧は3シーズン(4年春はコロナ禍で中止)、34試合で119打数43安打、打率.361と圧倒的な成績を残しており、それと比較すると確実性は牧ほどのレベルに達していないと考えるのが妥当だろう。

 ただ西川もレギュラー定着後の4シーズンで大きく成績を落としたのは3年秋の打率.213だけで、4年春も3割以上、4年秋も4試合消化時点で4割の打率を残しており、対応力があることを証明している。昨年はいずれもドラフト1位で指名された草加勝(亜細亜大→中日1位)、西舘勇陽(中央大→巨人1位)からもホームランを放っており、レベルの高い投手を攻略しているというのもプラス材料だ。1年目から153安打、22本塁打、打率.314を記録した牧とまではいかなくても、森下の残した79安打、10本塁打、打率.237という数字は十分に狙える力があると言えそうだ。

 そして牧、森下と比べて西川が上回っていると見られるのがホームラン打者らしい打球の弾道である。これまでリーグ戦で放った6本塁打は全てレフト方向とやや引っ張り傾向は強いものの、いずれも打った瞬間に分かる当たりだった。その打球を見ると牧、森下以上にプロでホームランを打てる打者になれる可能性は高いのではないだろうか。

 現役で打撃スタイルが似た選手となると中田翔(中日)の名前が挙がる。中田もホームランは基本的にレフト方向が多く、高い弾道の打球が特徴的だ。ホームラン王のタイトル獲得こそないものの、日本ハム時代は広くてフェンスの高い札幌ドームを本拠地としながらも8度のシーズン20本塁打以上を記録した。狭い球場を本拠地としているチームに所属していれば、より多くのホームランを放った可能性は高いだろう。

 また西川は今年行われた2つの国際大会の11試合で10打点を記録しているように、ここ一番での勝負強さを備えているところも魅力だ。過去に3度の打点王、5度のシーズン100打点以上を記録した中田のように走者を返す役割を期待できるだろう。

 また西川の持ち味として大きいのは、センターをしっかりと守れるという点だ。高校時代はショートで、大学では昨年まで主にレフトを守っていたが、今年はセンターを任されて安定したプレーを見せている。センターを任されて中田のような長打力と勝負強さを備えた選手、というのが目指すべき姿と言えるのではないだろうか。

 現在の12球団を見てもセンターのレギュラー候補に苦労しているチームは多く、さらに右の強打者タイプとなれば貴重な存在であることは間違いない。その点も西川の評価が高くなる要因と言えるだろう。果たしてそんな西川を獲得する球団はどこになるのだろうか。運命の日はもうすぐだ。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。